あらすじ
交番相談員が見抜く、警察官たちの闇と罪。
2025年度最注目の連作ミステリ短編集!
警察を定年退職し、非常勤の「交番相談員」として働いている百目鬼巴(どうめき・ともえ)。
見た目は普通のおばさんで、性格も穏やかだが、彼女には妙な噂があった。
「彼女には県警本部の刑事部長でも頭があがらない」
「現役時代には、未解決事件の捜査にあたってほしい、と熱烈なお呼びが掛かっていた」
「なぜか科学捜査の知識も豊富に有している」
半信半疑で一緒に働いていた若手警察官は、
しかしすぐにその噂が真実であることを知る。
彼女は卓越した洞察力で、目の前で起こっていることの
真相・裏側を立ちどころに見抜いてしまうのだ――。
『教場』シリーズの著者であり、
当代きっての短編ミステリの名手による、
新「警察小説」シリーズ、開幕です!
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Posted by ブクログ
今年4月の刊行を見落としていた、長岡弘樹さんの新シリーズだそうである。警察物ではあるが、キーパーソンは、警察を定年退職し、非常勤で働く交番相談員。百目鬼巴(どうめきともえ)という名前とは裏腹に、見た目は普通で温厚だが…。
「裏庭のある交番」は珍しいが、交番での警察官の自殺は時々耳にする。最近この手段はあまり聞かなくなった気がするが、その裏の真相とは。正直、百目鬼さんの説には少々無理があるが、それ以上に幕引きに突っ込みたくなったぞ。
「瞬刻の魔」。ある事故の後、警察学校時代からのライバルが、列車に身を投げた。百目鬼が語った説は、隅々までごもっとも。彼に警察官として何の落ち度もないが、それでも苦い思いは残る。生涯、あれは食べられないでは…。
「曲がった残効」。女性警察官が思いを寄せる相手が、勤務中に事故死した。どうしてたまたまそんな体験をし、どうして話してしまったのか…。彼女に直接の責任はなくても、生涯自身を責めるのでは。百目鬼よフォローして。
「冬の刻印」。交番の近所の外科クリニックに、しょっちゅう世話になっていた彼が、骨折して手術を受けた。体調が悪化して亡くなった医師が残した、メッセージとは。百目鬼はわかっていたから急かしたのか。彼はこの後どうする。
「嚙みついた沼」。彼が僻地の駐在所に異動を希望したのは、切実な理由があった。涙ぐましい努力は報われず、結局百目鬼があっさりと県警を動かしたのだが…。彼女は果たして何者か? 利用された「彼ら」も犠牲者だよなあ。
「土中の座標」。彼が応援に行っていた駐在所に、土砂が流れ込んできた。ちょうどその時訪問者もいて…。その機器を使う機会はほぼなくなったが、なるほどねえ。百目鬼はとっくにわかっていて、こんな演出をしたわけである。
罪を犯す警察官の多さに苦笑するが、ひねりが効いたシチュエーション数々は、初期の長岡作品を彷彿とさせる。百目鬼巴という元警察官に、風間と匹敵する凄みを感じた。『教場』シリーズに並ぶシリーズになるかもしれない。
Posted by ブクログ
長岡さんの短編6篇、前作たち同様今回も切れ味抜群。
この相談員の切れ者っぷりに暑さも吹っ飛ぶような爽快感を感じます。
「ものごとをほじくり返すとろくなことがない」が信条で実際そのようにスルーしてしまう(いいのでしょうか。でも信条ではなく心情を取ったということか⋯)事件もあり、「この人何者感」が読めば読むほど深まっていきます。
ぜひ交番相談員になる以前の現役の頃の話も読みたいけれどいつか出ることはあるのかな⋯それはないのか。現役引退した相談員という立場で事件に向き合うからおもしろい小説になるということか。
ゾッとする話も結構あり「瞬刻の魔」「曲がった残効」、とりわけ「噛みついた沼」は食欲も暫く失せるほどゾッとなりました。
いやぁもうこの時期うってつけ(笑)
しかし各短編の主人公のような交番職員というか、警察官ばかりだったらタイヘン。現実では警察官の不祥事も最近結構報道されるので、小説で楽しむだけであってほしいですね。
Posted by ブクログ
警察を定年退職した後、非常勤の交番相談員として働く百目鬼巴。有能な警察官だった百目鬼は、行く先々で警察官が起こす事件を鮮やかに解決する‥。
1話目は、先輩からのパワハラが原因で自殺した親友の仇を取った、警官の話。百目鬼は、張本人に推理を披露するも、どうもしないと言う。あ、見逃すんだ、とちょっと引いてしまった。確かに同情の余地はあるんだけど。本当に「教場」と同じ人が書いたのか?とすら思ってしまい、テンション下降。
短編集だから、サクサク読める。でも事件の内容は重いし、短編のせいか百目鬼のキャラクターが立ち上がって来ない。もう少し長めの話で、百目鬼の人となりをもっと深掘りしてほしかった。
唯一、カミツキガメの出てくる話は警官が悪さをするわけではなく、後味が良い。こういう話をもっと読みたかったと思う。
Posted by ブクログ
【収録作品】裏庭のある交番/瞬刻の魔/曲がった残効/冬の刻印/嚙みついた沼/土中の座標
警察を定年退職し、非常勤の交番相談員として働く百目鬼巴は見た目はふつうの優しげなおばさんだが、卓越した洞察力をもっている。
交番内部でのパワハラ、脱法ハーブ、逆さ眼鏡、意外な場所に残されたメモ、カミツキガメ、似顔絵の伝え方と、短編でテーマがはっきりしており、フェアに描かれているので、展開は読めるが、それでも十分面白い。
そして「教場」シリーズと異なり、交番相談員という立場や「ものごとをほじくり返すと、ろくなことがない」という考えから、「見逃す」という選択肢もあるのがいい(もちろん、甘い見逃しではなくて)。
ただ、「土中の座標」は、もう一ひねりして結末をひっくり返してほしかった。