【感想・ネタバレ】踊りつかれてのレビュー

あらすじ

誰かが死ななきゃ分かんないの?

首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にももう一つの爆弾が落とされていた。ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。
ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。
言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
彼らを追いつめたもの、それは――。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

マスコミ、ネット、誹謗中傷、問題提起が主題だと思ったら純愛だった
どんな人にも過去があり、受け入れられること受け入れないことさまざま、よく作り込まれて詰め込まれていて、お腹いっぱい
ときおり入るポップな掛け合いが救いではあったが、全体的に重かった。そして冗長、想像にまかせて欲しいところも全部出し切られた気がする。
そうは言いつつほぼ一気読み、次が気になるというより、なんか途中で置きにくい一冊でした。

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2026年04月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初は、ネットの誹謗中傷に一石を投じる物語だと思っていた。
けれど読み終えて残ったのは、誰が加害者で、誰が被害者なのかを簡単には決められない、視点の揺らぎだった。

瀬尾が個人情報を晒した83人は、美月や天堂を苦しめた加害者だった。けれど同時に、その83人もまた、それぞれの人生を持つひとりの人間だ。
復讐は許されるのか。もちろん、簡単に許されるものではない。
それでも「許せない」と断じるだけでは、この物語の核には届かない。

ネットで流れてくる断片的な情報を鵜呑みにし、誰かに貼られたラベルをそのまま信じてしまう。
自分の目で見たものではないのに、知った気になり、いつの間にかそれを自分の意見のように感じてしまう。
その危うさは、この物語の中や今の社会だけでなく、自分自身の中に確かに存在する。
だからこそ、肩書やラベルではなく、その人自身を見つめることの難しさを突きつけられた。

ラストシーンは情景が目に浮かび、特に印象的だった。瀬尾にとって、かつて仕事のパートナーとして互いに尊敬し合っていた美月と"生きて"再会できたこと、そして久代と出会い、今後の人生でも支える対象を持てたことは救いだっただろう。

また、久代の先輩である青山も印象に残った。
軽く見えるのに、人に興味を持つという芯が仕事に生きている。
押し付けがましくない優しさを持つ彼の存在は、この重い物語の中で静かに光っていた。

人を一面的に裁くことは簡単だ。
けれど、人を理解することはずっと難しい。
自分の人生においても、この難問はずっと付きまとうのだろうと感じた。

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2026年04月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久代奏が関係各所に話聞きに行く場面が間延びしており、発言と人物が一致できなくなったりと混乱する部分があったが、彼らのコメントが若干の伏線?張られており、最後につながっていくところでスッキリ。

天童ショージの独白の部分はしんどかったな。実際に誹謗中傷を受けて自殺してしまう人の最期はこんな感じの幻覚をみてしまうのか。
SNSで発信する人は読んで欲しい。
匿名で一人の相手に罵詈雑言なんて厳罰化モンだよ。

最後のタオル渡すシーン泣けました。

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2026年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み進めていくうちに、なぜそこまでの行動に至ったのか、背景が徐々に明らかになっていく
私は読者として
「こんなふうに誰かを大事に思っていたら、壊されたときに普通じゃいられないよな…」
っていう感覚にスッと入ってしまった

でも同時に、そこが一番怖いポイントでもあって。
“優しさ”とか“愛情”みたいなものが、そのまま復讐のエネルギーに転化してしまう構造になってる

そういう感情のコントロールをしながら読んだ
ブレーキをかけながらじゃないと
読み進められないと思った

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2026年03月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

SNSの誹謗中傷で命を絶った天才芸人と、週刊誌の虚偽記事で姿を消した伝説の歌姫。突然、彼らを追い詰めた匿名の人間たちの個人情報を晒す「宣戦布告」が謎の人物によって投下される——。



SNSの苛烈な誹謗中傷で命を絶った天才芸人、天童ショージ。そして、週刊誌の虚偽記事によって表舞台から姿を消した伝説の歌姫、奥田美月。彼らが持っていた圧倒的な才能や、表現に対する純粋な情熱という「美しさ」は、匿名の言葉という無責任な暴力によって、いとも簡単に砕け散ってしまった。

