【感想・ネタバレ】乱歩と千畝―RAMPOとSEMPO―のレビュー

あらすじ

大学の先輩後輩、江戸川乱歩と杉原千畝。まだ何者でもない青年だったが、夢だけはあった。希望と不安を抱え、浅草の猥雑な路地を歩き語り合い、それぞれの道へ別れていく……。若き横溝正史や巨頭松岡洋右と出会い、新しい歴史を作り、互いの人生が交差しつつ感動の最終章へ。「真の友人はあなただけでしたよ」――泣ける傑作。

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★5 何者でもない青年、平井太郎と杉原千畝。夢と希望を胸に抱き、怒涛の昭和を生き抜く #乱歩と千畝

■あらすじ
平井太郎(江戸川乱歩)が早稲田大学の近所にある蕎麦屋に入ると、同じ学校の後輩と思われる学生に出会う。彼の名は杉原千畝、苦学生ながら国際社会での活躍を夢見る青年であった。

ある日二人が歩いていると官費で留学生を募集する広告を発見、千畝は参加することを決める。前途洋々な千畝に感化された平井は、自らも探偵小説を書こうと奮起するのだが…

何者でもない若い青年たちが、とてつもない夢と希望を抱き、怒涛の昭和初期を生き抜いてゆく。

■ぜっさん推しポイント
★5 もうこれ大河ドラマでいいじゃないでしょうか、おもろかった!

青柳碧人先生は、浜村渚の数学シリーズ、昔話シリーズが有名ですよね。そして大正昭和の近代歴史の小説も書かれているんです。博学な上に、トリックも発想力に富んでいて、いつもびっくりさせてもらってます。

本作は昭和の戦前戦後を舞台に、江戸川乱歩と杉原千畝という実在する二人のを描く青春小説。まず何がおもろいって二人の人物像ですよ、完全に惚れちゃいました。

・平井太郎(江戸川乱歩)
いつも愚痴ばかり吐いて、逃げることしか考えていないというダメ男。特に隆子さんと結婚するくだりなんかは爆笑ですよ、どんだけ責任感ないんだと。でもこの自信のなさ、度胸のなさが、紙の上で傑作を生みだす秘訣なのかもしれませんね。

そして誰よりも探偵小説を愛し、友人想いのいい人。作中さまざまなエピソードが出てきますが、きっとこんな人が近くいたら、友達になりたいなーと思っちゃう。

・杉原千畝
気は小さいが夢は大きい、目標のためなら努力ができる真面目な男。困っている人がいたら助けずにいられない優しい人でもある。そのため騙されることもしばしば。

有名なのはユダヤ人の逸話ですよね、本作でもそのエピソードが描かれています。彼のどれほどの葛藤があったのか、読めば読むほど手に力が入ってしまいました。

そしてもうひとつ。声を大にして言いたいのは、二人の奥さんも最高だという点。

・平井太郎の妻 隆子
いつも平井太郎のケツを叩く隆子奥様、もう爆笑です。そして肝っ玉の据わりっぷりがカッコイイ! 夫の才能を信じて、どこまでもついていく姿が沁みるんですよねー。こんな女性と結婚出来たら幸せだろうな。

・杉原千畝の妻 クラウディア、幸子
ロシア人のクラウディアは、千畝の一番の強みをよくわかってる優秀な人。

幸子はいつも千畝を支える優しい人。ここぞという時には意見を言えるしっかり者なんです。千畝が仕事に悩んでいた時に叱咤激励する一幕は、涙なしでは読めません。

こんな彼らが戦前戦後にどんな活躍をしたのか、実際におこった史実とフィクションを交えながら描いてく。20代の青年期から、終わりはどこまで描かれるのでしょうか… ぜひ読んでみて下さい。終盤に行けば行くほど涙腺がゆるんできて、マジ涙なしでは読めなくなります。

読み応え抜群の歴史エンタメ青春小説、ぜひ大河ドラマか映画化して欲しい! 直木賞候補作にふさわしい、青柳碧人先生の代表作となるような作品した。

■ぜっさん推しポイント
本作には実在のミステリー作家が次々と出てくる。横溝正史、松本清張など、ミステリーファンにもたまらない。もちろん彼らとの関係性は創作も多いのでしょうが、なんだか読んでると涙が止まらなくなっちゃうんです。

