あらすじ
だあれが殺したコック・ロビン? 「それは私」とスズメが言った――。四月のニューヨーク、マザー・グースの有名な一節を模したかのごとき不気味な殺人事件が勃発した。胸に矢を突き立てられた被害者の名はロビン。現場から立ち去った男の名はスパーリング――ドイツ語読みでシュペルリンク――スズメの意。そして“僧正”を名乗る者が、マザー・グース見立て殺人を示唆する手紙を送りつけてきた……。史上類を見ない陰惨で冷酷な連続殺人に、心理学的手法で挑むファイロ・ヴァンス。江戸川乱歩が称讃し、後世に多大な影響を与えた至高の一品。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
あの衝撃的な一言で僕がその存在を知ることになったヴァン・ダイン。いつか読みたいと思いながら5年以上経ってしまった。マザーグースの歌に見立てた連続殺人、警察を嘲笑うかのように郵送されるマザーグースの歌、と古典ミステリーを煮詰めたかのようなお話。怪しいと思われた登場人物は次の章に殺され、また新たな容疑者も次の章に殺されを繰り返し犯人の自殺で片がつく。かと思いきや事件はまだ終わっていない。犯人の最後の犠牲者を救出し、真犯人を追い詰めた、と思いきや本当の真犯人は別にいた…、急展開のオンパレードのようなお話。特に終盤の盛り上がりは本当にドキドキした。途中までは彼かなぁとか思ってたけど終盤にアーネッソンに変えてしまった。まぁ犯人当てを狙う作品ではないとはいえ、してやられた気分。
古典的名作の捉え方について。エラリー・クイーンもヴァン・ダインも、ディクスン・カーも、書き方に癖があって読むのは疲れる。話の内容も「言うほど面白いか?」と思うものも多い。そんな古典的名作とどのように向き合えば良いか?「歴史を知る」ってのがその答えかなと思う。僧正殺人事件は江戸川乱歩や横溝正史に影響を与えた。ドイルもクリスティもエラリーもヴァンもカーも、彼らの存在があるからこそ今現在も推理小説というものは存在している。僕は推理小説全てを好きでいたい。自分の考える面白いと古典的名作の面白さが違っても、古典的名作も面白いと思えるようになりたい。そのために必要なのは感受性かなと思う。作中の登場人物のようになりきれれば、彼らと同じようにドキドキできる。もっと、もっと、感受性を高めたい。
Posted by ブクログ
古典ミステリを読もう企画
かなり面白かった。
なんとなくヴァンダインは堅そうなイメージがあったが、キャラもコミカルで読みやすかった。
見立て殺人の傑作として、マザーグースの詩になぞらえる不気味さとスリルが続きを読みたくさせる。
警察陣と一緒に犯人はこいつか、いやこいつか…と最後まで振り回された。
アーネッソン気に入ってたから良かった。
古い本格にありがちな犯人自殺はあまり好きではないのだが、まぁ仕方ないね…自殺擁護の話をして納得させようとしてるのか…と思ってたらの結末!
ヴァンス好きだなぁ。
注訳も登場人物のヴァンが書いてる風なのもちょっと好き。
Posted by ブクログ
うーん、控えめに言ってめちゃくちゃ凄いのでは?
