【感想・ネタバレ】新装版 一絃の琴のレビュー

あらすじ

直木賞受賞作。土佐藩の上士の娘・苗は、祖母・袖の嗜みであった一絃琴を5歳の時に初めて聴き、その深い音色に魅せられた。運命の師有伯と死別した後、結婚生活で一度は封印したものの、夫の理解を得て市橋塾を始め、隆盛を極めた。その弟子となった蘭子は苗との確執の果て、一絃琴の伝統を昭和に伝える(講談社文庫)。

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Posted by ブクログ

 ああああーT_T絶望(´༎ຶོρ༎ຶོ`)この本、午前3時半までかかって読んで起きたら、もう、昼の12時半だったーT_Tせっかくの日曜なのに半分なくなってしまったー(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)夢の中にも蘭子が出てきたような…
 面白かった!女同士の確執が^ ^
でも、「女同士の確執」といっても実際には争っていたのは蘭子だけ。お師匠さんの苗が立ち上げ、弟子300人を越す良家の娘ばかりの「一絃琴」の塾「市橋塾」の頂点に立ち、周囲から「跡継ぎ」と目されていたから、「跡継ぎ」の座を狙っていたのだ。そして、お師匠さんと同じ丸紋印の琴を手に入れたくてしょうがなくて、その頃には掘建小屋でひっそりと世間から身を隠すように暮らしていた名工紋之助を親の権力を使って引っ張り出して自分にも名器を作らせようとしたのだ。
 ああ、蘭子!あんたは「舌切り雀」の話を知らんのかい?あんたは元士族の良家の娘で「人に負けるな」が家訓の家に育った才色兼備、経済的にも何一つ不自由のない娘として育ったが心の中は舌切り雀のおばあさんと同じ。人の物が欲しくてしようがない。蘭子は琴の腕を上げる努力はしていたが、所詮、苗が「一絃琴」を根を絶やさないために始めた塾がたまたま大きくなって大きなショートケーキのように魅力的な「市橋塾」の頂点にショートケーキのイチゴのようにちょこんと座りたかっただけなのだ。そして蘭子はその自分のあさましさに一生気付かなかった。
 市橋塾を始めた市橋苗にとっては「一絃琴」がそんなに隆盛を極めなくても良かったのだ。
 苗の実家は幕末の士族…といっても質素倹約の沢村家で、芸術を愛する家族は毎年、仲秋の名月の頃にやってくる絵師の亀岡さんに夜に月明かりの下で一絃琴を演奏してもらっていた。

月光が斜めに差し込んでくる座敷に、透き通った琴の音に聞き惚れてふと目を上げると、庭木の向こうの引棟の蚕室の黒い屋根瓦が月に照らされ、まるで青い露の流れるように冷たくきららかに光っていた様子を、苗は瞼の裏に焼き付けている。

 亀岡さんに聞いた、在原行平が須磨に流されたときに海辺に流れ着いた一枚の板に冠の緒をに切って貼り、岸辺の葦の茎を切ってかき鳴らしたのが「一絃琴」の始まりという悲しくも美しい話。幕末に何の事情か、突然沢村家に来れなくなった悲しい亀岡さんの身上。荒地の草を掻き分け、この人と決めたお師匠さん、盲目の有伯の弟子にしてもらうために何日も根気よく通い続けたこと。やっと弟子にしてくれた有伯が名曲「漁火」を苗のために作曲し、この世を去ってしまったこと。
 苗にとっては一絃琴とは本来人前で弾くものではなく、孤独な心と向き合うために一人で弾くもの。そして闇の中の一条の月の光のように一筋の絹糸のように自分の心にある芯のようなものだった。
 師匠有伯の死と苗の失恋のために20年間一絃琴を絶っていたが、ふと古物屋であの有伯が使っていた名器「白龍」を見てからいてもたってもいられなくなり、夫の公一郎に琴を弾きたいことを願い出ると意外にもあっさり許可が出た。そればかりではなく、元々一絃琴をやっていた人たちから苗に塾を開くよう勧められ、子供のいない苗と公一郎夫婦にとっては塾が生きがいのようになり、「元士族の良女」を条件に始めた塾が300人を越す華やかな塾に成長したのだ。
 八歳の時から入門し、美しさでも勉強でも芸事でも誰にも負けを知らない蘭子はその華やかに成長した「市橋塾」の頂点に立ちたくて、周りの勧めもあって苗先生の後釜を狙っていたのた。だが、師匠の苗にとっては「人前で華やかに弾く」のは本来の一絃琴ではなく、蘭子は技術は上達していても、「自分一人の心に向き合うもの」という本来の一絃琴の精神を蘭子はまるで受け継いでいなかった。それなのに周りは苗の心を理解せずに、「蘭子に跡をつがせ、苗は隠居して楽になれば」と勧めてくる。どうしても蘭子にだけは継がせなくない。と悩んだあげく、52歳になって養女をとったのだ。赤ん坊を「跡継ぎ」としてお披露目した市橋夫婦の姿を見た途端、「負け」を知って市橋塾を去った蘭子。
 その後、蘭子は人から羨まれる幸せな結婚をし、何一つ苦労を知らない良家の奥様でいたが、苗と同じで子供には恵まれず、しかも苗に対抗して意地でも養子は取らなかったので、歳をとっても苗に対するライバル心を持ったまま、苦い思いでいた。
 一方の苗は養女稲子を引き取った四年後に夫公一郎が亡くなり、女手一つで稲子を立派に育て、稲子はその時代には珍しく四国から東京に出て津田塾女子大を首席で卒業するまでになったが、琴は稲子には殆ど教えなかった。後の稲子によると稲子は琴には不向きだったようだ。それでも苗は稲子を育て始めてからが一番幸せだったのではないだろうか。琴の才能がない養女でも、自分が祖母に育てられたように、厳しく向き合って育て、その子の一番やりたいこと、向いていることを極める道に進めさせたのだから。苗にとって一絃琴は「孤独と向き合うもの」だったのだから、一絃琴に向き合う暇もないくらい子育てが大変だったのはむしろ幸せだったのかもしれない。
 心の中に一本の光を放つ絃を持った苗と「聴く人」がいないと弾きがいのなかった蘭子。幕末に生まれ、一本筋の通った生き方をした苗は動乱の世の中と自分の生涯を逞しく生きたといえよう。
 初めは秋草模様の平安絵巻のような侘しさの中に美しさのあった文章。それがだんだん煌めき百花繚乱模様の振袖のようになり、その中に女同士の確執を描いていった宮尾登美子さんの小説、堪能しました。

