あらすじ
山地が七割を占め、地震や台風にしばしば見舞われる日本。
この試練の多い土地に住みついた日本人は、古来、道を通し、川筋を変え、営々と自然に働きかけてきた。
私たちが見る風景は、自然と人が共に造り上げたものなのだ。
本書は、まず日本の国土の地形的・社会的特徴を明らかにする。
さらに大震災に見舞われ、財政危機にある今、海外に伍して豊かな国土を築き上げ、日本人が再び活力を取り戻すために何が必要かを提言する。
■□■目次■□■
第1章 国土はどう形成されてきたか
第2章 日本列島の自然条件―わが国土の実情1
第3章 国土の社会条件―わが国土の実情2
第4章 これまでの国土造り
第5章 これからの国土造り
終章 人の輝きを国土が支える―「人と国土」の思想
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Posted by ブクログ
『なんで家族を続けるの?』(内田也哉子 中野信子)で、
「(日本は)豊かに見えるけれども、耕作面積は少ないし、災害にも遭いやすいし、資源も少ないし、意外と潜在的には貧しい国」という一文が気になった時に、
「日本人って、災害大国でどうやって過ごしてきたんだっけ??」と気になって手に取った『国土と日本人』(大石久和)。
災害をテーマとして読もうと思って開いたのですが、
土地開発や日本人の特徴に関する面も読めて楽しかったです。
欧米との比較で「これだけ違うんだ!」って思った…。
弓状列島の中央を脊梁山脈が縦貫している事によるインフラ整備や気象災害対策の難しさについての話、
欧米人が日本の川を見た時、母国とあまりに違い過ぎて「これは川ではなく滝」と言っていたという話、
「私死んだら、私が買った愛するゴッホの絵と一緒に燃やして」とある人物が発言した事がヨーロッパに伝わった時に、《所有》と《公共使用》のどちらを優先するかという日本とヨーロッパの違いが大きく出た話、
「必要かどうか」が問われた【一県一空港】が東日本大震災で大いに活用された話など……
興味深い話満載でした。
ただ、
「なるほど!こういう事あったんだ!」っていう感動とそのインプットはあったけど、
自分意見がなかなか出てこない…。
まだそのレベルに至っていないという事なのか何なのか。
とりあえず未熟人間です。
Posted by ブクログ
旧国土庁での実務経験も持つ著者が、日本の国土の特徴や課題を、縦軸(歴史)と横軸(世界との比較)の視点から分析する。
キーワードは、「国土に働きかけ、国土から恵みを返してもらう」こと。
日本には、列島の自然条件の脆弱さ(山脈や川により分断され、平野が少なく、地震や台風、豪雨に見舞われやすいことなど)や、所有権絶対の観念(公共事業に多大なコストがかかる)といった事情に由来する国土の「使いにくさ」がある。
今後は、他国との経済競争に遅れないためにも、将来世代により良いものを残すためにも、道路、港湾、空港、河川といったハード面の課題や、首都機能の分散や地域間連携といったソフト面の課題(いずれにせよ、日本は世界と比べてもまだまだ不十分である)について、国民一人一人が主体的に考えて、行動に移す必要がある。
道路をはじめとするインフラ整備が経済発展にとっていかに重要か、日本における「公共事業=無駄、悪」かのごとき言説がいかに日本と世界の実情を見ていないものかがよく分かる。
地理、歴史、政治、経済、地学、工学など、あらゆる分野が交錯する「国土学」の面白さを垣間見ることができる。
Posted by ブクログ
今の国土の現状を歴史上、また各国との比較の上で、素人の私にもわかりやすく解説されていました。
災害大国であるこの国で、いかにしてこの国土からの恩恵を享受しながら生きていくのかを考える作品でした。
Posted by ブクログ
全総とかを経時的に振り返るあたりは退屈だが、日本の「国土条件」をもとに、整備すべきインフラのあり方を論じている流れが面白い。海外を旅したり海外に赴任したりする機会があれば、序盤で提示された10程度の軸をもとに、その国の自然条件等について考察してみたい。
Posted by ブクログ
普請に関する歴史とか、各国との比較であるとか、意外と知らない情報もあり、おもしろかった。官僚と政治家が今後どう動くのか。選挙を控えていても、政治に呆れ返った国民がどう動くのか。今後の日本はどうなってしまうのか。
Posted by ブクログ
日本の国土の特異性をもとに,古くは縄文時代から現在に至るまで,どのように国土づくりを進めてきたか,またこれからの国土づくりがどうあるべきかが書かれています.こうしたテーマに挑戦した本は少ないと思われますので,貴重な1冊だと思います.
