あらすじ
2012年ノーベル医学生理学賞受賞の山中伸弥教授と、2008年ノーベル物理学賞受賞の、益川敏英教授の対談集。トップクォークの存在を予言した物理学者と、世紀の偉業と言われるiPS細胞の生みの親。日本最高の頭脳が全てを語り合った! 大発見はどうやって生まれるか? 生命の神秘はどこまで解明できるのか? やっぱり一番でなきゃだめ。神はいるのか? 考えるとは感動することだ! 意外な素顔や挫折体験など知的刺激の詰まった1冊。
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Posted by ブクログ
若者は、読書などで科学界の偉人に憧れる。そして、自分も近づきたい、自分の知らない世界を知りたい、本に書いてあるその先を知りたい、と感受性を刺激されることによって、若者は科学に近づいていくんだと思う
欧米の研究機関では、プレゼン力、ディベート力、ディスカッション力を非常に重視します。自分の考えを人にきちんと示すことが大切な技量だと考えられている
Posted by ブクログ
共にノーベル賞を受賞している2人の著名研究者が、自分たちの研究を振り返りながら、様々なトピックについて話している本書。
言わずもがな、示唆に富んだ発言の連続であるが、特に印象に残った発言は以下の通り。
「研究はフェアである。(山中 p.98)」
「実験の結果が予想通りだったら、それは基本的に「並」の結果なんです。自分が予想していないことが起こったほうが、科学者としては当然、面白い。(益川 p.99)」
「肯定のための否定の作業(益川 p.188)」
ノーベル賞受賞など、側から見れば華やかな経歴を持っているように見えるが、本書を読むとお2人とも壁にぶつかった経験があることが分かる。しかし、同時に誰よりも研究を楽しみ、真理を探求するべく、真摯に研究に向き合っている姿に感化された。
Posted by ブクログ
対談でわかりやすい。iPS細胞と小林・益川理論の概要も理解できる。
<iPS細胞>
分化して皮膚や筋肉になった細胞を受精卵ができた瞬間まで戻す。皮膚などの細胞に「ヤマナカファクター」と呼ばれる4つの遺伝子を放り込むと、iPS細胞になる。膨大な数の遺伝子からこの4つの遺伝子を発見したことがすごい。(現在は4つのうち癌を起こす可能性のあるc-Mycを除いた3つでiPS細胞を作り出す手法が開発された。)
おまけ:iPS細胞の名前の由来
iPS細胞はinduced Pluripotent Stem cellの略。"i"が小文字なのは、iMacやiPodにあやかろうという気持ちが多少あったそう。また先に開発されたES細胞は二文字で覚えやすかったので、文字の見た目のイメージとしてそれに近づけたかったそう。
<小林・益川理論>
受賞理由は「クォークが自然界に少なくとも三世代(六種類)以上あることを予言するCP対称性理論の破れの起源の発見」という。=「約137億年前、ビッグバンによる高温で粒子と反粒子が同じ数だけ作られました。粒子というのは、物質を形作る基本構造です。反粒子というのは、粒子と正反対の性質を持っています。粒子と反粒子は、ぶつかると光になって消えていきますが、ほんの少しだけ、光にならずに消え残った粒子がありました。宇宙も、地球も、人間も、その消え残った粒子から生まれたものなのです。」益川さんはこの説明をする時、生徒一人一人に赤か青の風船を持たせる。赤は粒子、青は反粒子で、それぞれの風船を持った生徒がペアになる。益川さんは教室を回りながら、ペアになった風船をピンで割る。すると、最後に赤い風船を持った生徒が残る。この赤い風船がCP対称性の破れ。宇宙も人間もそこから生まれた。
CP対称性の破れの謎を解く鍵はクォーク(粒子よりさらに小さい物質の最終単位)にあると考えていた。当時のクォークはu(アップ)d(ダウン)s(ストレンジ)の三種類しか見つかっておらず、それではCP対称性の破れをうまく説明できなかった。もう一種類増えて四つになればうまい理論ができるのではないかと考えられていた。しかし四元クォークモデルではいくら考えてもうまくいかないので、「六つにしたらうまくいくんじゃないか!」と閃いたのがすごい。その後、実験でクォークが見つかっていく。
Posted by ブクログ
益川敏英物理学者とiPS細胞、生みの親である山中伸弥先生との対談。ノーベル賞受賞者のお二人のこれまで歩んでこられたご様子が、とても面白く対談されてるお話だった。
先ず、iPSのネーミングが人気の「iMac」「iPod」にあやかろうと名づけられたのには、フフフと笑えた。
そして、お二人とも教育熱心なご家庭でなく自営業の家でほったらかしだったという環境、運動は好きだが国語は苦手、フラフラ癖と浮気性の山中先生。
研究一筋ではなかったエピソードが凄く親しめた。
一見無駄なものに豊かな芽が隠されているお二人の生き様が流石。
Posted by ブクログ
山中教授と益川先生の日本の研究者のあるべき姿がたくさん詰まった一冊。
自分は研究者を技術者に置き換えて読みました。
挙げればキリがないですが、下記などは共感しました。
・今は効率が最優先される社会ですが、一見遊びに見えたり、無駄に見えたりすることの中に、実は豊かなものや未知なるものがたくさん隠れているのかもしれないですね。無駄なものを削ぎ落とそうとして、そうした未来の種まで捨て去ってしまわないようにしたいものです。(山中教授)
・坂田先生は、「最良の組織と最良の哲学があれば凡人でもいい仕事ができる」という考えを持っておられました。「研究は一人の天才によって行われるのではなく、組織的に行われるものだ」ともおっしゃってました。(益川先生)
・「スライドでは聴衆から見えないような文字を使うな」とか、「文字ばかりのスライドを見せられても誰も読まないし理解もできない」とか、「発表の目的をはっきりさせろ」とか、当たり前のことばかりでした。(山中教授)
Posted by ブクログ
iPS細胞の山中教授、素粒子物理学の益川教授という
ノーベル賞受賞者による対談。
ふたりともいわゆる「天才」ではない。
むしろ挫折や遠回りをした後にそこに偶然辿り着いたという。
一般には最短距離で効率よく欲しいモノを手にする、
というのが善とされがちだけれども、少なくとも学術の世界では
必ずしもそうではないようだ。
若い山中教授が難病患者を救うという使命に燃えているのに対して、
年配の益川教授は好きなことを勝手にやっているだけ、というコントラストも面白い。けっこう世相を反映しているような気がする。
なんだかまだまだこの世界も捨てたもんじゃないという期待を抱かせる一冊でもある。