あらすじ
「静かな退職」――アメリカのキャリアコーチが発信し始めた「Quiet Quitting」の和訳で、企業を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やるべき業務をやるだけの状態である。「働いてはいるけれど、積極的に仕事の意義を見出していない」のだから、退職と同じという意味で「静かな退職」なのだ。 ・言われた仕事はやるが、会社への過剰な奉仕はしたくない。 ・社内の面倒くさい付き合いは可能な限り断る。 ・上司や顧客の不合理な要望は受け入れない。 ・残業は最小限にとどめ、有給休暇もしっかり取る。 こんな社員に対して、旧来の働き方に慣れたミドルは納得がいかず、軋轢が増えていると言われる。会社へのエンゲージメントが下がれば、生産性が下がり、会社としての目標数値の達成もおぼつかなくなるから当然である。そこで著者は、「静かな退職」が生まれた社会の構造変化を解説するとともに、管理職、企業側はどのように対処すればよいのかを述べる。また「静かな退職」を選択したビジネスパーソンの行動指針、収入を含めたライフプランを提案する。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
「静かな退職」と聞くと「働かないおじさん」と連想してしまう人がいると思いますが(わたしがそうでした)、
内容はまったく反対のものでした。
上を見て働く(出世のために働く)のではなく、
足元を見て働こう(自分の身の丈にあった仕事を的確に熟そう)、ということなのだと思いました。
・マナー良く
・反論せず
・新規チャレンジせず
・得意分野を確立する
効率的に成果を出していくことで、生産性の高い人財となるにはどうするか?
ということが書いてあり、自分にとって最適なライフワークバランスを目指すことが大事なんだと提唱してるようにも感じます。
ただ、本書にもあるように、日本企業は誰にでもエリート街道に乗れるような錯覚があることも事実です。とくに日本は中小企業がやたら多く、実務者レベルのスキルしかないのに会社役員になれてしまうような社会構造です。
本書の言う「静かな退職」という生き方が大半になると、日本が誇ってきた「中流階級」が没落し続けると思いますが、それは好むと好まざると止められないのかなと感じます。
Posted by ブクログ
・「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、会社を辞めるわけではなく、出世や過剰な奉仕を目指さず、与えられた仕事をきちんとこなすが、それ以上はやらない 働き方を指す。
・日本では「退職」という語感からネガティブに受け取られがちだが、本書はこの働き方を取り巻く 社会的・構造的変化 を読み解く内容となっている。
構成は以下の8章。
1.日本に蔓延する「忙しい毎日」の正体
2.欧米では「静かな退職」が標準であるという現実
3.「忙しい毎日」が再生産される仕組み
4.「忙しさ」を崩す伏兵の登場
5.「静かな退職」を実現するための仕事術
6.「静かな退職者」の生活設計
7.企業経営が変わる「静かな退職」
8.政策からも「忙しい毎日」を抜き取る
・第1章では、日本で長時間労働や過剰な業務が常態化した理由を分析。終身雇用、年功序列、奉仕的労働の美徳化といった文化が「忙しさ」を再生産していると指摘する。
・第2章では、欧米では「静かな退職」的な働き方がむしろ標準であることを紹介。労働者はプライベートを重視し、仕事との間に明確な境界線を引いている。
・第3章では、「忙しい毎日」が強化され続ける仕組みを説明。個人の努力主義や企業の評価制度が「頑張る人ほど報われにくい」構造を生み出しているとする。
・第4章では、価値観の多様化、女性の社会進出、副業・兼業の広がりなどが「忙しさ」を揺さぶる変化として描かれる。
・第5章では、「静かな退職」を選ぶための具体的な働き方を提案。
-「やらないこと」を明確にし、境界線を引く。
-与えられた職務を誠実にこなしつつ、過剰な奉仕を避ける。
-外部市場を意識し、スキルアップや副業を並行する。
-職場で良好な印象を保ちながら、余裕ある働き方を実現する。
・第6章では、静かな退職を選ぶ人の生活設計を扱う。収入・支出・キャリア・貯蓄などを見直し、長期的なバランスを取ることが重要だと説く。
・第7章では、企業側の視点を提示。静かな退職者を「怠け者」と見るのではなく、組織の成熟や効率化を促す存在 と捉えるべきだと主張する。旧来の「根性型労働」はすでに機能不全に陥っていると論じる。
・第8章では、働き方改革や制度設計の観点から、社会全体で「忙しい働き方」を是正する方向性を提示。政策・文化・組織構造の三位一体で変革が必要だとする。
・著者が伝えたいのは、静かな退職は怠惰ではなく、自分と仕事との関係を再構築し、長く健やかに働くための戦略的選択 だということ。
・また、個人の問題に矮小化するのではなく、制度・文化が生む「過剰な忙しさ」の構造を直視すべきだと訴える。
・仕事以外の価値――家族、健康、趣味、自己成長――を重視し、「最低限+余裕あり」の働き方を選ぶことこそ、これからの時代の適応力になると結論づけている。
Posted by ブクログ
本書は、今日本でも注目されている「静かな退職」の背景と、日本社会での今後の対応策を紹介した一冊。
特に、2000年代の女性の出産ラッシュが契機となったという視点は新鮮で興味深かった。
また、欧米で静かな退職が当たり前とされる環境を丁寧に説明しており理解が深まった。
著者は、日本でも「忙しい日常から離れること」がケアワークなどの社会課題解決につながると提案。
高度プロフェッショナル制度を労働条件改善と合わせて進めるという考えには共感したが、ジョブローテーション廃止など現実的な実行には課題も感じた。
AI導入の影響にも今後触れてほしいと思う。