あらすじ
ドラゴンズは「不条理」を学ぶ教科書だった。
球団史上初の「3年連続最下位」で2025年シーズンを迎える中日ドラゴンズ。井上新監督による再出発をドラファンは注目する一方、“どうせドラゴンズは…”と達観(諦観)の目で見ているファンも少なくない。
それというのも、強かった時も弱かった時もファンは「残酷な思い」を味わい続けた歴史があるからだ。
そんな屈折した思いを、ファン歴半世紀の拓殖大学教授・富坂聰氏が綴る。日中問題の専門家による「中日(ファン)問題」とは──。
●強くても嫌われ、弱くても蔑まれてしまう中日ファン
●長嶋茂雄と松井秀喜の花道を邪魔した「KYなチーム」
●名選手でもオールスターに選出されない「田舎球団の悲哀」
●「ナゴヤ・アズ・ナンバーワン」「名古屋ファースト」のファン心理
──そんな“悲哀”を味わっても、“冷たい視線”を浴びても応援するファン。そうした「残酷さ」を含めてドラゴンズは魅力的だからである。
巻末には「ウーやん」こと宇野勝氏と著者による爆笑スペシャル対談「ドラゴンズと名古屋にどっぷり浸かった私たち」を収録!
(底本 2025年4月発売作品)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
日中関係の専門家によるドラゴンズ本。手に取るまでは、アカデミックな分析が中心かと想像していたが、読み進めるうちに、それは熱烈なドラゴンズファンによる愛情たっぷりの一冊だと感じた。
本書は、「民主主義」「人材育成」「敵役のつらさ」「多様性」という四つの視点からドラゴンズの歴史を紐解く。著者の過去の経験が織り交ぜられながら語られるドラゴンズの歩みは、単なる野球チームの興亡史に留まらない、普遍的なテーマへの深い洞察を与えてくれる。
専門家という肩書を意識させないほど、平易な言葉で綴られているにも関わらず、その内容は示唆に富んでいる。ドラゴンズという共通の話題を通して、民主主義のあり方、人材育成の重要性、競争社会における他者の立場への想像力、そして多様な価値観の尊重といった、現代社会が抱える課題に自然と意識が向かう。
何よりも、ページをめくるごとに伝わってくる著者のドラゴンズへの深い愛情が魅力的だ。専門的な知識を背景に持ちながらも、一人のファンとしての熱い想いが、読者を惹きつけ、共感を呼ぶ。
肩肘張らずに読めるにも関わらず、読み終えた後には、ドラゴンズというローカルな野球チームを通して、社会や人間関係について深く考えさせられる。野球ファンはもちろんのこと、そうでない人にも、新たな視点を与えてくれるだろう。
これは、専門家というフィルターを通した、愛情と洞察に満ちた、新しい形のドラゴンズ本と言えるだろう。非常に読みやすく、そして何よりも面白かった。
Posted by ブクログ
中日戦を見にナゴヤドームに向かう電車で読み進めていました。小さい頃テレビで見ていた選手の名前やら、父から聞いたことのある選手の名前やら続々と出てきて生まれながらのドラファンとしてはクスクスしながら読みました。
ドラゴンズ…今年はBクラス確定しちゃったけど、ヤキモキしたり絶望したりしたけど、でもなんだかんだ最後は大好き、頑張ってほしいに収束しちゃうんだよな、この本を読んでクスクスする人と一緒に語り合ってみたいなーなんて思ったり。
いつも読まないタイプの本で面白く読みました!