我が国日本において戦前時代からミステリーを書く作家がいて、それを読む人もいる。さらに次の世代が新しいミステリーを書き、読む人もいるんです。繰り返し繰り返し書かれ、読まれ続けるからこそ、令和の現代でもミステリーを楽しめるんですよね。

ミステリーを読んできて、こんなにも幸せになったことはないよ。心が暖かくなる素敵な作品でした。

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

同じ時代を生きた早稲田の先輩後輩の二人。
本当に交流があったとしたらこんなに面白い話になるのね。戦前戦後の激動の時代では、この二人に限らず誰しも波瀾万丈な人生だったと想像出来るけど、接点がなさそうなこの二人に着目したところがイイ!
乱歩がらみの有名な文化人も次々に登場して楽しい。
杉原千畝のリトアニアに赴任時の有名なエピソードは胸熱。戦時下の異国で信念を持って行動出来るその姿が素晴らしい。
直木賞ノミネート!本当に面白かった。

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2025年06月18日

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ネタバレ

読み終わった直後、この作品の直木賞ノミネートが発表され、熱烈に応援したい♪

――江戸川乱歩と杉浦千畝は、同郷、同じ出身中学校で、早稲田大学生だった。年齢が離れていることと、千畝が中退したことで、大学で会ったことはなかったが、後に早稲田の前の蕎麦屋で出会い、人生の節目節目にはなぜか立ち会う、ふしぎな友情を培っていく――。

乱歩と千畝は、たしかに知り合いではあったらしく、一緒に写っている写真が残っているそうだ。
青柳碧人さんはその写真を見て、この物語を考えたという。
『名探偵の生まれる夜』でも思ったけれども、青柳さんは、膨大な資料を読み込み、作家のプライベートと時代の事件とをすり合わせるのがべらぼうに巧い。
実は記憶がないほどの子ども時代から2人は邂逅していただの、乱歩の結婚に千畝が協力しただの、絶対フィクション! と分かるのに、リアリティ満載で、

もうこうだったってことでいいよ♪ なんて楽しいのかしら♪

と思わせてくれる。
小説を読む楽しさの大きな要素のひとつを、今回も、豪華メンバーで惜しげもなく提供してくれていた。

杉浦千畝といえばもちろん、第二次大戦中にユダヤ人の「命を救うビザ発行」の人だが、学生時代から外交官員時代の考えをじっくりと追うことで、「その行動」がいかに彼にとって必然だったか、が読者にしっかり腑に落ちる。そして、それが彼にとってはぜんぜん特別なことではなかったことも……。
その後の千畝の不遇・困窮についてはいちおう聞き知っていたけれども、その時期でも淡々と生活する千畝像は、ものすごく説得力があった。

時代設定的に、時代、特に戦争への変遷を描いた歴史ものの側面もあり、
とはいえ、メインは、千畝と乱歩の友情譚で、
かつ、2人のクセのある男性のお仕事小説としても、

ものすごーく!!秀逸な物語でした♡


―――――マニアのための補足

さて、ここからはミステリマニア向け感想です☆暑苦しくいきます☆

さすが青柳碧人、この作品は一冊まるまる日本の本格ミステリ史ともなっている。
もー楽しくてうれしくて♪
乱歩の作品はもちろん、横溝正史の『本陣殺人事件』はやっぱ再読しなきゃ!と思ったし、乱歩たちが戦前戦後憧れてやまなかった海外のミステリたちも懐かしく慕わしい。
特に、ザングウィルの『ビッグボウの殺人』の取り扱い方は最高のひと言!
これと、アイリッシュの『幻の女』は是が非でも再読せねば!

