【感想・ネタバレ】七王国の玉座〔改訂新版〕(上)のレビュー

あらすじ

ウェスタロス大陸の七王国は、長い夏が終わり、冬を迎えようとしていた。狂王エイリスを倒し、ターガリエン家から〈鉄の玉座〉を奪って以来、バラシオン家、ラニスター家、スターク家ら王国の貴族は、不安定な休戦状態を保ってきた。だが、ロバート王がエダード・スタークを強大な権力を持つ〈王の手〉に任命してから、状況は一変する。それぞれの家の覇権をめぐり様々な陰謀が渦巻き……。ローカス賞に輝く歴史絵巻開幕!〈氷と炎の歌〉第1部

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Posted by ブクログ

ネタバレ

J・R・R・マーティンが送る一大ファンタジー。ファンタジー小説かと思いきや読後感は戦国絵巻のそれに近く、数々の家同士の争いや権謀術数、数奇な運命に巻き込まれる子どもたちが描かれている。物語は様々な視点によって描かれており、複数のストーリーが同時進行するさまは、やや全体像の把握に困難を極めるが、それでも各エピソードの練り込み具合とキャラクターの魅力でぐいぐいと引き込まれてしまう。王の手に任命されて異変を探るエダート。妹からの手紙でラニスター家の不穏な動きを知り、それをエダートに伝えに行こうと旅に出るキャトリン。幼く、事態の変化をまだ知らないブラン。姉に引け目を感じながらも、姫らしくない活発さを誇るアリア。ナイツウォッチに任命された私生児ジョン・スノウ。遠き血で蛮族と政略結婚した、ドラゴンの血を引くデナーリス。物語は主にこの6つの視点で描かれる。自分がこうした戦国絵巻が好きだというのは新たな発見だった。

かつて大陸を支配した狂王エイリスを打倒し、新たな王となったロバート王。王ならではの野心と孤独感に苛まれながらも、ジョン・アリン公暗殺に異変を感じ、唯一の友人であり腹心の部下であるエダート王を王の手に任命する。豪放磊落なロバート王とやや堅物で真面目なエダードの関係は非常に分かりやすいが、両者とも死亡フラグが凄い。上巻では無事だが、下巻でこの二人の顛末が明らかになってからが本当の戦国時代の始まりだろう。エダードの息子ロブは14歳という年齢でウィンターフェル城の城主となるが、こちらもやや危うさを漂わせている血気盛んな若王子といったところで、いずれラニスター家との争う予感がする。弟のブランは密談を覗いてしまったが故に窓から落とされて下半身不随になったが、これはいずれ治るのだろうか。まだ7歳だが、この長い長い歴史絵巻の中でこの年齢や割かれた尺の長さから、数奇な運命に巻き込まれる主人公という感じがする。そういう意味では成長がとても楽しみである。クイーン・サーセイの息子ジョフリーに恋をしているサンサ、そんなサンサと仲が悪く、剣術を習っているアリアなど、次世代への種まきもしっかりと行われている。ただ、スターク家分裂の予感がして結構怖くもあるが。

ロバート王の妻であり、数々の異変の元凶でもあるクイーン・サーセイや分かりやすい残虐な王妃といったところで、そのサーセイと姉弟ながら通じている「王殺し」ことジェイミー・ラニスターも色々ときな臭い。この王殺しというのがそのままロバート王殺害に繋がるのではないかと読んでてヒヤヒヤしてくる。そんな悪徳のラニスター家の中でも稀代のトリックスターとして振る舞っているのはティリオン・ラニスターだろう。短剣の持ち主であるためブラン殺害未遂の容疑をかけられているが、この事件の真相はいまだ明らかになっていない。真犯人はラニスター姉弟だろうが、この家同士の戦争の前触れで、ティリオンの立場がどうなるか気がかりである。ブランの鞍を作ってやったり、ジョン・スノウとの会話など、スターク家の面々と親しい付き合いがあるので、やや引いたポジションの語り部として活躍スのではないだろうか。小鬼(インプ)という名称と皮肉な言い回しなど、実に魅力的なキャラクターである。

そんな戦国歴史絵巻の中でもう一人の主人公と言えるのはジョン・スノウだろう。エダードの私生児でという立場のせいか、その意味を知る娘のサンサや妻のキャトリンからはとにかく嫌われている。そんなコンプレックに苛まれているジョンだが、個人的に一番気に入ったエピソードは、母を娼婦呼ばわりした男を滅多打ちにしたら、武具師ドナル・ロイにエダードの私生児というバックボーンはここでは恵まれた文化資本であることをジョンに突きつけるシーンだろう。

滅多打ちにできたのは才能でも何でもなく、剣を持ったことのある、教わる人間に不自由しなかったが故の環境である。他の人間は母親が娼婦である人間は多く、剣など持ったこともない、喧嘩を習い覚えたのは裏路地や売春宿で、本物の剣を買うことができるほどの金持ちは二十人に一人もいない。そんな人間たちを滅多打ちにしたお前は弱い者イジメのがき大将に過ぎないという喝破は素晴らしかった。

非常に濃密で読み疲れるが、物語の密度は凄まじく、読んだ後にすぐさま下巻に手を伸ばしたくなるほどの中毒性がある。ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」はとりあえず下巻まで読んでから見てみることにしよう。

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2019年05月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これはこれは…すごい。
複数視点が歴史ファンタジーの魅力を引き出していて良い。
人物の心情を中心にしてない分、読んでて怪我しそう(感情移入してた人があっけなく死んだり)な臨場感が作品全体の雰囲気と重なって、どんどん読んじゃう。
大狼もその雰囲気にすごくあってる。
苛酷な境遇ながら思いやり深いジョン・スノウが好き。
気になる存在は〈小鬼〉ことティリオン。なにを目的にしているのかわからないから怖い。けど、嫌いになれない…。
かなりの読み応えで、まだまだ続くのが嬉しい。
このシリーズは、完結してるのかな?続き待ちはしたくないな。。。一気に読みたい!

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2015年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 やっぱり面白いですねぇ。
 前の版で1部〜4部まで全部読んだので、実質的には再読です。
 初読の時に比べると数多い登場人物もかなり理解出来ているし、
「ああ、ここがあの展開への伏線だったのね!」
「おおっ、ここで既に死亡フラグが立ってるやん!」
 とか、ちょっと違った読み方が出来て、楽しめました。

 ドラマ化もされましたし、日本で放映されたらまた原作がブームになるんじゃないかな?と、期待しています。

 で、用語変更ですが、
 まぁ、百歩譲って登場人物の表記の変更は良しとしても、特に必要も感じられない団体名や地名の変更はなくてもよかったんじゃないかなぁと、やっぱり思います。
 あのゴタゴタの所為で原作を敬遠した人がいたのなら、出版社にも読者にも、やはり勿体ない話でした。

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2012年08月29日

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