Posted by ブクログ
自分はドラゴンズファンでないが、愛知県人。幼少の頃から周りに沢山のドラゴンズファンを見てきているので、
「どうせドラゴンズ」の珍しくもない話であったが、これで酒席でのドラファンを凹ませるネタを仕込むことができた。
Posted by ブクログ
ドラゴンズファンとしては、ちょっと本の内容が軽くても星4つはいるよね。
関東でドラゴンズファンを続けていくには愛知県在住の私とは違う苦労、見方があるってことを教えてくれた。
Make Dragons Great Again
Posted by ブクログ
頭から尻尾まで、どこをとっても100パーセントドラゴンズファンの生き様。技術論や組織論なんてものは一ミリも存在しない、純然たるまじりっけなしのドラゴンズ雑談。いかにしてドラゴンズファンはドラゴンズファンとなるのか、ドラゴンズファンの生態とは?で一冊本にするなんてどうかしてる(褒め言葉)
Posted by ブクログ
近年低迷を続ける中日ドラゴンズ。愛知県出身日中(中国)関係の専門家が語るドラゴンズ愛。東京や大阪とまた異なる文化、名古屋独特の環境。地元から見た中日ドラゴンズに関するラブレター。
過去のエピソードを多少は織り交ぜるもちょっと食傷気味。自虐が過ぎる感あり。
ただし、あの宇野勝との対談は素晴らしい。
Posted by ブクログ
■前説
本や雑誌で散見するタイガースの評論って、スカタンぶりも愛嬌と見なす自虐性、スカタンぶりをことさら糾弾するような他虐性、大体このふたつに分けられ、キャッチーなタイトルが付けられる。
雑誌『Number』は1984年の開幕特集号で、『阪神は大阪の恥やと言われていいのか、タイガース』と奮起を促す激烈なタイトルが表紙を飾った。あの85年日本一の前年に。
本拠地 甲子園は西宮市だから兵庫県の球団。なのに、なんで大阪やねん⁈と小さく憤ったが、その4年後に森喜朗が『大阪は痰壺だ!』と宣い、溜飲が下がった。
余談はさておき…、新書でドラゴンズ本が出現し、タイトル見て思わず苦笑い。ドラゴンズファンもそうなのね…と、我が同胞と出会えた気分になった。
著者の名前を見て、びっくり!ちょくちょく報道番組でお見受けする富坂聰さんではないですか⁈著者は私より1つ下、ドラキチ歴は半世紀。これもワタシのトラキチ歴と同じ。筋金入りのドラキチが語る『ドラゴンズは人生の理不尽さを学ぶ教科書』はそのままトラキチに置き換えられますなぁ。
トラキチもドラキチも長年にわたり、期待をしては裏切られの繰り返しの中で育まれた『哀愁と愛情』は、時に『近親憎悪』にも似た激情へと変わり、何が因果でこの球団を好きになってしまったのかと嘆いたことも数知れず。
ドラをトラに置き換えながら、〈日中スペシャリストが綴る『深刻すぎる中日問題』〉を精読。では、肝心な内容へと移りましょう。
■内容
本書は長年『中日ドラゴンズ』を愛する著者が、ジャーナリスト的視点であたかも社会問題を扱うように…、とは言え表現は深刻ぶらず、自虐に走らず、一貫してユーモラスに綴る。
4つのテーマで構成される。
①中日問題スペシャリストによる分析
②ファンすら悩む『深刻すぎる中日問題』
③強いと嫌われる、弱いと愛される…ドラゴンズ特有の存在感
④ドラゴンズは人生の理不尽さを学ぶ“教材”だ
…となっている。
中でも『深刻すぎる中日問題』は、単なる成績不振ではない『構造的な問題』が横たわると指摘。平たく言えば…〈球団の体質や運営〉〈ファンとの関係性〉。
〈深刻すぎる中日問題〉については、本書を読んでいただくとして、要は… 球団の掲げる運営方針と一向に伴わない成績。とりわけ落合政権時の常勝球団時代とポスト落合時代の今に至る長い低迷。このふたつにドラゴンズの特異性が顕著に出ていると指摘。
落合時代には『野球が地味すぎて勝ってもつまらない』と言われ、リーグ優勝しながら解任。ミスタードラゴンズ立浪政権は3年連続最下位ながら、バンテリンドームは常に満員という、球団もファンも不可思議な現象に一役を買う。
著者はその現象を指して、『ドラゴンズは人生の理不尽を学ぶ教材』であると総括。
・正しいことをしても報われない
・努力をしても不遇な扱いを受ける
…そんな理不尽さを、ドラゴンズを通して“体感”できたという、健気さと悲哀に満ちた深い考察が提示される。
■感想
ドラゴンズを通して見える『報われない愛』『かすな希望』『離れられない宿命』…、よ〜くわかります。胸にズシンときます。
なぜ、強い球団にする経営努力をしないのか?
なぜ、有望選手を育てられないのか?
なぜ、生え抜きスター選手を放り出すのか?
なぜ、監督だけに責任を負わすのか?
…と、積年の解決されない疑問を抱きつつも、今日もファンは声を枯らして応援してしまう。
本書はドラファンの『報われなさ』と『離れられなさ』の一切を引き受けた…、世の贔屓球団のあるファンに捧げられた黙示録のようなものと読んだ。愛と業を構造をえぐり出した社会心理学の好事例とも読める好著。
Posted by ブクログ
日中問題を専門とする大学教授による中日ドラゴンズ論。
愛知県出身で中日ドラゴンズファンでもある著者が、中日ドラゴンズにまつわる過去の出来事を交えながらその不憫さというか理不尽さを嘆く内容になっており、昔からのファンにとっては懐かしい話も多いわけですが、そうでなければ一体何が言いたいのかよくわからない、なかなか評価しづらい内容です。
巨人を中心に語られるプロ野球。それ以外の球団はどうしても脇役扱いされがちですが、それをふまえて地元球団をそれぞれが応援していけばいいのかなと思います。
<目次>
第1章 ドラゴンズに学んだ「民主主義」の不完全さ
第2章 ドラゴンズに学んだ「敵役」の生きづらさ
第3章 ドラゴンズに学んだ「人材育成」の難しさ
第4章 ドラゴンズに学んだ「多様性」の大切さ
特別対談 宇野勝×富坂聰「ドラゴンズと名古屋にどっぷり浸かった私たち」