【感想・ネタバレ】魚が存在しない理由 世界一空恐ろしい生物分類の話のレビュー

あらすじ

アメリカ、韓国はじめ、世界中で
ベストセラーの超異色・生物書

人は、何かに名前をつけると
本当の姿を見ようとしなくなる。

19世紀末、生涯をかけ魚類を収集・分類した科学者デイヴィッド・スター・ジョーダン。その膨大なコレクションは、落雷、火災、さらに巨大地震によって幾度となく破壊された。だが彼は、世界に秩序をもたらそうと、まるで運命に抗うかのように分類作業を続ける。
NPR(米国公営放送)の気鋭ジャーナリスト、ルル・ミラーが追跡した衝撃の実話。ジョーダンの生涯を掘り起こす作業を通じ、自然、歴史、倫理、そして愛についての著者の理解は大きく揺るがされていく。
科学への深い執着、殺人の影、分類することへの限りない欲望。
全てが混ざり合う、目が離せない知的冒険の記録。

★全米主要メディア、絶賛!
「心が揺さぶられる」The Wall Street Journal
「見事な一冊」Los Angeles Times
「打ちのめされる」NY Times Book Review
「自然をめぐる驚きのストーリー。世界がそれまでと違う姿で見えてくる」Book Riot(書評サイト)

★識者、大絶賛!
「奥深く、機知に富み、おぞましい闇と強い高揚感の両方を味わわせる。この本を、そしてこの本を書いた一筋縄ではいかない精神の持ち主を称賛したい。ルル・ミラーは、決して大げさではなく、生命の秘密を明らかにしたと言えるかもしれない」
―ジョン・モアレム 『This Is Chance!』著者
「ジェットコースターに乗ったように、魚の(そして私たちの)位置づけがひっくり返る」
―Slate(オンラインマガジン)
「1ページ目から圧倒的。独白であり、人物評伝であり、国の歴史を語る本でもあり、そこからさらに壮大なストーリーが少しずつ解きほぐされていく。最後の数ページにたどり着いた頃には泣かされていた」
―ジョナサン・ゴールドスタイン podcast「Heavyweight」creator

★年間BEST BOOK選出!
The Washington Post, NPR, Chicago Tribune, Smithonian Magazine, Audible, etc.

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Posted by ブクログ

 と~てっも、おもしろいです! 社会問題と自然科学が混然とした、一本のドキュメンタリー映画のようです。
 ふだんビジネス書をお読みのかたにもおススメします! あと、スタンフォードの卒業生にもね。(笑)

 ストーリーは、ミステリアス、ワクワクします。デイヴィッド・スター・ジョーダンさん(1850-1931、アメリカ)と、作者のルル・ミラーさんとの「二重らせん」構造のような展開です。
 わたしは、主人公はルルさんだと思います。ルルさんはご自身のトラウマや生きにくさ、そして、アメリカ社会の闇について語られています。
 ルルさんが、なぜ自分は生きているのか、どう生きていけばよいのかを探る姿に、テーマの普遍性を感じました。
 最初、ルルさんは、自分とは対照的なデイヴィッドさんに親近感をもたれたようです。デイヴィッドさんは、何度も絶望的状況になろうとも前に進みます。ルルさんは、そんな風に生きるためのヒントを求め、デイヴィッドさんの自伝を調べはじめます。

 デイヴィッドさんは、生物分類学者です。このため、本書のサブタイトルが「空恐ろしい生物分類の話」になったのでしょう。わたしもそのつもりで読んだのですが、生物分類とはちょっと違いました。なにしろ主人公はルルさんですし。
 それでも、わたしがおもしろかたのは、やっぱり「分類学」のところ。
 デイヴィッドさんが「分類学」を進めていくとき、中心となる考え方はアリストテレス時代から続く古い考え方だったようです。科学というより哲学です。
 その考え方を、わたしが乱暴にまとめると「宗教(キリスト教)×人種(白人)×性(男性)」から生まれたヤバい「妄想」のように思います。
 デイヴィッドさんの科学は、そんな妄想からスタートし、それに固執しています。だから、わたしには「エセ科学」のように思えるのです。
 この妄想、ただの妄想だと侮れない、恐ろしいもの。
 アメリカでは、この妄想を裏付けとして、ナチスよりも先に悪魔の所業が現実になりました。今も、その影は完全には消えていないようです。

