あらすじ
ピュア度100%! ハートフル青春小説!
いみじ! 新入生、部活つくったってよ
県立菅原高校の入学式当日、同じクラスになった平尾安以加から「平安時代に興味ない?」と牧原栞は声をかけられた。「平安部を作りたい」という安以加の熱意に入部を決めるが、新部を創設するには5人の部員が必要だった。あと3人(泣)!!
クラスメートから上級生まで声をかけ、部員集めに奔走するが──
「平安部って、何やるの?」
《平安部員求む!》
わたしたちと一緒に平安の心を学びませんか?
◎平尾安以加(ひらお・あいか)
1年5組
平安時代大好き。
◎牧原 栞(まきはら・しおり)
1年5組
赤染衛門似
◎大日向大貴(おおひなた・だいき)
1年2組
中学まではサッカー部
◎明石すみれ(あかし・すみれ)
2年1組
元百人一首部の幽霊部員
◎光吉幸太郎(みつよし・こうたろう)
2年3組
元物理部 イケメン
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Posted by ブクログ
それいけ!平安部は、一見すると軽やかな部活動青春小説の装いをまといながら、その実、青春という時間のかけがえのなさを静かに、しかし確かな筆致で掬い上げた作品である。平安という遠い時代を題材に据えながらも、本作が描いているのは決して過去への憧憬だけではない。むしろそこにあるのは、「何かに心を動かされ、それを誰かと共有したいと願う」という、時代を超えて普遍的な衝動だ。
物語の中心にあるのは、決して劇的とは言えない日々の積み重ねである。だが、その“何気なさ”こそが本作の強度を形作っている。部を立ち上げ、仲間を集め、試行錯誤を重ねながら形にしていく過程は、派手な衝突や過剰なドラマに頼ることなく、むしろ現実に近い温度で描かれる。その結果、読者は登場人物たちの歩幅に寄り添いながら、彼らが少しずつ前に進んでいく手応えを、確かな実感として受け取ることになる。
また、本作の魅力は“好き”という感情の扱い方にある。それは声高に主張されるものではなく、時に戸惑いながら、時に他者との距離を測りながら、ゆっくりと輪郭を持っていく。その過程はどこまでも繊細で、同時に誠実だ。平安文化という一見すると敷居の高い題材も、彼らのまなざしを通すことで、遠い知識ではなく「自分の言葉で語りうるもの」へと変わっていく。この変換のプロセスこそが、本作の静かな感動の核である。
さらに特筆すべきは、作品全体を包み込む空気の柔らかさだ。登場人物たちは互いを強く否定することなく、それぞれの在り方を受け止めながら関係を築いていく。その距離感は理想化されているようでいて、どこか現実的でもある。だからこそ読者は、そこに描かれる居場所に対して、単なる憧れ以上の親しみを抱くのだろう。
本作には、劇的なカタルシスや鮮烈な転換点は多くない。しかしそれは欠点ではなく、むしろ意図された美点である。大きな出来事ではなく、小さな選択と積み重ねによって人は変わっていくのだという事実を、丁寧に、そして揺るぎなく描き出しているからだ。その意味で本作は、読後に強い余韻を残す“静かな成長の物語”と言える。
読み終えたときに胸に残るのは、派手な感動ではない。けれど確かに、「あの時間はかけがえのないものだった」と振り返るような、淡くも確かな光である。それいけ!平安部は、その光を静かに差し出してくる、誠実で滋味深い青春小説である。