あらすじ
心がふるえる青春(恋愛)小説が生まれた。
近未来を舞台にした全く新しい青春(恋愛)小説が誕生した!
22世紀になって科学技術は東京だけに一極集中している。
ここ軽井沢では通信機器は使用不能。
私が通う高校に東京から転校生(未来人?)がやってきた。
恋をまだ知らない私は彼に言った。
「私と恋をするんでしょう? それは、一緒に戦うってことだよ!」
「人の中には、白く光る星のようなものがあって、
みんなそれを守っているのだと、そのことを信じられたら、
愛も友情も決意も一人きりの誇りも
すべてがその星からあふれた光だと思えるから。
なんだって、できる。きみの目を、私として、見つめていられる。」
……あとがきより
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
面白かった。同時に難しかった。
詩人が書いた文章ということで、読者との距離が異様に近い文体が非常に面白かった。
前半は「恋ってなんなのか」という問いにもがく山科さんにすごく共感できて面白かった。
後半が難しかった。
文章はとても平易で読みやすいんだけど、構成の意図を完全に汲み取れた自信はない。
それでもなお十分面白かった。
セリフが全体的に、ポップなんだけど詩的で、SFというか幻想的で、特殊な空間だった。
あとがきをちゃんと読めばちゃんと読むほど理解が深まる気がする。(それでもなお俺の理解は追いつきてないだろうけど)
他者を底から理解することも、他者が俺のことを底から理解することも決してないとは思うんだけど、たまに「理解する」感覚があって、それが「他者の心に触れた一瞬の感触」で「水面の光」で、「あなたと私がいる幸福」なのかなと。
以下解釈(メモ)
早見くんと谷崎
軽蔑の形→恋に臆病
恋に臆病という点は、山科さんも同じ
山科さんは恋の神格化(ちゃんと捉えようとしすぎ)
早見くんと湖
「初恋」であって恋ではない
助けようとする湖にどんな意図があるかは明言されない(p.126)
「人生の全ては、全てをいい思い出にするためにあるのかもしれないし。」
早見くんと山科さん
「恋の周りをくるくる回る人たちが、恋への憧れを不意に忘れて、真ん中の、その光だけをおそるおそる手に取る、そんな瞬間がもし描けたら、嬉しいなと思った。」
Posted by ブクログ
詩人さんの素敵な感性による世界観と地の文(一人称視点)に自分は読みにくいと思ってしまい、ついていけなかったかも…… 人によると思う 作者の感性のファンの人なら楽しめるのかもしれない
しかし、それでも印象に残ったところは2つあった
・サイボーグ化手術に失敗した数少ない異端として色んな人に善意で気を遣われながら生きていた早見君が親に連れて行かれた病院先で「治るって!」と言われた時の反応。自分でも自分のことは"病気"だと思っていたが、それでもサイボーグ化手術後にで体が拒否反応を起こしたことを"正常"な身体反応だから大丈夫、"普通"のことだ、と励まされてきた彼が、「やっぱり僕って病気だったんだ?」と大人を責めた。医師も親ももちろん彼の心情を慮って何も言わないが、その時やそれ以前から早見君が感じていた孤独感が現れたシーンだったので、印象に残った。
・p198
私にとってはなにもかもが多分、根本的には大したことではないのだ。他人に起きたことはいつもどこかで私を鈍感にさせる。とても大事なことも、「大事なことだ!」と頭の中で唱えて気をつけて振る舞うだけで、本当はわかっていない。全然わかんない。きっとそうだ。その恥ずかしさと申し訳なさで、いつも私は消えたくなる。でも、それを私は強さだと誤解して、いつものたうち回る友達の近くにいるのだ。逃げない。逃げるほどのことじゃない。温かいお湯に浸かって白い浴室の壁を見ているとき、急に泣いてしまったりしても、私は自分を変えたくない。光のママって何月生まれだっけ?って聞いてしまったことがあった。光は優しいから普通に教えてくれた。夜に突然気づいて、後悔して、でもお風呂で泣いてすぐに忘れた。私は、この心の浅はかさを大事にしたい。恋がしたいんじゃなかったな、恋ができるくらい、心がぶあつくなりたかっただけだ。人の悲しみを本気で受け取って、一緒に傷を負って、血を流したかっただけだ。恋人にならそうなれると思っただけ。そんなふうに相手と同じくらい傷ついて泣いてあげたい。私、ずっとさみしかったんだろうか。いや、それくらいしないと、人を助けられない気がしただけだ。
血まみれになって、誰を助けるんだよ?
私には、絶対に助けられないことってある。光のママのことも、パパのことも、私には何もできない。生き返らせられないよ。
> 恋がしたいんじゃなかったな、恋ができるくらい、心がぶあつくなりたかっただけだ。人の悲しみを本気で受け取って、一緒に傷を負って、血を流したかっただけだ。
> 血まみれになって、誰を助けるんだよ?
> 私には、絶対に助けられないことってある。
↑数少ない共感・頷き箇所だった
本文は読みにくいな〜と思いながら読んで、最後には結局やっぱり恋の話だったか〜……と思ってしまったが、あとがきはよかった。個人的にはあとがきの方が好きだった。
Posted by ブクログ
最果タヒの詩は苦手だと感じることが多いけれど小説にはハズレがないなと毎回感じます。普段SFは読みませんが、少年の切実さもぐちゃぐちゃの感情も、ヒロインの掴めない感じもすごくよかった。畳み掛けるような終わり方だけが残念だったなあ
Posted by ブクログ
2025.5.23〜2025.5.24
最果タヒ先生の詩集は読んだことあったのですが、小説は初めて。とても独特な文章の表現とリズムなので時々よく分からないけど、一貫して「恋や愛というものは」というところが根本にあるな〜ということはふんわり伝わりました。章が変わるごとに装画も担当されている、西村ツチカ先生の挿絵が入るのも素敵。
舞台は近未来、一点集中して発展した東京から軽井沢に越してきた少年と、そこに住む恋がよく分からない少女と、その周りのお話。
青春恋物語かと思えば、急に少年側の近未来発展世界・東京の話に変わったりするので、読者はずっと世界観にふわふわ漂って流されている気分になります。
個人的にですます口調と砕けた口調がコロコロ変わるのがあまり得意ではないので、ちょっと読みにくかったです。
これは特徴なのか、こう、頭で浮かんだ感情をそのままどうにか言葉にして紙に打ち付けている印象が強くて、一連の物語としてある為に詩集より人を選ぶのではないかなと思います。
そこで終わるのかー!とも思ったけれど、ある意味そこで終わるのが正解なのかも。この先早見くんが最初の母親との約束通り帰ってしまうのか、それとも梢と一緒にいるために止まり続けてくれるのか。最後の挿絵が恐らく梢1人だったので帰ってしまったのではという気持ちもあるけれど、明言しない方が色々想像できて楽しいのかなと思います。
読むの自体は、今までない感じだったのでとても楽しめました。