 最近のベストセラーに鈴木俊貴さんの『僕には鳥の言葉がわかる』があります。
 わたしは未読なんです(予約中)。しかし、みなさんのレビューをちらちら拝見すると、鈴木さんは「言葉は人間だけのもの」を否定されているようです。
 この「言葉は人間だけのもの」も、人間は優れた特別な存在なんだという思い込み、つまり、「妄想」のひとつだと思います。
 直観的に正しいと思い込んでいることの、さらにその奥に真実は隠されているようです。

 わたしも、自分でも知らずに、思い込みや妄想のなかで生きていそうですね。自分に都合がよいように世界をみてるんでしょう。
 世界は自然は、必ずしも整理整頓されて、人間にとってわかりやすいものではないようです。
 自分の本質を疑うことなく「エセ科学」に落ちたデイヴィッドさんは反面教師だとおもいます。
 まっさきに疑うべきは自分の直感であり、自分自身だと知りました。
 中佐、「とらわれるな」ですよね。

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2026年01月11日

Posted by ブクログ

すごい。遠い国の、遠い時代の話とは思えない(実際には同じ地球の、100年ほど前の話である)というのが直感的な感想で、そんなお伽話を読んだあとみたいな感覚になってしまったのは、あまりに自分の知っている現実と縁がない話だったからかもしれない。内気な少年があらゆる学位を取り、「カオス」と呼ばれる災難に見舞われながらも研究に明け暮れ、学長まで登りつめる生命力のようなものに圧倒される序盤。そして、後半はそれらの出来事を可能にしていた彼の異常なまでのポジディブシンキングと、その末にたどりついた過ちに絶句する。しかも、淡々と語られるのではなく、筆者の迷いと苦悩にあふれた人生の中で、ジョーダンの所業は明らかになっていく。
作者の周囲(父や姉)や、取材した人の言動が小説のセリフかな?と思うくらい悟りきっていて、ロールプレイングゲームの登場人物に、その世界の伝説を聞かせてもらっているような、そんな壮大な入れ子構造だった。

ところで、20世紀の終わり頃にポジディブな妄想で自分を騙して自己認識を薔薇色のものへと書き換える(ストーリー編集、リフレーミング)が推奨された結果、今度はそれが暴走して人生に意味なんてないというフェーズに入りつつあるの、「歴史は繰り返す」すぎるかも。筆者は自分の人生に意味がないことについてショックを受けて、意味を見出したくてジョーダンを調べ始めたわけだけど、人生に意味を見出しすぎるから辛いという意見に納得したばかりだったので、筆者はなんというか、使命感にあふれた人だなあと思う。(p.167あたり)
けど、彼女が魚を手放して、自分をはじめとする人間が何度でもまちがいつづける(しかし幸せにもなれる)ということを見つけられてよかったと思った。


・苦しみの渦中にある人にとって、何かを収集するという行為は、甘美な慰めになる(そして一線を越えると人を破滅させる) p.29
・攻撃をする人は往々にして自己評価が高い(と思いたい願望が強い人)p.180

・「不敵者」とみなす人間の生殖機能を取り除けばいい、そうすれば「その血がそこで途絶えてくれる」として絶滅を実現させるジョーダンのアイデア、進撃の巨人すぎるがな p.226

・カオスに怯える無力な子供になりたくなかったから、まちがいを間違いと認めて再び混沌へ飛びこむことができなかった。ヒエラルキーにこだわるのは、存在に意味がなきことを恐れるから。p.257

