あらすじ
詐欺師チチコフは戸籍面では生きていることになっている死んだ農奴を買いあつめて,これを抵当にして銀行から金を引出すため,ロシア各地を遍歴する.作者はこの遍歴のなかで,随所に道徳的破綻者を発見し,それに対して鋭い社会的解剖を加え,腐敗したロシアの全貌と,その生活につつまれた「夢」とを白日の下に暴露して,誤った社会制度と国家組織に痛烈な批判を下す.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
チチコフの遍歴がようやく終わりを遂げる
場所は移り、明示的に農奴の購入をする場面は無くなったが、引き続き購入はしていたらしい
ゴーゴリの初期の構想、ダンテの『神曲』に準えるということから、本巻収録の第二部は「煉獄編」に当たり、ロシア人の善性が描き出されることとなる
自身ののらくらさや惰性を悪いとは思いつつも変えられない人々が善に傾く様子が描かれる
その転換からはチチコフも逃れること能わず、新たに手を出した詐欺の発覚を皮切りにこれまでの悪行が司直に暴かれる
一度見逃されていたチチコフは、今度こそダメだと絶望のどん底に陥るが、そこに救いの手が差し伸べられる。
当時のロシア文学らしく救いの手段はキリスト教的なものだが、心変わりする瞬間の描写は非常にドラスティックで、読んでいる私の心も揺るがすほどだった
単に善人の手によってのみ救われるというわけでなく、やくざ者の手も借りつつ改心を達成するというのがリアリスティックだった
続きが欠落しているというのは残念だが、遺された部分まででも十分作品として完成しており、読む価値はあると思う
「もう死んだ農奴のことなどは考えないで、あんた自身の生きた魂のことを考え、いさぎよく別な道をとってお進みなさい!」