あらすじ
オール讀物新人賞を受賞し、繊細な描写が各紙誌で絶賛された、注目の著者のデビュー作。「揺れ動く思春期の心理を見事に描いた秀作、というより力作だ」(篠田節子選考委員)と賞された受賞作「フォーゲットミー、ノットブルー」は、中高一貫女子校を舞台にした青春小説。級友に対する憧憬がいつしか憎しみに変わる様子を、柔らかく繊細な文章で描く。ほか、連作3篇を含む全4篇を収録。
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Posted by ブクログ
中高生の頃の、友達やクラスメイトにどう思われているか仕方がなかった感情を鮮明に思い出した。懐かしい気持ちになる小説だった。高校生の頃は教室でのポジションが人生のすべてだったし、周りから嫌われないように必死で窮屈だったと思う。私も小説の登場人物と同じように早く大人になりたいと思っていたけど、大人になっても意外と不自由だと思った。自由に生きていきたい。
私も朱里がいたら嫌いになる。みんなが普通でいようとしている中でわざと特別でいる様子が気に食わない。本当は自分も自由にいたいし羨ましいからだと思った。敢えて意地悪をする勇気はないが、関わりたい子ではないかも。大人になった朱里が最後、高校の頃の反省を生かして、杉ちゃんに自分から歩み寄っていたところが良かった。相手を見下していると自然と態度に出てしまって、相手も見下されてると気づいてしまう。気をつけないといけない。
・あんな風になれるまで、一体どれくらいかかるのだろうか。自分の力で可愛いものや高いケーキが買える綺麗な大人の女性。ああなったら、友達をねたんだり、見下したりしなくてよくなるのだろうか。
Posted by ブクログ
なんか、、具合悪くなった、、、
高校生、大学生、男、女、美女、醜女、、、
登場人物全員の傲慢さと、自分が特別だと思いたい気持ち、誰かを見下して安心する気持ち、そういうのがぎゅうっと凝縮されていて、読んでて具合悪くなって来た、、、
同じストーリーラインの話をそれぞれの登場人物目線で語る話が四篇入ってる。読みやすくてするする読めます、が。具合が悪くなります。あはは。
人それぞれの感情を描くのが上手すぎて、分かるなあ、がありすぎて、自分が恥ずかしくなったり過去を思い出してしんどくなったりします。
一話目の【フォーゲットミー、ノットブルー】 は親が有名人であるが故、自分は特別だと思い込んでいる朱里。と、高級住宅街に住んで何不自由なく暮らす、地味な希代子。ふたりは同じお嬢様高校に通っていて、朱里は周りには自由奔放でふわふわしているつかみどころのない子、と一目置かれています、が、それさえも朱里の中では計算されていたことで。彼女のもつ日記には学校の先生や生徒たちの悪口が普通に描きなぞらえていて。彼女に惹かれていた希代子は朱里のことを知っていくほど朱里に対して憎しみを抱くようになり、朱里が大好きなずなのに貶めるようになっていく。結局は朱里だって普通だったし、周りと比べていてそんな自分を自覚したくないから、周りとは違うふうに振舞って、自分みたいに出来ないみんなを見下して。ヒロインだねえ。でも分かっちゃうんだなぁそんな気持ちもさ。
次の【甘夏】は高校生のときに感じたような、背伸びした気持ちと、やっぱり自分は特別な存在で周りと比べて抜きん出たい、そんな気持ちがあって、微笑ましくもあり、それって成長過程だよね、と30代のわたくしは思いながら読みました。最後の最後、物語の最後に奈津子がたくさんのすっぱい甘夏を甘く砂糖で似てジャムにしよう、って思い立つところがとってもよかった。そうやって大人になってきたような、そんな気がするんだ!がんばれ奈津子〜背伸びせず比べず、比べていたとしてもそんな自分さえも理解して自分らしくのんびり生きていけますように。