自分がタンポポであることを知り、それを喜ぶべき事実として捉えることで克服できる。p.284

・直感を信じる心地よさを真実とトレードしたがる人などいない
陰謀の話?p.308

・人は何かに名前をつけると、もう本当の姿をちゃんと見ようとしなくなる、そのことに同情する。p.317
・大人になるっていうのは、人が自分に向ける言葉をうのみにするのをやめること。p.320

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2025年12月23日

Posted by ブクログ

魚の話かと思ったら、途中で「魚の話じゃないんかい!」となり、最後に「やっぱり魚の話だった!」となりました。
ところどころ作者の自伝的な描写が挟まり、展開が目まぐるしく、飽きさせない。
個人的な受け止めは生物学的なものに限らず「線」を引くことの難しさ。また自発的なアンラーニングがいかに難しいか。万人に薦められそうな良書。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

読み終えられるとは思わなかった。装丁のかっこいいこの本は買って飾って置きたくなる 人間より魚が好きな私には声を出して笑いたくなる痛快な本でした。

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2025年09月20日

Posted by ブクログ

少し重いバインダーに書類を挟むと、その資料が重要なものだと認識する。そんな逸話を読んだことがある。
故に本の装丁というものは、存外と大事なものなのだそうだ。
見事な装丁の本だ。深い藍色の紙に銀の印刷、インパクトのある表紙で美しい。Xで見かけてから心ひかれて手に取った。厚みのわりにページ数はさほどでもない。注釈と謝辞をのぞけば340ページ程度なので、本になれた人間であれば数日で読破出来る分量で、また文章も平易で読みやすい。美文ではないが親しみやすい。
さて、この本はいったいどう分類したら良いだろう。
一応Xでの紹介文では『分類学についての本』ということになっている。しかし、いざ本を開けば、分類学といえば必ずといって良いほど出てくるリンネではなく『ディヴィッド・スター・ジョーダン』の経歴が出てくる。このディヴィッドさんは、生物分類学者だ。最初はこの人の逸話をきっかけにして論が展開するのかと思ったが、いやいやそんなものではない。もちろんディヴィッド氏は科学者で、彼の歩んだ道のりは分類学の歴史に重なるが、この本の筆者はそれにとどまらない。良くも悪くも赤裸々に、俎上に上げた氏の紹介だけでなく、自分のプライバシーを思い切り開示して話が進む。
途中で私は、一体何を読んでいるのだろうかと不安になるくらいだった。
けれど一通りを読み終えて、これは現在(この本の発行は2025年3月)アメリカという国で生きているひとりの人間が抱えている不安と、それに対して戦うための意思表明でもあると読み取った。
事物を収集し、名前をつけて分類する。そうすることによって人間は世界を理解していく。けれども同時に、自分の都合の良いように世界を解釈し、時にその解釈に無理矢理世界をねじ込もうとしてしまう。その危険に警鐘を鳴らしてもいる。
この本を読む前に、『言語の本質』という本を読んだのだが、なんだか神様の采配を受けたような気がした。
分類学の本だというには、いささか語弊のある本だと思うけれど、この本は実にエキサイティングで面白い。
かつて人がやらかした過ちについて、容赦ない取材を行っているのも好ましい。ただ、少々筆者の主張が強いのでその点だけは好みが分かれるところだろうけれども、多くの人に読んでほしい一冊だ。
そして、この本で私は懐かしい本に再会した。
『自然を名づける』という本だ。この本を私は2017年に購入し読んでいる。この本でそのタイトルに再会し、世界は自分が考えるよりも狭いのだと実感した。この再会した本を近いうちに再読しようと考えている。

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2025年08月09日

Posted by ブクログ

咀嚼が難しい。なんだろう。優生学だったり、色々話題になっているものはあるけど、私に理解する力が足りないらしい。装丁が素晴らしすぎるので☆5。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

俺の仲良い人たち、大好きな人たち、みんな読んで欲しいなぁ。特に考えが近いひとたち。
書影買いしたのに中身刺さりまくった。あまりに筆が上手い。読ませる。

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2025年07月23日

Posted by ブクログ

めっちゃくちゃ面白かった。個人的ベストかも。
デイヴィッド・スター・ジョーダンという人間の人生を紐解いていきながら、なぜ人間は自然をカテゴライズしたがるのか?生きる意味とは?この世のカオスとどう接するべき?科学とは?希望とは?等々…に繋がっていく。途中何度も「え?これまじでノンフィクションなの?」って疑った。そのくらい衝撃的な感覚を味わえた。いやーーー最高!