フェイクニュースが蔓延する現代社会において、情報の発信源(ソース)を確認する重要性は誰もが頭では理解している。にもかかわらず、その習慣がなかなか根付かないのはなぜか。それは単純に、事実確認という作業が面白くなくて、ひどく面倒だからだ。対照的に、根拠がなくてもドラマチックに脚色された情報は、実に面白くて爽快である。

映画『ベートーヴェン捏造』の中に、「本当かどうかはわからないけど、そのほうがおもしろいでしょ」と笑う教師に対し、生徒が「先生みたいな人が事実をゆがめるんでしょうね」と返すシーンがある。まさにこの「面白さ」や、物事を白黒はっきりジャッジした時に得られる「快感」こそが、人間の持つ恐ろしいエゴなのだ。
私たちは、真実という名の繊細なガラス細工を、「面白さ」や「わかりやすさ」という身勝手な力で乱暴に握りつぶし、鋭利な破片に変えて誰かを傷つけているのではないだろうか。

だからこそ、主人公である久代弁護士の独白が深く胸に突き刺さる。

「世の中には、頭で理解できることは数多くある。しかし、理解は角を落として丸くしない限り、心へは転がっていかない。その心に行き着いた考えや感情の向こうに、人間の真理があるのかもしれない」

正論やむき出しの感情、あるいは切り取られた事実は、鋭く尖ったガラスの破片と同じだ。そのまま投げつければ、相手の心を深く抉るだけである。真理にたどり着くためには、自分の中のエゴを律し、理解の角を落としていく慎重さと優しさが不可欠なのだ。

人間の「白黒つけたい」という快感やエゴを、社会全体で律していくことは相当に困難だろう。日々、理想と現実の相克に直面し、社会の在り方に絶望しそうになることもある。しかし、私はこの物語のラストで、加害者たちを晒した瀬尾が残した言葉に、確かな希望を見出している。

「今は思想の左右や地位の上下に囚われて、浅瀬で小競り合いをしているけど、必ず社会は『極端なもの』を排していく。(中略)みんなが自分のことを棚に上げて物申す恥ずかしさに気づいて、もっと人の心に近い『正しさ』に陽が当たるはずだから」

この祈りのような言葉を胸に刻み、私はこの複雑で厄介な社会を投げ出すことなく、皆で向き合っていきたい。鋭利な破片で傷つけ合うのではなく、いつか「人の心に近い正しさ」に陽が当たる未来を信じて。

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2026年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

83人のネット私刑のその後の話かと思いきや
2人の天才の過去を辿っていく感じ。

言葉というものは手軽なコミニュケーションのひとつだけど、
相手を死に追いやるほどの武器にもなり、
攻撃する相手にも家族が、大切な人が
いるという想像力を一人ひとりが持つべきだと感じた。

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2026年03月30日

mii

ネタバレ 購入済み

今だからこそ読んでほしい作品

これは本当に多くの人に読んでほしい作品。
プロローグの言葉が強すぎて序盤で挫折しかけましたが、そこを乗り越えたらあとはぐんぐん読まされました。

SNSがテーマの作品なので、きっと多くの方に刺さるはず。
実際私も、SNS黎明期の頃にSNSがどういうものかをきちんと理解できておらず、人を傷つける使い方をしてしまったことがあります。ものすごく反省したし、事が起こってはじめてSNSの危うさを学び、もう2度と同じことはするまいと誓いました。
ですが、記憶というのはどうしても風化するものです。劇中で主人公の久代さんが懸念しているように、喉元過ぎれば痛みは薄れ、また同じことを繰り返してしまうということは、実際あると思います。私も何度か同じ轍を踏みかけました。

気軽に発言ができてしまいますが、そこが世界という大舞台であり何億人という人々の視線が自身に向いているんだという事を常に心に留め置かねばいけません。誰だって人前で立つのは緊張するものです。そういう緊張感を持ってSNSに向かい合うべきだと改めて深く心に刻みました。

気づきと教訓を与えてくれる点では素晴らしい作品ですが、裁判以降の美月のエピソードがちょっと冗長だった印象。壮絶な過去でしたが、前半のSNSへの教訓でめちゃくちゃ釘が刺さったので、そこで切り上げても良かったかなぁと。でも瀬尾と美月と天童の関係性が紐解かれる様はドラマティックでよかったです。ヒューマンドラマとしてすごく密度が高く、読み応えがありました。

