あらすじ
童話「シンデレラ」について調べていたのを機にライターの〈私〉は、長野県諏訪市に生れ育った倉島泉(くらしません)について、親族や友人に取材をしてゆくことになる。両親に溺愛(できあい)される妹の陰で理不尽なほどの扱いを受けていた少女時代、地元名家の御曹司(おんぞうし)との縁談、等々。取材するうち、リッチで幸せとは何かを、〈私〉が問われるようになるドキュメンタリータッチのファンタジー。
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Posted by ブクログ
一読後、胸の中に美しく青い星空が広がるような気がしました。そして、その星々を映すこれまた美しい湖。湖に浮かぶ一艘の小舟。小舟の中には………
倉島泉(せん)というリアル・シンデレラのお話です。泉ちゃんは、ちゃんと両親揃っていて、可愛い妹もいて、傍目には何不自由なく暮らしています。けど、母親は今でいう毒親で、その暮らしは童話のシンデレラ同様、辛いものでした。傍目にわかりにくいだけ、シンデレラより悲惨だったのかも、です。
毒親の心ない言葉に、もう死んでしまいたい、自分なんていない方がいいんだ、と思いつめていた泉ちゃん。十二の冬、そんな泉ちゃんに魔法使いがやってきます。
「死はすぐそこにあるゆえ、あわて死にするべからず」
「生きてるあいだは生きてるあいだをたのしく過ごすざんす」
「あなた、あなたの靴で生きてるあいだ歩きなさい」
さらば、あさにけにかたときさらず。
魔法使いは3つのお願いを叶えてくれると言いました。泉ちゃんの願ったねがいは
1、妹が丈夫になりますように
2、大きくなったら、お父さんとお母さんと離れて暮らせますように
3つめのお願いは、物語の最後まで明かされません。
傍目には、毒親に虐げられ、可愛い妹の引き立て役で、実家の旅館を再建した功労者なのに掃除婦、雑役婦のように見られ、何もいいことのない、不幸な女にしか見えない泉ちゃん。でも、彼女は実に賢く美しい、本物の姫で、自らの王国をきっちり繁栄させました。自分の靴で自分の人生を歩いた。誰も必要とせずに。
泉ちゃんの願った3つ目のお願いは
3、自分の周りにいる自分じゃない人にいいことがあったら、
自分もうれしくなれるようにしてください
うん、羨んだり妬んだりをパワーにするのもアリだけど。他人の幸せも自分の幸せ、幸せが2倍。すごく豊かだよね。
泉ちゃんは途方もなく幸せなのでした。そして、馬車に乗って消えてしまう。
けれど永遠に、人々の記憶に存在し続けるのです。
Posted by ブクログ
不遇に生まれて幸せに生きるとは。幸せは環境、他者によってもたらされるものなのか、はたまた自分が自分のまま、人を蹴落とさず自分の靴を履いて今あるものを教授するのか。泉のように生きられたらと思わなくないけど、スタンダードな幸せから価値観ズレた泉が悪意ある噂でエンタメとしてコンテンツ化されるくだりはとても怖かったです。