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2025年07月06日

Posted by ブクログ

装丁に一目惚れして手に取りました。

この本は、科学や偉人の伝記、著者の思考、絶望感、人生観など、さまざまな要素が織り込まれていて、一言でジャンルを括れない不思議さがあります。

読み終えたとき、“魚を手放す”ということを通して、その不思議さが腑に落ちるように感じました。そしてそれは、人生の意味や世界の見え方にまで、自然と思いを馳せるきっかけにもなりました。

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2025年07月01日

Posted by ブクログ

人間の直感と、それによる分類がいかにアテにならないか、そしてその固定観念から解き放たれることはどういうことなのかを魚類学者D. S. Jordanの生涯を追う著者の体験をもとに描き出したドキュメンタリー。

10年前、私に「実際、"魚類"という分類は全くのデタラメなんだけどね!」と明るく教えてくれたのは魚類学者の教授だった。それでも便利だから魚類という分類を使わざるを得ない状況であることも。
「科学的に正確なこと」と「世間一般に広く分かりやすく(面白く)教えること」は全くの別ものなのだと。
著書の言うとおり、正しく世界を見ているかはさておき、"人間という生き物"にとっては"魚類"という分類が便利で十分事足りているということなのだろう。
きっと、頑迷に「"魚類"なんて存在しない!」と言い張るのは、それこそ「科学的に正しいことが正義である」という固定観念に縛られていることに他ならないのだと思う。

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2025年05月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 本書はなまじ詳しい人や知識のある人ほど、表紙に書かれている情報から「どんな内容かだいたい想像がつく」と思ってしまう。しかし、断言してもいいが、この本の内容は想像を超えてくる。
 著者は小さい頃、科学者である父親に教えられた。「この世界に意味などない」。でも彼女は意味がほしかった。自分が存在する意味が。
 やがて著者は一人の科学者に傾倒する。デヴィッド・スター・ジョーダン──魚類の分類で知られ、スタンフォード大学の初代学長でもあった。彼の不屈で自信に満ち溢れた生涯にあこがれたのである。
 だが、調べていくうちに衝撃の事実を知る。ジョーダンは優生思想の布教者だった。著者は震え上がる。彼女はバイセクシュアルだからだ。優生思想の時代であれば、間違いなく断種手術を強制されていただろう。こんな人間に心酔していたなんて……。結局、ジョーダンの自信は傲慢でしかなかったのだろうか。やはり世界に意味などないのだろうか。
 ところが、著者にガールフレンドができてすべてが変わる。宇宙から見ればそれは無意味かもしれないが、大切なガールフレンドという「自分にとっての意味」は何ものにも奪うことはできない。
 思えば自然科学は、つねに外部に意味を求めてきた。たとえ神が存在しなくても、真理は自己の外側に客観的に存在していると教えてきた。でも著者は自分の中に意味を見出した。世界を変える必要はない。自分の見方を変えればいいのだ。ジョーダンは自分の見方に固執するあまり、世界を変えようとしたのである。その結果が優生思想だとも言える。
 題名についてだが、生物学ではもはや魚という分類は存在しない。われわれはイルカやクジラが見た目こそ魚と似ていても、じつは哺乳類であることを知っている。だが、これらは例外的存在ではない。起源や体の構造を調べていくと、魚類の中にはあまりにも異なる生物が多すぎる。結局魚とは、山に生息する四本足の生き物をすべてひとまとめに「ヤマナ」と呼ぶような、非常に雑な括りでしかない。魚類の分類に生涯をかけたジョーダンに対して、これほど大きなブーメランがあるだろうか。
 ジョーダンは他山の石である。自分を変えることはとても難しい。われわれは自分と異なる考え方に接すると、反射的にそれを否定してしまう。ややもするとそれは反転し、自分を正当化するために他者を批判するようになる。読書も同じである。魚が存在しないように「面白い本」も存在しない。「つまらない」と断じているとき、自分もまたつまらない人間になっているだけである。

