あらすじ
人間の本質に迫る三浦文学の最高傑作!
昭和元年、北森竜太は、北海道旭川の小学4年生。父親が病気のため納豆売りをする転校生中原芳子に対する担任坂部先生の温かい言葉に心打たれ、竜太は、教師になることを決意する。竜太の家は祖父の代からの質屋。日中戦争が始まった昭和12年、竜太は望んで炭鉱の町の小学校へ赴任する。生徒をいつくしみ、芳子との幸せな愛をはぐくみながら理想に燃える二人の背後に、無気味な足音……それは過酷な運命の序曲だった。
「第1回井原西鶴賞」受賞作品。三浦綾子、生前最後の小説。
1996年(平成8年)、NHKで「銃口 竜太の青春」としてテレビドラマ化され、作品が第14回ATP賞‘97奨励賞を受賞した。
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Posted by ブクログ
質屋の息子として特に不自由なく旭川で暮らしていた主人公の竜太が小学校のときに担任で出会った、愛に溢れ貧富とわず平等に生徒に接し救おうとする理想の坂部久哉教師、そして、クラスメイトの貧乏な芳子。
神楽岡への楽しい思い出になった遠足をおこない、さびしい卒業式を経た竜太は坂部教師にあこがれて、同じく小学校教師になるために師範学校に通う。時代は日中戦争が終わる気配を見せず、治安維持法ができて日本の言論は教育界でも窮屈になっていく。三浦綾子らしい相変わらず狭い世界で、幼馴染がそのまま好きあっていく。竜太は窮屈な中でも、自由と個性を伸ばす創意工夫ある授業をつくりだしていく。そんな中、綴り方の勉強会に参加したことで、警察に同行されていく竜太、そこで前半が終了。
ごく前半に登場してくる、たこ部屋から逃げ出した金俊明を家族ぐるみで庇ったことが、終戦直後に大きな芽をだして竜太を救います。
Posted by ブクログ
教師を目指し、教師になった竜太の話。
三浦文学によくみられる潔癖さと優しさを持つ主人公と恋人。
戦中戦後の治安維持法(大正14年)、言論統制、国家総動員法が施行される前後の話。教師になった竜太にも暗い影が覆いかぶさる。
暗い世相になっていく時代については知らないことが多かったので、なんとなくでも知ることができて勉強になりました。
Posted by ブクログ
読後に知ったが、フィクションだった時点で少し興覚め。
ただ同時に、三浦氏の遺書的な作品ということも知り、キリスト教をお仕着せするようなこともなく、氏が読者に伝えたかったことは純粋にこういうことだったのかなぁと思いながらどんどん読み進められた。
内容としては連載小説ゆえ仕方ない面もあるが、同じ記述の繰り返しが多く、全体としても冗長過ぎるきらいがあった。
細かいところでは、木下先生が校長の意向に背きつつ数年間も左遷されなかったのは無理がある(戦前だったら、親が政治家でもない限りあんな真似は出来ないはず)。
また逆に、タコ部屋から逃げてきた金が、どういう形で朝鮮に帰ったのかが描かれていないことに不満が残る。
※下巻であれほどまでに重要な役割をするのだから…
Posted by ブクログ
どうしたらわからない時は自分の損になる方を選んだらいい。だいたいそれが間違いない。また、自分が得するようなことに出会った時は、人間試される時だと思う。得をしたと思ってよろこんでいたら、大いに誤ることがある。人間利に目がくらむかものだ。
勇気のある人とは、正しいと思うことを、ただ一人ででもやり遂げることが出来る人を言う。
自分にとって最も大事なこの自分を、自分が投げ出したら、いったい誰が拾ってくれるのか。自分を人間らしくあらしめるのは、この自分しかいない。
全二巻