また、木々高太郎(のちの林久策)の『網膜脈視症』『人生の阿呆』とか、遙か昔に読んだ作品も今回思い出した♪ 現在まで至る、「医師で推理作家」の系譜の最初のひとだ。(いや、まあ、森鴎外だっつー意見もあるかもしれないけど、個人的には鴎外はミステリ作家だったとは思えないので)
芦辺拓のステキな名探偵・森江春策の名前は、この人へのリスペクトなんだよねー、とか、もういろんなことを思い出させてくれた。

北里柴三郎が木々高太郎を推薦したこと、乱歩が見出した小栗虫太郎・夢の久作・高木彬光など、綺羅星のごとくのミステリ作家たちが、ぽろぽろまー贅沢に出てくる出てくる!♪

そして、乱歩の影響を受けて、現代にまで続くミステリ百花繚乱期の端緒になった作家たちも。
全員、本名で出てくるので、誰がだれか、当てるのもめちゃくちゃ楽しかった。
中川透さんは有名かな。
ちい兄ちゃんと仲良しの、大井三重子さんとかね。『猫』は絶対再読しようっと。
城地さんとか、松本清張(きよはる)さんなんて、まんまなのよね(〃艸〃)

青柳碧人さんは、日経新聞のインタビューで、
「資料を読んで、大乱歩とかいわれているけど、けっこうダメダメな人だった、ってところも描きたいと思った。超マジメな千畝と並べればそこが引き立つかと思った」
といっていた。
実際、乱歩はかなりダメな若者→ダメなおっさんだったけれども、常に筆に愛情を感じました♡

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2025年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

江戸川乱歩と杉原千畝、この歴史上有名なふたりが実は友情を温めあっていたという史実が本当にあったのかとも思えるほど。そしてその他の横溝、松本、仁木、小関ら錚々たるメンバーが勢ぞろいで贅沢な読書の時間が過ごせた。
その当時、外務省を辞めさせられた千畝の生涯も生い立ちから知ることができ、改めて感動が深まる。近代史を知る上で文学界芸術界の上に戦争が落とす影の大きさが、改めて気付かされた。

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2025年05月31日

Posted by ブクログ

タイトルの通り、江戸川乱歩と杉原千畝の友情をめぐる物語。とはいっても本作で描かれている2人の交流や、当時のミステリ作家が次々と登場するくだりは恐らくフィクション。史実との絡め方は自然で違和感もなく、なんだかんだ王道の時代小説といった装いがした。
2人のキャラクター造詣は普通の域を出ない印象だけど、数々のクセのある人物との出会いによって徐々に物語が広がっていくので、読んでいて飽きない。創作者の苦悩と外交官の苦悩がそれぞれ描かれるが、それをあまり感じさせないリズムの良い軽妙な筆致がこの作品の魅力のひとつだと思う。
個人的には積極的に手に取る分野の作品ではないんだけど、重たい話が多かった今回の候補作の中では一番安心して読めた。

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2025年07月13日

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同じ時代を生きた著名な方々が、少しずつすれ違って行くという視点が面白くて斬新で、よい作品でした。
物語の最後があっけなかったなと思いましたが、人の人生の儚さなのかなと妙に納得しました。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

歴史ファンタジー!大河ドラマです^_^
非常に面白く読めました。。。。。
青柳さんて………………
こんな話書きはるんやぁ………………凄え
沢山過ぎる有名人も続々登場します。
史実通りの話も混ざってて
フィクション➕ノンフィクション
やはり《命のビザ》のところは泣けますね( ; ; )

この話………………大河ドラマに推薦!!!

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2025年06月27日

Posted by ブクログ

社会に馴染めない人は多い。
毎日出勤が出来なかったり、時間を守れなかったり…
しかし、稀有な才能を持っており時に偉業を成し遂げることがある。

乱歩と千畝。
歴史上の2人がちょっとしたことからそれぞれの違う人生の中で交わるというフィクション!
実際にそうだったとあってと言われても信じてしまいそうな話で、この2人を中心に有名な作家達が集ってくるという夢のようなお話だった!