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2025年04月21日

Posted by ブクログ

伝記と呼ぶには、自伝すぎる。科学書というには、小説すぎる。ぐんぐん読んでしまうストーリーの面白さと、この本じたいが分類という罠を巧みに避けて冒険小説や自己啓発といったジャンルを越境していく感じが挑戦的でワクワクした。美しい装丁がほしくてジャケ買い、正解。

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2026年01月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルで「魚が存在しない」と言われた時、私も多分に漏れずそんなわけないじゃんと思った。
しかし「分類学の中」では「魚類」というものは存在しないと言われたらそれはそうだな、と納得できる。
私が感じたこの納得感がそれなりに世間一般に広まるにはどれくらいの時間がかかったのだろうか。そしてそれはまだ学者が想定しているより一般的ではないのだろうな、とも思った。

歴史上の人物と聞くと、なんとなく完全無欠で優秀で人格者なのかなと考える。しかしいざ蓋を開けてその人を知ると、他人を陥れるために奔走していたり優生学を押していたり、どこまでも人間臭くて完全無欠とは程遠い所にいるのだなとわかる。
デイヴィッド・スター・ジョーダンや著者であるルル・ミラーの人生を通して、自分の欠けている部分や良くない部分を見つめ直した気分になった。
またいつか当たり前の常識が覆される時がきっと来るだろう。その時、寛容に公正にその事実を受け入れられる心を持っていたいなと思った。

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2026年01月04日

Posted by ブクログ

生物分類学と進化論に関するポピュラーサイエンス本のつもりで読んでいたら、生きることの意味、新しく何かを知ることの不可逆性を考える文学作品だった。

まず、「分類」という行為が人間の思い込みに左右されていて、またその思い込みが世界の見え方を固定してしまうと感じた。
分類学はカオスとの闘いであり、連続的な自然界に便宜上の恣意的な境界線を引き、名前をつけて世界を理解しようとする取り組みだった。
デイヴィッド・スター・ジョーダンは、自身の宗教的・倫理的価値観に添うような秩序を自然界に見出そうとし、ダーウィンの進化論だけでなく優生思想も無批判に受け入れ、一面的な価値基準で人間に序列をつけて種の複雑さや揺らぎを排除しようとしてしまった。執念深く秩序を追い求める姿勢は、カオスにのまれて自分のやってきたことが水泡に帰し、自分の生きている意味を見失ってしまうことに対する防御機制だったと言える。
一方、著者がデイヴィッドと重ねて見ていた父親は、人生の無意味さとカオスを受け入れることで、自分なりの倫理観を持つ自由を得ていた。
デイヴィッドの半生を追い、著者自身や父親についても語りながら、デイヴィッドの死後に分岐学が明らかにした「魚類は存在しない」という学説に辿り着く。デイヴィッドが何よりも分類と秩序を求めた対象が科学的に無意味で恣意的な概念だった、というのは皮肉というか、残酷にも思えた。
もう一つ、学びにはそのトレードオフとして今までの自分の価値観を破壊も生じる、という視点を得た。

進化、優生学、心理療法とか物語・認知科学あたりを深掘りしていきたい。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

装丁がとても凝っていて電書よりも紙本の方がいいなと思える本でした。
魚が存在しないとは……目から鱗でした。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

スタンフォード初代学長にして、優性思想を推進した魚類の分類学者デイヴィッド・スター・ジョーダンの伝記と、筆者の人生を絡めた話。
アメリカという国は偉大な人物と、禁酒法や優生保護法などの極端に振れる政策を生み出す国なのだな、と思う。
トランプの国、アメリカ。
アガシを生んだアメリカとダーウィンを生んだイギリスに思いをはせさせる本。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

