あらすじ
どうして僕を死なせたの? 赤川次郎の哀しみと恐怖に満ちた、初期の傑作ホラー。優雅に横たわる別荘風の建物の子供部屋には10歳の男の子の写真と、黒く血に汚れたシャツが置かれている。8年前、ジャングルジムの上から転落させ、死亡させた級友たちに、莫大な遺産を受け継いだ母親は復讐を決意する! 母親の復讐に、昔のままのシャツは真赤な血を流し、そして舞う─著者会心の長篇恐怖ミステリー。
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Posted by ブクログ
心理描写がほとんどなく、
読者の共感を呼び起こさない。
赤川次郎らしい恐怖小説。
書き手と、読み手との間にあるのは、
通勤時間に読める読み物という位置づけしかない。
社会問題を解決したいのでもなく、
親の怨念だけを主張しているのでもない。
子供部屋のシャツが一人歩きしている。
Posted by ブクログ
その昔、初版で読んで、余りにも怖くて手元に置いておけなかった本。
でももう一度読んでみたくて堪らなかった本。
今日本屋に行ったら新装版を見付けて、飛び付く様に買い、一気に読んだ。
前に読んだ時は子供だったし、今読んでも以前の様な怖さは感じないかとも思っていたけど、やっぱり滅茶苦茶怖かった……(泣)。
それが嬉しくもあるけど、夜中に目覚めたくないなぁ。
昔読んだ時も思ったのだけど、本当に怖い話が好きな人からすると、特に怖くもない本じゃないだろうか。それなのに何で自分はこんなに怖いのか、ちょっと不思議な気もする。
そういえば、山岸凉子の『わたしの人形は良い人形』という漫画も物凄く怖いのだけど、この本と雰囲気が似ている気がする。
最早手に負えなくなった子供、というのが私の恐怖のツボなんだろうか。
Posted by ブクログ
山に出掛けるときにザックに放り込んだ一冊。たぶん何年も(十何年も、二十何年も)前に手にした本なんだろうな。中身はまるでおぼえちゃなかったけど。
Posted by ブクログ
“何だろう?何かが、幸子の記憶に触れたのだ。
二階に上ると、幸子は、無人の廊下を、見通した。たった今、人がいたのに違いない。気配がある。空気の乱れ、とでもいうべきものが。
「——どこにいるの?」
と、幸子は言った。
自分の声が、びっくりするほど小さく、震えている。——しっかりして!あなたは以前には教師だったのよ!
自分を叱って、ゆっくりと廊下を歩き出したが、
「そうだわ」
呟きと共に、幸子の足は止まった。
教師。教師だったころ。——その記憶に、あれが触れたのだ。
あの甲高い、男の子の笑い声が。”[P.151]
簡素な文章から滲み出る静かな恐怖。
“「久美。——パパだ」
佐田は、久美の部屋のドアをノックした。
久美が、ドアを開けた。
「パパ……。どうしたの?」
「終ったよ。——何もかも、終った」
佐田の言葉の意味を、久美は分からなかったろうが、しかし、あえて訊こうともしなかった。
「もう……大丈夫なの?」
「ああ。大丈夫だ」
佐田は、力一杯、久美を抱きしめた。
佐田の背中に、貼りつくようにくっついていた、汚れたシャツが、フワリと床に落ちたのには、二人とも気付かなかった。”[P.236]