あらすじ
――国債大増発時代の金融資本市場の行方は?
各国で広まる国債不安。日本は海外発のソブリンショックの衝撃を受け止めきれるのか? 現在は、国内貯蓄の高さと円高期待で、結果として日本国債は選ばれる側にある。しかし、国債の累増と企業収益の低迷が影を落とす。ギリシャ国債暴落を目の当たりに、国債の安定調達力を「国力」として新たに位置付け、各国が生き残りを賭ける時代に入っている。国債大増発時代の金融資本市場の行方を占う、市場関係者の必読書。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「世界国債暴落」というややセンセーショナルなタイトルだが、中身は真面目で丁寧な世界国債の現状分析になっている。ギリシアの実質デフォルトや世界的に財政赤字が拡大している環境のなかで、日本や世界の国債市場をどうみればよいかが書かれており、非常にタイムリーな出版だと思う。
個人的には第7章の「ソブリン格付けは信じられるのか」がおもしろかった。ムーディーズの「ソブリン格付け」の考え方が分かりやすく整理してある。簡単に言うと、(1)利払い能力、'(2)借り換え能力、'(3)財政均衡能力。それを踏まえて「バランスシート調整下のソブリン格付けの考え方」が述べられている。
2002年5月にムーディーズは日本国債をA格まで引き下げた。その7年後に一転して日本国債の格付け引き上げを発表している。背景に、'(1)ムーディーズの理論体系の転換、(2)日本国債の特殊性を加味した判断、'(3)世界の日本化、を指摘している。
現在の投資環境はグローバルにつながっており、債券市場の影響が株式市場などにも直結することから、債券投資家に限らずあらゆる投資家必読の書ではないかと思う。
なお、最初のページの脚注でわざわざK氏について触れているのは、上品な著者らの皮肉か?
Posted by ブクログ
日本の財政は危機的状況にあるものの、そう簡単には国債が暴落するようなことにはならないという趣旨の本。一斉にキャピタルフライトが起こり、短期間で金利が数pt上昇というようなシナリオは対外経常収支が赤字で国外債権者がマジョリティの発展途上国型のインフレだという。日本の場合は、暴落リスクは否定しないものの、租税負担率が先進国では30%台中盤以降が当たり前である中で、依然23%程度であり、国の資産を差し引いた超過債務部分をまかなうにはこれを28%に上昇させると帳消しにできるということ、すなわち増税余地の現在価値が暗に織り込まれているということから、依然として国債が買われているのである。要するに、日本国民自身が国債を買い支えるファイナンス力で価値が保たれているという事です。様々なデータを基に、冷静な分析がなされていて説得力がある。