著者のルル・ミラーは科学系のジャーナリストだそうだ。生化学者の父はかつてルルに「人生には意味はない。自分の存在になんの意味もない」と言った。大人になっても、自分とは何者なのか悩み続ける彼女は19世紀に生涯をかけて魚類の分類という大仕事をした科学者デイヴィッド・スター・ジョーダンの研究を始める。ここからはジョーダンの伝記のようだ。度重なる震災で膨大なコレクションが破壊されてもめげずにやり直す楽天的な逞しさ。それはどこから来るのか。しかしジョーダンの生涯には怪しい殺人の影、優生学奨励による非人道的主張などがまとわりつく。ジョーダンが生涯を賭して整理した魚類の分類だが、現在の科学は分岐学が主流となり魚類というものは存在しないことを知らされる。日常生活では「魚」「魚類」とは言うが、学術界ではそういう種は存在しないそうだ。そうした真実を見つけていくなかで、ルルも自分の人生を手に入れていくというドキュメンタリーだ。

何より魚類は存在しないということに驚いた。わかりにくいので例を挙げると、ハイギョには肺があるが鮭には肺がない。更にハイギョと牛には喉頭蓋がある。ハイギョは鮭よりも牛に近いのだそうだ。外見が何となく似てるから全部魚と括ってしまう分類学がもはや時代遅れなのだそうだ。そんな事実によりジョーダンの分類学が崩れ落ちていくのをルルはブラックな調子で書いている。

そして、人生にも自分にも意味がないのではなく、ある一面から見たら意味がなくても他の方向から見たら様々な違う意味が見えてくると考える。世の中に絶対はない。

なぜ、私たちは自然界に線を引きたがるのか。分類という名のグループ分け、明確な根拠のない優劣をつけた優生学などは無意味であり、危ないものなのだ。

何が正しいという話ではない。グループ分けや優劣をつけたがる社会に疲れたら読んでみよう。その意味でこの本もどんなジャンルなのか分からないタイプの読み物だ。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

魚類に関する科学的な新しい発見みたいなのを紹介する本かと思いきや、色々と裏切られたとても面白い本。

ストーリーの主人公と言えるスタンフォード大学の初代学長のデイヴィットジョーダンの光と闇についてや、著者の喪失からの回復、アメリカでつい最近まで行われていた優生思想による恐ろしい手術など思いがけない話ばかりだった

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

科学者として優秀だが、別の側面を持つ人物テビヴィット・スター・ジョーダンの生涯を追っていく。
その中で、筆者は何を見たのか。
その見つけたものを自分に当てはめた時、何が起きるのか。
難しい内容かも知れませんが、読んでみて欲しい作品です。

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2025年08月15日

Posted by ブクログ

生物分類の学術発展をうまく切り取って(そしてある意味で読みやすく)語った著作。対象とするテーマは生物学や遺伝学、それをめぐる歴史といったあたりだが、メッセージ性としては科学哲学といったあたりも含んでいる。

本書に散りばめられたメッセージ、特に生物分類学とは別のところの「人間に意味などない」「いや、むしろある」議論であったり、信念・行動に意味があると信じて疑わない姿勢の危うさなどのメッセージは読み手ごとに受け取り方が変わりうると思う。
個人的には、著者のような経験を通じなくても、ここ数年はSNS等で「自分が全てを知っているように信じる」人を傍目で見る機会が多いように感じるため、若干の今更感を感じた部分もある。

アカデミアの先陣を切り啓く活躍をするには、そういう(時には行きすぎた)信念の強さも必要なのかも、とも感じた。そうでなければ著者のように、友情なり、愛なり、身近な人間との関係によって信念を形成して、それを守れば足りるのかなと。
学術における「魚類」などの名付けについても、著者は「名付けには消極的であるべきで、名付けた概念がミスリードすることもある」というような視点で語っているが、その意味では「分類」という営み自体が無意味で、分類しきれない特徴を捨象することになってしまうようにも感じた。分類で適度に抽象化される概念もあって然るべきで(当然「抽象化した」事実は認めた上で)、ある程度のグルーピング起点でぐっと学問が進むところもあるので、まるっと賛同もしきれないところがある。