Posted by ブクログ
【内容】山地が七割を占め、地震や台風にしばしば見舞われる日本。この試練の多い土地に住みついた日本人は、古来、道を通し、川筋を変え、営々と自然に働きかけてきた。私たちが見る風景は、自然と人が共に造り上げたものなのだ。本書は、まず日本の国土の地形的・社会的特徴を明らかにする。さらに大震災に見舞われ、財政危機にある今、海外に伍して豊かな国土を築き上げ、日本人が再び活力を取り戻すために何が必要かを提言する。 (「BOOK」データベースより)
【感想】いま、いわゆる土木行政に携わる仕事をしている。せっかくなので、その関係の本を読んでみようと手に取った。
日本の国土形成の歴史からはじめ、日本列島の自然条件を解説している。また、これまでの国土造りを振り返り、これからの国土造りを提唱している。
東日本大震災を契機に、この日本の国土のあり方を再検討せねばならないこの時期に、参考になる一冊であった。
「災害大国の生き方」という副題。この日本と言う国は、災害ありきの国づくりをしなければならない。西洋とは違う。そのことを再認識した。
その前提で、やみくもに公共事業を批判し、予算を削減を進めるだけが正解ではない。日本の再生のために、やはり社会資本整備は重要である。
限られたお金の中で、いかにこの国のかたち、国土を形成するのか。その明確なビジョンのもと、日本の再生、再構築をはかることが求められている。
誇りをもって仕事をしたい。
(P91~)日本の国土の社会条件。日本は①土地の保有概念が、所有権絶対であること。②地籍の確定が進まないこと。③土地を細分して保有していること。これらが歴史的に日本で生じた。
(P161)「社会保障費以外の予算は次々削除」→「そこには、そもそも政府とは何をすべきなのか、現代世代は将来世代に対しどういう貢献をすべきなのか、あるいは日本は世界に対してどのような存在であることを主張し、どのような責任を果たすべきなのか」といった議論はされていない。
(P173)「わが国の国際競争力の回復に寄与する国土造りを行うべき」
(P210)「それぞれの地域がどのように国全体の経済成長に資するかを考えることが大切」「そのためには、競争条件を整えるための投資を、広域的な視点からある地域に重点的に行っていくことが不可欠」
(P227)「われわれは、国土にいろいろな手段で働きかけ、その結果として国土から恵みを得ている。安全で快適で心地よい暮らしができるのも、ヒトやモノが効率的に移動できるのも、長い年月にわたり、森林を整備し、耕地を開き、治山を行い、河川を改修し、道路や港湾・空港を整備し、都市環境を整えてきたからこそ」
(P227~)人々が「安全に快適に」暮らしていくためには、それを支える国土がしっかりと手入れされ整備されるとともに、人々の活力を引き出す、次の条件が必要。第一に「参画社会の構築」、第二に「人材活用の多様性の拡大」、第三に「次世代への貢献」
Posted by ブクログ
個人的には、初めのほうの日本列島の自然条件、が興味深かった。他国と比較したときの日本の特徴を知ることができたー樹木や地質、気候の多様性など。
後半はインフラ整備など国家事業、公共事業の歴史のような説明が入っており、参考になった。
飛行機乗った時にいつも思うけど、山の中に、都市つくった感がすごい。
島国やから、大地の隆起した山脈でできているのが日本、というような軽い感覚で考えていたけれど、今の私たちが享受しているこのっ便利さ、人間の手で作り出してきたことを考えるとただただ圧倒される。
これからも、地震も来るし、台風も、洪水も起こるやろ氏、それを分かって、こんなに生活圏を発展させ、ここで生きていこうとしている自分たちがいるということ、それはすべて、これまで先人たちもひっくるめてこの土地でやってきたこと、育み受け継いできた伝統とか文化とか考え方、そのすべてがなんかやっぱり自分と自分の暮らしの一部になってているということも言えるのかなと思う。
だから、土地や環境の影響ってすごいなー。そこに生きる個々人、そして世代を超えて生きる集団とのつながり、みたいなものはかけがえのないものになるし、だからこそ、非日常、異世界に行くことがまた、新鮮であり、新しい視点をもたらす出来事にもなる。
日本国内でも、まだまだ知らない土地や景観がたくさんあるし、もっと知りたいと思ったし、あと、この土地と環境を大事にしたいとあらためて思った。
Posted by ブクログ
国交省技監だった著者。日本の国土の特徴を欧州と比較して、いかに厳しい条件なのかを解説。国土を整備することは将来のための投資だと説く。緊縮財政以後公共投資が減って日本の発展に対する危惧を示す。
Posted by ブクログ
一般向けの国土の歴史を書いた本が見つからないと思っていたところに発行された。古代から現代まで、さまざまな視点でまとめられているのはありがたい。
アクアライン1本でしかつながれていない東京湾に比べて、地理的にほぼ同じ規模のサンフランシスコでは6本もの橋でつながれているとの指摘は考えさせられた。首都移転ではなく、首都機能の分散が理にかなっているという主張にも同感する。いずれについても、大きな視点(で考える政治家)が日本人には欠けていたんだなと思う。
・大化改新後の8世紀初めに条里制が整えられ、土地を360歩(650m)四方の里、里を36分割した坪、坪を10等分した段に分けた。良民の男性には口分田として2段(24アール)が与えられ、収穫の3%を納めさせた。