3話目【ふたりでいるのに無言で読書】が1番好きでした。美しい話だった。そりゃ簡単に仲良くなって、地味なのと友達です〜なんて言える環境じゃないし、そういう性格してないもんね、恭子はさ。仕方ないよな〜高校生だしね〜と思いながらいつか大人になって、恭子と保田がまた、ふたりでいるのに無言で読書をするような関係でいられたらそれ以上の、しあわせってないな、って思いました。大人になったらそんなの関係ないよってこっそり教えたい。でも今はそれでいい。恭子と保田の心地いい物語だった。恭子好きだなー。なんにも知らないからなんでも知ることができるよね。それって素晴らしいことだよね。
最後の【オイスターベイビー】は正直もう朱里様にはうんざり。なんにも変わってない。大学生になっても朱里はそんなに変わってなくて、《特別》な友達や恋人を探していて、それが相変わらずだなあ、という印象しかない。結局みんな朱里から離れていく感じが見てて辛かったけど、まぁそうだよな、とも思えて。でも朱里も結局は薄々わかってるんだよね、パパが特別なだけで自分が何者でもないことを。それを知られたくないからあんなふうなんだろうな。ある意味可哀想だよね。朱里がこれからどうなっていくのか知りたいような知りたくないような。周りの目を気にせず幸せになってください。
4話とも全部面白かったけど具合悪くなります。この気持ちがわかる人はきっと多いんじゃないかな。朱里、希代子、奈津子、保田、恭子、それぞれ大人になった様子が知りたいな〜。人は結局変われないのかな、えらそうなこと言ってる私もそうなのかな。
Posted by ブクログ
身に覚えのあるような話ばかりで、どの章も胸が苦しかった。あの頃の友情は不確かで、毎日一緒にいても小さな掛け違いで簡単に壊れてしまう。それが生々しく描写されているので、夢中でページをめくり続け一気に最後まで読み終えた。
【フォーゲットミー、ノットブルー】
本作通して1番苦手なのが希代子。
朱里と仲良くなりたいと思ったのも父親が有名人だからだし、いつもカーストばかり気にしていて本音は言わないのに内心は妬み嫉妬ばかり。現実にいたら絶対仲良くなれないタイプだと思った。
だけど、偶然悪口が書かれた日記を見てしまったら朱里を嫌悪する気持ちも分かる。
【甘夏】
最も高校生の解像度が高いエピソードだと思った。車持ちの歳上がかっこよく見えて憧れるが、高校生に手を出すような人は実際は同世代の中では浮いた人。高校生のうちにそれに気付けた森ちゃんは賢い方だと思う。隣のクラスの友達と親友になれて良かった。
【ふたりでいるのに無言で読書】
1番好きなエピソード。
いつか嫌われる日が来るかもしれないから深く関わりすぎないようにする保田。自分に興味がない保田に怒る恭子。ひと夏の友情で終わってしまい切なかった。
【オイスターベイビー】
最初の話では、希代子のせいで朱里が被害者というイメージが強かったけど、朱里もかなり性格に難がある。同性が苦手で異性とばかりいたという描写で朱里の性格が地雷だと分かる。ただ、高校のいじめが原因で性格が変わってしまったところもあるんだろうなと思うと責めきれない。杉ちゃんといることで、朱里が変わることが出来たらいいなと思う。苦しい終わり方も多かったが、最後の話は希望に満ちたラストでよかった。
Posted by ブクログ
私立女子校の生徒たちを中心とした連作短編だった。
その年頃の女の子たちの関心ごとや、クラスでのカーストや、成長過程における心の揺らぎがぎゅうぎゅうに詰まっている。苦しいこともたくさんあってあんまり楽しいことばかりではないけれど、彼女たちを見守るような気持ちで読んでいた。
特によかったのは『ふたりでいるのに無言で読書』の恭子と早智子。気取らずに時間を共に過ごせる2人が素敵だった。お互いを尊重していてこのまま親友みたいになれるかなと思ったけれど、学校のグループってのは本当に厄介で。簡単に抜けて別のグループの子と仲良くすることはできないのである。それはよくわかる。
ただ、恭子はこのままでいいの?と問いかけたい。学校を卒業したらグループなんて関係なくなるから、また仲良くなれたらいいのにな、と淡い期待をしておく。