あらすじ
誰かが死ななきゃ分かんないの?
首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にももう一つの爆弾が落とされていた。ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。
ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。
言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
彼らを追いつめたもの、それは――。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
辛く切ない、暗い部分がある物語だが、読み応えがあった。
別府や京都、私に馴染み深い土地が出てきて、ちょっと嬉しい。
SNSで他者を誹謗中傷する行為は、弱い未熟な人間がやることで、本来、強い人間なら振り回されることはないのだけど。
振り回されちゃうんだね、芸能人として成功していても、弱い人間だったから。
天童も美月も、生い立ちが影響してる。
登場人物は、家族や恋人では、ないけど。それと同等なお互いをリスペクトし合うような愛で繋がっているのがよい。
物語には、恋愛が付き物みたいなところがあるけど。
私も年齢的に恋愛とかから卒業してるので、年齢や異性や肩書きに因らない、人間関係に憧れる。
自分軸で生きようと思った。
Posted by ブクログ
奏と天童の関係がよかった。
お互いの存在を支えとして、思い合っている感じは理想やなあと思った。
奏が自分のことが書かれた天童のライブのパンフレットを読んで、
過去のことを思い出し、思考し、「天童君に出会えてよかった」と思うに
至るところがよかった。
だから、そのあとの「独白」の中の「ほんでパンフも読んでほしかった」が
辛かった。
SNSの誹謗中傷については、佐伯デンタルオフィスの佐伯の
「何で知らない人のことをここまで悪しざまに言ったの?」が、ほんとそれと思った。
赤の他人に面と向かっては言えないことを匿名かつ遠くからなら言えてしまう。怖い。
ただ佐伯は最低中の最低男だったのだけれど。この世界、ほんと怖い(笑)
辛い話ではあったけれど、読み応えのあるおもしろい小説でした。
Posted by ブクログ
この作品、掴みの宣戦布告が強烈すぎた。
ブログの文章と、そして晒される加害者の生活。
この書き出しというか冒頭部分は近年読んだ作品でもトップクラスかも。
ただここをあまり掘り下げすぎず、その後は犯人瀬尾の弁護士を通して、奥田と天童というメディアに狂わされた2人の人生を追う。
SNSの誹謗中傷をテーマにした作品とは一線を画すような物語構成だった。
でもなんというか、掴みの期待値が高くスリリングな展開を望んでいただけに拍子抜けした感じもするし、天童の不倫の背景もそこまで語られず。
奥田の過去は壮絶だったが、こうフィクション感が強まってしまうというか、メディアを取り巻く環境とかのリアリティが高いだけに、そこに異質感もあった。(まぁ実話とかなのかもしれないけど)
あとはSNSに関して法改正というワードが出てくるなど、少し説教臭い感じも否めない。
登場人物の奥の作家の考えというものがテーマがテーマだけに強く出すぎていた感もある。
とはいえ、この作品はある意味時代を象徴する物語だと思う。
つい最近凪良ゆうさんの星を編むを読んでその中にゴシップなどで他者を攻撃する人や噂話をする人達は自分達が理不尽なめに合いたくないからと書かれていたが、また違った解釈でそれも面白い