科学的な研究に本腰を入れて取り組んだ経験があると、感想が変わりそう。(学術は疑いからできている、とかは割と当たり前の世界で、それ故の成果を出すことのむつかしさに日々直面しているだろうと思われるため)

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2025年08月09日

Posted by ブクログ

スタンフォード大学初代学長を務めた魚類学者デイヴィッド・スター・ジョーダンという人物の評伝として、また優生学やらLGBTやらの「分類」を巡るノンフィクション/エッセーとしては面白い。けれども、これは書店の「生物学」の棚に置いておくべき本か? とは思った。

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2025年12月30日

Posted by ブクログ

表紙から想像されるストーリーとは全然違うと感じたが、生物分類学というのがどういう仕事をしているのかや、新種の発見に人生を捧げた人の一生を垣間見ることができた。
印象に残っていることは、GRIT(辛抱強さ)という言葉で、新種を集めた標本が自然災害で無に帰すという、十数年の成果が無かったことになったとしても、復旧や活動再開をしていく人間強さに心をうたれた。
途中では、人種差別の話があり、「不適者」には不妊治療を強制させて、劣勢の遺伝子を根絶する考え方は反吐が出る思いで読んだ。人間は誰しも生きる意味があり、大事な存在だということを心に刻みたい。
あれ、魚の話は?と思ったら、最後の方に、ダーウィン説の進化の近縁性に沿って整理すると、魚は牛とか他の動物にそれぞれ似ている特徴があるため、便宜的に「魚類」を使っているが、分類学上には「魚類」は存在しないとのこと。
信じられないし、理解し難い。とはいえ、魚という言葉がなくなったら、漁師や水族館はどのように表現されるのかについて想像が膨らんだ。
分類の定義(視点)によって、直感に反する出来事が起こることは面白いと感じた。

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

装飾に一目惚れして即買いしました。
物語本だと思っていたけどエッセイに近いのかな?
思ってたのとは違ったけれど、魚が存在しない理由にはへぇとなりました。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

読みやすくデイヴィッド・スター・ジョーダンを通して分類学に関する知識が増えたような気がする。
可もなく不可もなく…境遇的に当てはまる人にはとても刺さるのかな。
読みやすいし面白いので気になっているのなら読んでみると良いと思う。

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2025年10月04日

Posted by ブクログ

美しい装丁と気になりすぎるタイトルに惹かれ読んでみたが、これは受け入れるのに時間が掛かりそう...
科学的であるとはどういうことか、今一度考えさせられた本だった。

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2025年08月25日

Posted by ブクログ

 装丁が目立って美しく、どの書店でも平積みされていたため手にとった。デイヴィッド・スター・ジョーダンという博物学者を追うエッセイである。「科学への深い執着、殺人の影、分類することへの限りない欲望。すべてが混ざり合う、目が離せない知的冒険の記録」という宣伝文句が裏表紙に印刷されており、期待が高まった。
 ジョーダンの伝記ではなく、科学ジャーナリストのルル・ミラー氏のエッセイである。ジョーダンについて紹介はされるが、彼の人生を追うようになったきっかけ、価値観や生き方に触れて思ったことなどが主である。ひらたくいうと、ジョーダンの人生をなぞる中で、最終的には魚は種として存在しないことを知って衝撃を受け、筆者のものの見方に変化があり、失意にあったが立ち直ったという内容である。
 
 魚が種として存在しないというのが、コペルニクス的な話題として出されている点に驚いた。「ヤギと人間が異なるように、サケとシーラカンスは違う」といわれて、こんなに衝撃を受ける人がいるとは思わなかった。アメリカではすんなり受け入れられないことらしい(本書ではそういうことになっているが本当だろうか)。イルカもクジラも哺乳類だが海で生きているし、コウモリは空を飛べるが鳥ではないのだから、「サケとシーラカンスは別の生きものであり、もはや魚類というカテゴリーはないのだ」といわれても、自分の無知を思いこそすれ受け入れることに困難は感じない。鱗があって海や川に住むいきものを魚として定義したとしても日常用語として問題も感じないし、学術的にもいくつか分類の方法があるのだろうから、「そういうものか」で済む。

