あらすじ
詐欺師チチコフは戸籍面では生きていることになっている死んだ農奴を買いあつめて,これを抵当にして銀行から金を引出すため,ロシア各地を遍歴する.作者はこの遍歴のなかで,随所に道徳的破綻者を発見し,それに対して鋭い社会的解剖を加え,腐敗したロシアの全貌と,その生活につつまれた「夢」とを白日の下に暴露して,誤った社会制度と国家組織に痛烈な批判を下す.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.
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Posted by ブクログ
各地で「死んだ農奴」売買を済ませて宿に帰って、一夜を明かした所から始まる
売買登記を裁判所で済ませた後、知事の家で晩餐会か開かれ、お偉いさんの夫人方にもチヤホヤされ万事が上手くいっていたチチコフだが、ある噂が立ってから町中の人間に避けられるようになる
その理由を知ったチチコフはN市を急いで出発する…
この巻は、上巻に比べて物語要素が薄く、当時のロシア(あるいはN市)の人間模様や価値観が詳細に描かれている。作者が顔を出して文学評論をしたり、ロシアのすばらしさを語り出すなど、一味違った面白さがあった
とはいえしっかり物語としても面白く、作品全体の「転」にあたる章もあったりと次の展開が気になりながら読むことが出来た。舞踏会の描写や、噂を伝えたい夫人方の描写も面白がりながら読んだ
第一部の終幕ということで、ついにチチコフの生い立ちが描かれた。あらすじに「詐欺師」とあるから、さぞやくざな暮らしをしてきたんだなと思ったら、意外、父の(事実上の)遺言を真に受け有能な役人としての生活をしていたらしい
森鴎外の『舞姫』において、これまでの英雄的主人公ではない、地に足の着いた「市井の人」が主人公であったことが反響を呼んだが、この作品においてもそうであると言えるだろう
作者自身チチコフのような悪党を主人公に据えていることには一家言あるらしく、「高潔の士」ではない理由を詳しく、皮肉った言い方で述べている。
ラストの下巻が遂に第二部となる。N市を出たチチコフがどういった顛末を送るのか、作者と一緒に追いかけたい