2人とも多くの人を助け、今の日本に大きな影響を与えた人物。それぞれを見ると両極端な性格であるように思えるが、今回のように描かれると実際に似た部分が多いのかもしれない。
江戸川乱歩の転職や放浪癖などまさに今の時代なら社会に馴染めてない人だ。むしろ小説家になるために産まれてきた人物だったのだろう。
杉原千畝はむしろ一つの目標に向かってまっすぐだ。だだ日本に馴染めなかったのかと思う。

冒頭に社会に馴染めない人のことを少し触れたが、きっと馴染めないのではなく、そもそもの本質的なものが違って馴染まないのだろう。
現在はいろいろな働き方があるのでいろんなところで才能を発揮する人が増えて、本誌の2人のように大きな成果を残してくれたらと思う。

1900年代初めからの激動の時代を生きた2人に改めて感謝と敬意を表したいと思った。

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2025年06月24日

Posted by ブクログ

 乱歩と正史とのやりとりが面白い❢❢❢

(本文より)

「ずいぶん老けたね。」
「自分の還暦祝賀会て、ようそんなこと言いますね。」
「本当だ。」
「立派にならはったな。」
「横溝君、私は不思議でならんのだよ。これは本当のことかね。」
「なんやて?」
「私は作家になってから何度か書けなくなってから、あちこち逃げ出した。」
「しっとるわ」
「ずっと書かずに迷惑をかけ続けた時期もある。けっして勤勉で誠実な作家とは言えない。」
「知っとるちゃうねん。」
「それなのに今こうして多くの人に囲まれてこんな立派な会を開いてもらっている。そんなに価値のあることをしたかね。」
「ほんま謎やで」
「あんた謎と共に生きとる。江戸川乱歩が尊敬される作家としてここにいれる。謎の中の謎や」

「金田一耕助はこの謎を解いてくれないか。」
「明智小五郎に頼まんかい。」

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2025年06月23日

Posted by ブクログ

探偵作家と外交官、若き2人大学の先輩後輩、江戸川乱歩と杉原千畝が友となりという斬新な発想で描く波瀾万丈の物語。当時の出版事情なども描かれ、その時代に名を残したそうそうたるメンパーが勢揃いしているのも楽しめる。「命のビザ」以外では殆ど知らなかった千畝の生涯も生い立ちから知ることができ興味深かった。

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

江戸川乱歩と杉原千畝。まったく接点などなさそうな二人ですが、ともに早稲田大学に在籍し同じ時代を生きた人。ということで、もしもこのような交友があったなら、と楽しめる物語です。
仕事が長続きせず社会不適合者のような乱歩と、勤勉な杉原千畝。対照的とも思える二人の出会いから、時代の流れにそって描かれる物語は楽しくもあり、切なくもあり。決して楽観的な時代ではなく、二人ともそれぞれの生き方に苦しむけれど、この二人でしかできないことがそれぞれにあるのですよね。そしてどちらもとても魅力的なキャラクターとして描かれています。
同じ時代を生きたさまざまな有名人が登場するのも楽しいところ。特に「本陣殺人事件」に刺激されてさまざまな推理作家たちが誕生するところ、わくわくしちゃいました。ミステリファンとしては、やはり乱歩の偉大さは比類なきものとしか思えません。

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

この二人でどんな物語を語るのか?興味深かったが、一人一人の物語はそれぞれおもしろかった。

ミステリー好きには、乱歩の部分はいろんな作家が出できたり、思わずニヤリしてしまう。
日本のシンドラーと言われる千畝の部分は、あの時代の運命に流されて翻弄されている。

読んでいる最中に直木賞にノミネートされたみたいですね。おめでとうございます。

帯に書いてあった通り、それぞれの分野に歴史を変えた2人をふとした所で出会い知り合う。
運命と言うのは摩訶不思議である。
25/06/12 27 冊目

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2025年06月12日

Posted by ブクログ

あーいつあれが起こるんだーと思いつつ、最後は劇的の怒涛。全く別方面の2人の人生の交錯。奥さんたちがみんな良いなー。

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

面白い…のか?というのが半ば過ぎまできても正直なところだった。
千畝さんてどんな人だったっけと思いつつも検索もしないで読み進め、「あ!あの人か!!!」となった時は感動してしまった(不勉強ですいません)
2人の交流だけではなくて、同じ時代の作家や政治家たちが様々出てくるから読み進めてみていたけど、時代が暗くなっていったあたりからはスピード上がった。やはり戦争は嫌いだし、関東軍や日本の軍に対する評価なんて底辺でしか無いけど、そこだけではないよねと。
波乱万丈だったなあ。
読んで良かった。
横溝正史と江戸川乱歩の掛け合い、笑っちゃうけどとても良かった。
ほんとにこんな感じだったんだろうか。

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2025年06月29日

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