 かつて人間が魚を分類したが、その分け方は誤っていた。人は何かに名前をつけると、本当の姿を見ようとしなくなる。かつてジョーダンが信奉した人間を価値ある者とそうでない者に分ける優性思想にも間違いはあるのだ、すべてが分からないのだと、世界を見る新たな智慧を得たように晴ればれとする筆者に読者としてぽかんとするばかりであった。

 世界の見方が変わるような読書体験では全くなかったが、筆者やジョーダンをとおして「人間至上のヒエラルキー」に基づき、考え、行動する人のことが少しわかった気がした。筆者は魚の認知能力の高さを引き合いに出し、魚を食べない方がいいという主張にさえ賛意を示している。人間に近いものは食べないのだろうか。牛や豚はいいのだろうか。植物に意識と呼べるものがあったら、どうするのだろうか。文意としては、「人間」よりも「ヒト」と訳した方がいいのではというところも「人間」で貫かれていて、あえてのこの訳なのであれば、この訳者は達人だなと思った。

 おそらく筆者はジョーダンの分類、すなわち序列を明らかにするための分類を無意識に刷り込まれてしまったあげく、自身を「劣等」としてカテゴライズしていたために生きづらかったのだろうと思う。魚類不在を知って、少しその世界から離れられたように本人は感じているようだが、はたから見るとそうでもなさそうに見えて心配になる。ルル・ミラー氏に幸あれかし。

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2025年08月07日

Posted by ブクログ

装丁の美しさに一目惚れして購入。好みすぎる。
実際に読んでみると、デイヴィッド・スター・ジョーダンの伝記に絡めた、筆者のブログや日記の色が強かった。
人間にとって都合の良いように、分かりやすいように生物のみならず全てをカテゴライズしている世の中において、普段魚類と呼称する他ないけれど、本当はそうではないという認識は忘れてはいけないなと。
あくまで分類とは人間同士がコミュニケーションを取る上での利便性を重視したものでしかない。

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2025年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

分類学者であるジョーダンの生涯をなぞりながら、それに呼応するかのように筆者自身の半生も振り返る異色の生物書。
まぁジャンル分けするなら僕はこれを自叙伝に入れてしまうけど。

名付けることは存在を縛るということ、というのは夢枕獏らしい言い方だけど、この本に付きまとう問題は呪術的名付けに集約されてしまうね。
人は「分からないもの」をそのままにしないように名付けを行う。
その最たるものが妖怪だ。理由も原因もわからない現象を、ただそのままにしないために名付けを行う。名付けを行っても何も変わらないけど、人はその現象を理解したような気になる。
分類学がそこまで極端だとは言わないが、形のないものに形を与え人を動かす(納得させる)のはどことなく呪術的要素を感じてしまう。

装丁は美しいけど、もう少し分類学自体の話を絡めても良かったような。
極端な話、科学的な進歩を語るうえでスキャンダルはいらないのだから、これは正しく自叙伝だと僕は分類(名付け)したのだな。

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

紙媒体の本を選ぶ理由の一つは装丁の美しさ
この本も一目惚れで購入
天•地•小口まで装飾が。
魚類分類学者であり、スタンフォード大学の初代学長のデイビッド•スター•ジョーダンの半生を彼の華やかな功績や強い優生思想感等と共に分類とは境界線とは何かを著者の人生や目線を交えて書いている
好みは分かれる作品だと思う

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2025年07月17日

Posted by ブクログ

幕張のlighthouseで買った本。元々この本の存在は知っていて気になってたけど、やはり装丁が綺麗すぎて、綺麗すぎるがゆえに中々手に取りづらかった。
でもこの本屋であっちゃったならもう仕方ないか、と思って購入。

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2025年07月05日

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