【感想・ネタバレ】内務省 近代日本に君臨した巨大官庁のレビュー

あらすじ

警察、地方、厚生労働、国土交通、神社…、巨大すぎる「省庁の中の省庁」を通史と多様なテーマで論じ、近代日本を考える決定版!

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Posted by ブクログ

 警察行政を司っていたことから特高に繋げられ(所管は所管なので仕方がないのだが)戦後早々に解体されたためなんとなく「悪」のイメージがつきまとう内務省。その内実を通史と各所管に分けて綴った本。新書レベルでここまで詳かに内務省について研究した本はないのではないだろうか。

 意外だったこととしては1つに昭和に入って以降、かなり弱体化がすすみ終戦時には実質的な解体が進み始めていたことである。厚生省や企画院、軍需省などを通じて戦争中にかなりの権限が内務省から奪われていたことが分かる。杞憂に終わったとは言え、東條英機が首相・陸相のほかに内相も兼務した際内務省解体の嚆矢であると囁かれたのもこの辺の事情からではないだろうか。
 もう一つは軍部との距離が比較的遠かったことにある。ゴーストップ事件など単発での軍部とのいざこざを知っていたとは言え、内務省がいわゆる「革新官僚」を主流コースに乗せず軍部との繋がりが比較的薄かったのには驚いた。戦後GHQによって早々に解体されたために軍部との繋がりが濃いと勝手に考えていたが、地方総監部設置をめぐるいざこざなどを見ても実態は異なっていることがわかる。
 最後に「官庁の中の官庁」と言われつつもその歴史にはかなりの紆余曲折があったことであろう。昭和期の弱体化についてはすでに述べたが、発足当初は省内の予算審議すら大蔵省に握られていたり、政党内閣期は政権交代の度に幹部のクビがすげかわるなど、決して強権的とは言えない側面が見え隠れする。各省との力関係については今後の研究が待たれようが、1つの新しい視点と言えるのではないだろうか。

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2025年08月10日

Posted by ブクログ

本書は内務省成立から解体までの通史と内務省に関連するテーマ史で構成される。内務省は、現在の警察庁や国土交通省などさまざまな省庁を束ねた戦前随一の存在であった。ところが、本書によると、1930年代以降、内務省の持つ政治力の低下や担う対象がこれまで以上に広範囲に及んだことで、内務省の衰退の兆しは戦前の時点で現れていたという。

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2025年06月21日

Posted by ブクログ

こういう本が新書で出てしまうことが素晴らしいです。内容も網羅性があって、記載も平易で読みやすいです。厚いので読むのが少し大変でしたが。

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2025年06月10日

Posted by ブクログ

巨大だがイマイチ何をしているのかわからない・GHQによって解体されたイメージがある内務省の研究書籍。驚くべき管轄の広さとともに、陸軍や大蔵省とも渡り合った力強さに驚かされる。本土決戦間近において、陸軍と地方機関について争われ純粋な軍事組織に成り代わることを防いだとは知らなかった。内務省解体=民主化の達成とはならないのが歴史の面白いところであると感じる。

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2025年04月30日

Posted by ブクログ

現在の総務省(旧自治省)、国土交通省、厚生労働省、警察庁、都道府県知事などの淵源となり、その規模、権限の大きさから「省庁の中の省庁」として戦前の日本に大きな影響を及ぼした内務省について、若手・中堅の日本政治史研究者たちが様々な面から解説。
本書は、政治と行政にまたがる内務省の位置を論じる序章、4つの時期に分けての通史編、地方行政、神社宗教行政、警察行政、社会政策、内務省と軍部など多彩な行政分野と他のアクターとの関係を取り上げた10の論稿からなるテーマ編、あと多様な観点からのコラム等から構成されている。
新書としては500頁を超えるかなりの大部だが、様々な角度から「内務省」という大きな存在に切り込んでいて、内務省を通じて近代日本政治史を読み直すような試みであり、とても読み応えがあった。
内務省というと、選挙干渉や特高等による思想弾圧など、国民に対して抑圧的な官庁だったというイメージがあるが、それだけではない幅広い内務省の実態、そして時代によりいろいろと変遷があったこと、軍部との国民観の違いによるせめぎ合いなどについて知ることができ、戦前の日本の政治や行政に対する理解が深まった。
また、府県課長のイスにこだわった井上友一、社会政策に力を入れた田子一民など、それほど著名ではない内務省を支えた役人たちにも光を当てており、興味深かった。そして、五十嵐鉱三郎をはじめとする地方局の役人たちが地方の現場からの問合せについて闊達な議論により回答を練り上げていたことや、港湾行政をめぐる技術官僚のネットワークなど、当時の行政の生々しい姿を垣間見ることができたのも面白く感じた。

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2025年08月28日

Posted by ブクログ

章毎を見ていくと掘り下げが浅いと感じるテーマもあるが、それが物足りないのではなく、いかに内務省が巨大で、所管していた行政に一通り触れようとすると浅く成らざるを得なかった、と考えると、その巨大権力さには拒絶感を感じる。

誇大妄想も含めた財務省解体論もあるようだが、解体してみた所で、官邸なり旧内務省の様な省庁が取って変わるようならただの首のすげ替えに過ぎない。解体するのではなく、監視し制御する事こそ議論しなければならない。

谷島屋書店本店にて購入。

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2025年08月09日

H

購入済み

内務省の全体像を知ることが出来ました。本書にも記載がありますが、内務省というと治安維持法等の所為か悪の巣窟のようなイメージがありますが、多面体の一面でしかなかったことが理解できました。
戦後内務省を退官された官僚達の、その後の関係の記載があっても良かったと思いました。

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2025年08月21日

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