あらすじ
最初は無料で商品やサービスを提供しながら、最終的には利益を得ようとする「無料ビジネス」。この手法が、なぜ流行するようになったのか? そのしくみを解説し、デフレ不況から抜け出せない日本企業が、売上をふやし、利益を拡大させるための価格戦略を考える。おもしろくてタメになる知識満載のビジネス書。
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Posted by ブクログ
吉本佳生さんの本は、経済学をほんのちょっとしかかじったことのないぐらいのレベルの人でもすっと理解できる、分かりやすい良書ばかりだと思います。
正直、気にも留めずにタイトルに惹かれて買って、読み始めてから「あぁ、『スタバではグランデを買え!』の人だ」と気付いたので、あまり偉そうなことは言えませんが。
個人的に一番納得できたのは、本屋をある種の無料ビジネスのモデルとして捉えてその性質を分析したことで、なぜ電子書籍が普及しないのかを解き明かしている章。なるほどなーと、膝を打つ内容でした。
無料ビジネスを始めるためのヒントには乏しいですが、今後の無料ビジネスがどうなっていくかを見通すためには良い指針になる本だと思います。
Posted by ブクログ
「スタバではグランデを買え」の著者による、消費者の行動変化とそれに対応した価格戦略の解説本、良書です(なお、副題が本書の本質)。
◆価格戦略の考え方 ~ 顧客に合わせて設定し極大化を図るのが理想
本書では、まず、消費者を「時間に余裕アリ/ナシ」「お金に余裕アリ/ナシ」に4分類し、
顧客属性に合わせた価格戦略で利益最大化を図るべしと説く。
秀逸なのが、USJの価格戦略の紹介。
USJは2011年に入場料を値上げ(仮に1千とする)。
この影響は、①地方客には旅行全体の一部値上げ(30千の旅費が31千になる)であるのに対し、
②近郊客には値上げ割合が相対的に大きく見える(5千の娯楽が6千に)。
従って、②は①よりも大きく減る。
しかし、USJは値上げの一方、年パスを値下げ(これは①には刺さらないが、②には刺さる)。
副作用として②増加による混雑(=①の満足度低下)が想定されるが、ファストパスの販売により、
①の満足度を維持(一方、②は年パス持ちなので、乗れない分には次回乗ればいいと思える)。
つまり、相対的に値上げに鈍感な①からは値上げ+ファストパスで、
値上げに敏感な②からは年間パス(値引き)+来訪増で収益極大化を図るというもの。
◆無料ビジネス ~ 「対価を取れる」利用者からの収益を極大化する仕組み
次に、著者は無料ビジネスについて「③個別採算型」から「④総合採算型」への転換を主張。
③の代表例はゼロ円ケータイ・実質無料スマホで、初期費用を抑え、月額使用料で
「強制的に」費用回収を図る(中途解約にはペナルティ)。
④の例としてはモバイルゲームで、基本は無料、一部ユーザーの「自発的な」有料サービス利用で、
全体の費用回収が成り立つ(フリーミアム)。
③は同一顧客での採算を見るのに対し、④は利用者全員での採算を見る。
バブル前のような右肩上がりの給料が約束されていれば③で十分だが、
そうではないこのご時世、④ができればビッグヒットのチャンス。
無料で圧倒的な規模の見込客にリーチし、一部の顧客からしっかり代金をもらえる仕組みを考えるべし。