【感想・ネタバレ】魚が存在しない理由 世界一空恐ろしい生物分類の話のレビュー

あらすじ

アメリカ、韓国はじめ、世界中で
ベストセラーの超異色・生物書

人は、何かに名前をつけると
本当の姿を見ようとしなくなる。

19世紀末、生涯をかけ魚類を収集・分類した科学者デイヴィッド・スター・ジョーダン。その膨大なコレクションは、落雷、火災、さらに巨大地震によって幾度となく破壊された。だが彼は、世界に秩序をもたらそうと、まるで運命に抗うかのように分類作業を続ける。
NPR(米国公営放送)の気鋭ジャーナリスト、ルル・ミラーが追跡した衝撃の実話。ジョーダンの生涯を掘り起こす作業を通じ、自然、歴史、倫理、そして愛についての著者の理解は大きく揺るがされていく。
科学への深い執着、殺人の影、分類することへの限りない欲望。
全てが混ざり合う、目が離せない知的冒険の記録。

★全米主要メディア、絶賛!
「心が揺さぶられる」The Wall Street Journal
「見事な一冊」Los Angeles Times
「打ちのめされる」NY Times Book Review
「自然をめぐる驚きのストーリー。世界がそれまでと違う姿で見えてくる」Book Riot(書評サイト)

★識者、大絶賛!
「奥深く、機知に富み、おぞましい闇と強い高揚感の両方を味わわせる。この本を、そしてこの本を書いた一筋縄ではいかない精神の持ち主を称賛したい。ルル・ミラーは、決して大げさではなく、生命の秘密を明らかにしたと言えるかもしれない」
―ジョン・モアレム 『This Is Chance!』著者
「ジェットコースターに乗ったように、魚の(そして私たちの)位置づけがひっくり返る」
―Slate(オンラインマガジン)
「1ページ目から圧倒的。独白であり、人物評伝であり、国の歴史を語る本でもあり、そこからさらに壮大なストーリーが少しずつ解きほぐされていく。最後の数ページにたどり着いた頃には泣かされていた」
―ジョナサン・ゴールドスタイン podcast「Heavyweight」creator

★年間BEST BOOK選出!
The Washington Post, NPR, Chicago Tribune, Smithonian Magazine, Audible, etc.

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 本書はなまじ詳しい人や知識のある人ほど、表紙に書かれている情報から「どんな内容かだいたい想像がつく」と思ってしまう。しかし、断言してもいいが、この本の内容は想像を超えてくる。
 著者は小さい頃、科学者である父親に教えられた。「この世界に意味などない」。でも彼女は意味がほしかった。自分が存在する意味が。
 やがて著者は一人の科学者に傾倒する。デヴィッド・スター・ジョーダン──魚類の分類で知られ、スタンフォード大学の初代学長でもあった。彼の不屈で自信に満ち溢れた生涯にあこがれたのである。
 だが、調べていくうちに衝撃の事実を知る。ジョーダンは優生思想の布教者だった。著者は震え上がる。彼女はバイセクシュアルだからだ。優生思想の時代であれば、間違いなく断種手術を強制されていただろう。こんな人間に心酔していたなんて……。結局、ジョーダンの自信は傲慢でしかなかったのだろうか。やはり世界に意味などないのだろうか。
 ところが、著者にガールフレンドができてすべてが変わる。宇宙から見ればそれは無意味かもしれないが、大切なガールフレンドという「自分にとっての意味」は何ものにも奪うことはできない。
 思えば自然科学は、つねに外部に意味を求めてきた。たとえ神が存在しなくても、真理は自己の外側に客観的に存在していると教えてきた。でも著者は自分の中に意味を見出した。世界を変える必要はない。自分の見方を変えればいいのだ。ジョーダンは自分の見方に固執するあまり、世界を変えようとしたのである。その結果が優生思想だとも言える。
 題名についてだが、生物学ではもはや魚という分類は存在しない。われわれはイルカやクジラが見た目こそ魚と似ていても、じつは哺乳類であることを知っている。だが、これらは例外的存在ではない。起源や体の構造を調べていくと、魚類の中にはあまりにも異なる生物が多すぎる。結局魚とは、山に生息する四本足の生き物をすべてひとまとめに「ヤマナ」と呼ぶような、非常に雑な括りでしかない。魚類の分類に生涯をかけたジョーダンに対して、これほど大きなブーメランがあるだろうか。
 ジョーダンは他山の石である。自分を変えることはとても難しい。われわれは自分と異なる考え方に接すると、反射的にそれを否定してしまう。ややもするとそれは反転し、自分を正当化するために他者を批判するようになる。読書も同じである。魚が存在しないように「面白い本」も存在しない。「つまらない」と断じているとき、自分もまたつまらない人間になっているだけである。

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2025年04月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

魚類に関する科学的な新しい発見みたいなのを紹介する本かと思いきや、色々と裏切られたとても面白い本。

ストーリーの主人公と言えるスタンフォード大学の初代学長のデイヴィットジョーダンの光と闇についてや、著者の喪失からの回復、アメリカでつい最近まで行われていた優生思想による恐ろしい手術など思いがけない話ばかりだった

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

分類学者であるジョーダンの生涯をなぞりながら、それに呼応するかのように筆者自身の半生も振り返る異色の生物書。
まぁジャンル分けするなら僕はこれを自叙伝に入れてしまうけど。

名付けることは存在を縛るということ、というのは夢枕獏らしい言い方だけど、この本に付きまとう問題は呪術的名付けに集約されてしまうね。
人は「分からないもの」をそのままにしないように名付けを行う。
その最たるものが妖怪だ。理由も原因もわからない現象を、ただそのままにしないために名付けを行う。名付けを行っても何も変わらないけど、人はその現象を理解したような気になる。
分類学がそこまで極端だとは言わないが、形のないものに形を与え人を動かす(納得させる)のはどことなく呪術的要素を感じてしまう。

装丁は美しいけど、もう少し分類学自体の話を絡めても良かったような。
極端な話、科学的な進歩を語るうえでスキャンダルはいらないのだから、これは正しく自叙伝だと僕は分類(名付け)したのだな。

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

19世紀末、生涯をかけ魚類を収集・分類した科学者デイヴィッド・スター・ジョーダン。スタンフォード大学の招待総長を務めた人。彼の人生を追跡したNPR(米国公営放送)のジャーナリスト、ルル・ミラーの自叙伝的な本。

正直、著者の自分語りのボリュームが多くて、
主題の『魚が存在しない』にたどり着くまでに挫折しかけた。

序盤から、デイヴィッド氏が、なかなかにひどい男だったのだけど、
ジェーン・スタンフォード氏(スタンフォード大学の共同設立者)死亡のあたりから、どんどん黒くなってきて。
これ、どこに向かっていく、どういう本なの?って思っていたら、
想像以上にグロテスク(優生学が登場するとは想像してなかった)な展開になって驚いた。

魚類が存在しない、という事の説明が非常にわかりやすい。陸で考えるととても納得できて良かった。

表紙、イラスト、本自体のデザインが、個性的で美しく素敵。飾っておきたい。

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2025年04月24日

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