あらすじ
生きることの素晴らしさを斬新な視点で描く、野間児童文芸賞著者新作!
「どうしても、一度、生きてみたいと思ったんだ」
主人公は、人間の世界を知らない「魂」。
ある時、ある中学2年生男子の体に飛び込み、季節がひとめぐりする間だけその子として生きることになる。
聞いて憧れていた世界で、最初は見ること、やること、すべてがキラキラしていたけれど、やがて人と交わるうちに、どうしようもできない苦しい気持ちにも襲われ──。
悩みや痛みに苦しんでも、生きたいと思える日常があることが感動とともに伝わってくる、新しい切り口で青春を描いた物語。
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Posted by ブクログ
表紙やタイトルから想像していたのとはまっく違う内容で意表を突かれた。生きることの喜びと苦しみが、この世ならざる者の目を通して描かれている。
今自分が生きて、友だちと笑い合ったり、親と喧嘩したりしていることが、とても尊いことだと気づかせてくれる作品。
Posted by ブクログ
読んだきっかけ:母に勧められて読んでみました!
この本は命とは何なのか、生きるとは何なのか、この世とはどういうところなのかを考えさせてくれるような本です。
この本の中で1番気に入ったところは
「ごめんね、キツネ。でもおれは、この世界が好きなんだよ。この世界を、なにより美しいと思ってしまった。泥の中で咲く花みたいに、きれいだと思っちゃったんだ。だから……」
という主人公のセリフです。
私はこのセリフの中の「泥の中で咲く花」にすごく考えさせられました。
綺麗な花畑で咲く花もいいけれど、泥の中のような汚くて見ることも拒否してしまうような場所に咲く花は、綺麗な花畑で見る花とはまた違った綺麗さがあると思います。
泥の中で咲くというのはとても大変だけれど、その大変さを味わったからこそあらわれる美しさがとても素晴らしいものだと思うのです。
同じように人生も、辛いこと、悲しいこと、大変なことがあると思いますが、それを乗り越えて咲いた花は、きっと人それぞれ様々な色や形、匂いがあってとっても美しい花だろうな思います。
この本を読んで、私は心が挫けそうになっても美しい花を咲かせるためだと考え、乗り越えていこうと思いました!
Posted by ブクログ
人間の世界を知らない魂が、インフルエンザで重症化し死を彷徨っている中学2年生の男子、高梨天山の体に入り込む。天山の体の中で生活できる期間は1年間。人間界で魂は生きる喜び、悲しみ、苦しみを理解していく。
もう、読む前にこのタイトルだけで星5つを付けたくなる。
森絵都さんの『カラフル』に似てると話題だが、『カラフル』が刊行されて20年以上がたち、今の中高生は『カラフル』を知らない子もいる。確かに似てる。でも、『カラフル』は『カラフル』で森絵都さんの思いがあり、この本にはまりるさんの生きることの思いがいっぱい詰まっている。そう、この世には生きる価値があるんだよね。
生きることがくだらない、なんで勉強しなきゃならないの、親の小言がウザいと言っている中二病の子たちに読んでほしいし、読んで何かを得てほしい。
その後の天山ファミリーがどうなったのか、めちゃくちゃ気になる。私は天山のお父さんが好きだなー。
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ずっと気になっていた作家さん。
最初は自己中心的だった主人公が、人と関わる中で「この身体を離れたくない=死にたくない」と変わっていく過程が印象的。死にたい少女と、生きたい主人公の対比も胸に響き、「それでも生きろ」という作者のメッセージが伝わってくる。生きることの痛みと希望を優しく描いた作品だった。
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生きる喜びと悩みを1年のあいだに体験する。
意外と切ない話ではあるのだ……。
『カラフル』とたしかに似ているのだけど、ゴードン・コーマンの『リスタート』もちょっと思い出したり。あちらは生きかえるわけではなく、記憶喪失で人格が変わる話だけど。
ツンデレだけど寄りそってくれる相手がいたり、がっつりと苦みが残るあたりも著者らしいのかもしれない。
Posted by ブクログ
なるほど、こうきたか…。
急死した中3男子、天山の体に入り込んだとある「魂」。魂の正体は不明のまま、物語は進んでいく。
生きるって素晴らしい、この世は素晴らしい、もっと生きていたい…という思いを、長谷川まりるはこう描くのか、という。
「杉森くん」のもう一つの物語だと感じた。
人を救うって、人の人生を背負うって、どういうことか、ということ。
Posted by ブクログ
杉森くんに続いて長谷川まりるの本を読む。そうだね、本当にこの世には生きる価値があるよ。色々考えちゃったな。ラストもなかなか良かった。でもこの構造は救いがないな〜。元々の宿主も死んでしまっていて彼は語る言葉すら持たないし、結局その体は死を迎え周囲は入れ替わっていた事すら気づかずに悲しむわけだ。読みながら物語の舞台として設定されてしまった天山本人の事を想わずにはいられなかったな。そこについては好きではない。
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亡くなった少年の体に魂が...、という設定は私の中で森絵都「カラフル」が最高峰なのだけど、こちらの少年はいわゆる「陽キャ」。感情移入できるかな...と読み進めていったのだけれど、途中、なるほどこれはもう一つの「杉森くん」の物語なのだな、と思った。宮下さんを助けるには素人の中途半端な手助けではダメで、きちんと専門家を頼るということ。物語的には盛り上がりに欠けるんだろうけど現実的にはその通りで、この部分は信頼できる。でもだからこそ、このラストで宮下さんと父親が遺されたことを思うと、やるせなくなる。天山の望みは叶ったのかもしれないけど。
Posted by ブクログ
亡くなった中学生男子・天山の身体に入ってしまったのは、天上の世界から地上を見下ろしていた魂。
記憶喪失ということで1年間だけ天山として生きることになる。
父と2人暮らしで母の存在がないことや浅川という女生徒の不登校の原因などを知ってしまう。
生きることがどんなことなのかを体験して理解できたとしても、天山としての1年ではとても足りなくて、もっとここにいたくなった。
他人の人生じゃなくて、ひとりの人間としての生きるを真っ当したいと。
生きるということの大切さや価値があるものだということを誰かになることで気づく。
それなら自分の人生を生きたくなるのは当然だろう。