#深い #ドロドロ #ダーク

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2026年01月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

物語としての価値というよりも、
「今のSNS社会の風潮って、どうなんですか」
「匿名性に隠れた、責任を持たない加害者/殺害者になっていませんか」
という、過渡期ならではの空気感を痛烈に批判する強いメッセージを感じた。

冒頭に提示される「宣戦布告」。
これは作中の犯人・瀬尾によるブログの文章だが、
著者、あるいは登場人物が現実社会に対して投げ込んだ、“意見の火炎瓶”のようにも見えた。

芸能人への誹謗中傷、匿名性の陰に隠れた暴言、
承認欲求や優越感を満たすために人を叩く愚かさ。
さらに、過激な意見や陰謀論的見解を、
単純な真実として盲目的に信じてしまう構造。
そうしたSNSにおける現代人の傾向を、
ここまで詳細に言語化している点にも大きな価値がある。


印象的だったのは、「情報のエントロピー」に関する比喩。

「エントロピーの値は、高ければ高いほど乱雑であるということです。つまり、現代ほど情報のエントロピー値が高い時代はありません。ネット以前は紙という物理的制限の中でギリギリ秩序が保たれていましたが、今や人々がグラブもつけずに殴り合っている状態です。机の上が汚いのと家全体、いや、街全体が散らかっているのとでは、比べ物にならないでしょ?」
「つまり、机の上を汚くしたのが昔の週刊誌で、街全体を散らかしたのがSNSを主体とするネットメディアである、と?」

また、ネット上では人が「実在」から「虚像」へと変わってしまう、という指摘も鋭い。

「この人たちは恐らく、面と向かっては同様の悪態をつくことはないだろうと思いました。目の前で傷つく人を見るのはきついですし、自らの俗悪さを他者に知られるのはバツが悪い。その他、反論されるリスクや自制のなさなど、対面では生じるはずのブレーキの諸要素が、ネットになると全て消え去ります。質感がなくなった途端、果てしなく増長してしまうんです」

さらに「コスパ」や「タイパ」、「アシスト機能」の重視によって思考時間が奪われ、
見栄えや承認欲求という浅瀬を漂い続ける状態を「短小文化」と名付けている点も印象的だった。

浅瀬ですぐに善悪を決めてしまう人の増加は、
ネット上の悪貨とも言える「猫情報と怒り」をウイルスのように拡散させ、
実体を伴わない虚像を「たった一つの事実」として閉じ込めてしまう。

「私見に過ぎないんですが……ネットのインフラ化によって『瞬時に答えが分かり、好きなものだけを手に入れられる』という前提が浸透し、その結果『事実よりも面白いことを優先する』『自分が見たい情報ばかり集める』『承認欲求を満たすために感情を吐き出す』人たちが増えたと感じています」

終盤、天童ショージの自殺直前の独白は、とにかく苦しかった。
言葉によるリンチを受け続け、心が疲弊し、正常な精神状態ではなくなっていく。

それでも彼は、社会に対する違和感を持ち続けるほどに知的で、
なんとか乗り越えようとする姿勢を持っていた。

しかしその誠実さゆえに、浴びせられた言葉を反芻し、対処しようとしてしまう。
その過程で、さらに心が削られていく。

心が弱かったからではない。
言葉という凶器によって刺され続け、
大量出血の末に命を落としたような、そんな理不尽さを感じた。

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2026年04月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

素敵な表紙と踊りつかれというタイトルからの宣戦布告のはじまりに惹かれて読みました。
誹謗中傷によって苦しんでる人がいて社会問題にもなっているので読んでとても勉強になった。
専門用語も出てきて調べながら読んで、なるほどと思いながら読みました。
天童ショージの独白は読んでいて、あぁ、もうだめかもしれない、、と私も一緒に思ってしまいしんどかった。
匿名なら芸能人とかに悪意のあるコメントや正義を書いてみようとか、そもそも書きたいと思ったことがなかったのでP271の、瀬尾さんの発言が心に残りました。
私たちはニュースや投稿を目にするとすぐに内容にのめり込んでしまう。
憂さ晴らしに人を利用していないか、追い込まれる実在の人間を想像できているか自問してほしい。
美月の心情も知れたら良かったなと思いました。

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2026年03月22日

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