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2024年11月10日

Posted by ブクログ

重厚な時代小説を読みたい気分だったので、大好きな宮尾登美子さんの未読の本を読みました。宮尾さんは女性が主人公の時代小説を書かれますが、今作もとてもドラマチックな我慢強い女性の人生が描かれています。傑作で直木賞納得です。昔の良作、やっぱり良いな〜。

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2024年06月25日

Posted by ブクログ

さすが宮尾登美子さんらしい素晴らしい本。宮尾さんの本を読むと、自分自身も人生にしっかり向き合って生きたいと思えます。

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2023年04月15日

Posted by ブクログ

作者の作品は
女性の一代記が多い気がするが
これは二人の女性が描かれている

恵まれてばかりではない主人公の成長物語のような
ワンパターンなものなのだけれど
いつも夢中になって読みふけってしまう

強くありたい

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2023年03月04日

Posted by ブクログ

宮尾登美子!高知を舞台に、武家出身の女性たちの生き様を鮮やかに描いた作品。慎み深くも、芯があり強い登場人物たち、古典芸能である一絃琴や明治の娘たちの生活と、五感に豊かに訴えてきて、明治を主な舞台にしていながらも昔話ではなく心に迫る。

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2015年03月24日

Posted by ブクログ

 NHKの篤姫からひかれて読んだ本です。 ちゃんとされた直木賞のいい本です。何度かうまく行かなくて宮尾さんが書き直しされているそうです。
 初さんやお手伝いのおばあさんが印象に残ります。
 パワーを感じる必読の本。
 いいほんです。

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2012年06月20日

Posted by ブクログ

友人の「2011年に読んだ本リスト」からのおすすめで。

苗と蘭子、一弦琴に魅せられたふたりの女の生き様。

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2012年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

宮尾登美子さんは寺田虎彦邸で一絃の琴の奏者、人間国宝秋沢久寿栄さんの演奏に感動され、この本を描くきっかけになったとあとがきにありました。
読み終わって、いま、一絃の琴の音色を聴きたくなり、ネットで検索すると、
苗の演奏の描写が一絃の琴の世界だと思ってしまいました・・・。
モデルになった方々の演奏を聴けないのがとても残念です。

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2011年01月06日

Posted by ブクログ

さきほど、読破。
前半の主人公笛と、後半の主人公蘭子(美しい名前にはとげがあるように、高慢ちきな性格)
の女の闘いのドラマ。
個人的に、蘭子は宮尾作品の中で嫌な女ナンバーワンになっちゃいました。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

一弦琴というものを初めて知りました。
登場する女性、いずれも意志が強い。明治大正昭和と時代は巡り、今の平成にこういう女性って少ないのかも。

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2014年01月24日

Posted by ブクログ

う~ん、今回はいまいちのれなかったなぁ。苗と蘭子という二人の女性の人生を一絃琴を通して描かれています。対照的でもあるが類似性も併せ持つ二人の女性、私は苗の物語の方が好きでした。こんなにも何かに打ち込めるものがあるというのは幸せでもあるなぁ~とも感じました。

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2012年05月28日

Posted by ブクログ

浦野所有。

私の好きな「女の一生モノ」の長編で、直木賞を受賞しています。NHKの連ドラにもなったので、特定の年齢層での知名度は抜群。琴の講師をつとめ、幕末・明治・大正を生きた女性の物語です。

宮尾登美子といえば大河ドラマの原作でもおなじみの歴史小説家ですが、それにしても書き方が独特すぎる! 一瞬、とまどいますよ。

まず、マル(句点)がなかなか出てこない。すなわち、1文が長い。

それと、先に種明かしをしてから物語を進めるんですね。たとえば、「○○が壮絶な一生を閉じたのは、それからひと月ほど過ぎたころだった」とかいう文面が突然現れるんですよ。それまで主役級に扱われていた人間の死が唐突に宣言されて、そのあと数ページにわたって、死に至るストーリーを説明するという書き方です。

そんなこんなで、驚きに満ち満ちた作品でもありました。

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2010年05月13日

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