なにより見立て殺人の動機が原点にして頂点でしょこれ。容疑の押し付けの方ではなくて、無意味な童謡と殺人を結びつけることで、有意味だったはずの地上的な人間生活とやらを根本から破壊するという壮大なユーモアの方。犯人の造形からも説得力あるし、原点からこんなにぶっ飛んだの用意してるとは思ってなかったよ、すげえなヴァン・ダイン。今や忘れ去られてオタクしか読んでない作家らしいけど、またいつか長編制覇します…いつかね…
本格としては『グリーン家』には劣るけれど、童謡見立て殺人(大好き!)の元祖という偉大さから評価は甘めに。『そして誰もいなくなった』はこれがなくても生まれてただろうけど、『悪魔の手毬唄』や『山魔の如き嗤うもの』はひょっとするとなかったかもネ… という感謝も込めて。
Posted by ブクログ
苦手そうと思いつつ手に取ってみたのがちょうど4月で、小説の舞台と一致する時期に読むのが好きなのでページをめくり始めたら意外にすらすら進めて一気に終わった。推理力がないのに、それなりに古典ミステリーを読み溜めてしまったために、第一の殺人の時点で犯人と動機が思い浮かんでしまい(一番連想したのは映画のローラ殺人事件だったが)、怪しい人物が出てくるたびにやっぱり自分間違ってたのかな、と揺さぶられつつ結果は予定調和…まっさらな気分で堪能できないのは残念だが雰囲気が好きで楽しめた。
後輩エラリークイーンよりもっとペダンティックな探偵と言われるので腰が引けてたけれど、初期EQで免疫ができていた+蘊蓄の内容に必然性があるというかストーリーに馴染んでいる(端折ってしまうと「数学者は殺人に抵抗を持たなくなる」とか現実的には荒唐無稽な暴論ながら小説の中で説得力のある意見として機能させるために一見冗長な学識データが生きているところなど)。衝撃の結末?も、こちらを本歌取りしたようなYの悲劇では「え… (だめじゃない?)」だったけど、元祖は(犯人の年齢もあるかもしれない)ワイングラス入れ替え時のとってつけた「チェリーニの飾り板」発言が、探偵の衒学キャラクターの効果で妙に鮮やかに決まっていて、種明かし時に不謹慎ながら笑ってしまった。法の執行者に咎められる場面から直接最後の1ページで大人の判断になったんだなとわかる終わり方自体大人な感じ。透明人間なナレーターとその原注もなんだか斬新。
Posted by ブクログ
全ての伏線が見事に回収される。名作古典の力を思い知る作品。
古今東西の探偵が出てくる話において私個人としては法律に則らず探偵自身が裁きを下すことについては受け入れられない感情はある。けど洗練されていて気持ちよく読み進めた。
家政婦や使用人が普通にいる話が何となくイギリスとかヨーロッパを思わせるんだけど地名がでてきて、そうだ、昔のアメリカなんだ、そういえばこの時代のアメリカの探偵小説を読むの初めてだなあ、と気づいた。
ヴァン.ダイン、今更ながら好きになりました。
他作もじっくり読んでいきます。
Posted by ブクログ
ヴァンダインの代表作の一つに挙げられることが多い作品なので読んでみた。文学や数学についての肉付けが多くやや疲れるが、事件の進み方、解決パートについては全く古さを感じない優れた作品だと感じた。教授が罪をなすりつけたのはなるほどそういうことか、と。
ワインを入れ替えるくだりは『バイバイ、エンジェル』を彷彿とさせる。あの作品もかっこよかったなぁ。
Posted by ブクログ
「見立て殺人」の始祖的作品ということで読んだ。マザーグースの歌になぞらえて殺人が行われる。
登場人物がかなり死んだのもあり、最終的に容疑者が教授、その弟子筋にあたる数学者の男性、教授の姪くらいしかいなかった。この弟子の数学者男が犯人かと思わせておいて(作中でもヴァンスがその体で話を進めていて)最後の問答をしているところで教授がワインを飲み死ぬ。教授が数学者男を犯人にするために仕立て上げた犯罪だったと判明する、という流れ。
序盤から捜査に顔を挟んできた数学者男が犯人かと思ってたら教授だったので驚いた。ひとつひとつの殺人はマザーグースの見立てがあるだけで、どの殺人も容疑者達なら可能な内容だった。タイプライターなどの証拠も家にあったし。
一番驚いたのはヴァンスが青酸カリが入ったワインに気づいていて、気づいた上でそれを数学者男のものとすりかえて教授に飲ませたことだ。教授が数学者男を自殺に見せかけて殺すつもりで入れた青酸カリで、教授自身が死んだ。そのワイングラスをすり替えたのはヴァンスという事実に驚いた。死なせてもいいかとヴァンスは思ったのだろうが、名探偵がそんな選択していいんだ、と驚いた。
Posted by ブクログ
今作は見立て殺人の原点らしい。
コックロビンを模した殺人、その後もすずめなど、犯人もマザーグースを意識して展開していく。
終盤は犯人を引っ掛けてから推理披露まであっという間の展開で面白かったのだが、そこに辿り着くまでが長かった。序盤はコックロビンの歌の話でまだ読みやすいのだが、中盤は登場人物の会話が飛び交いながら、チェスや数学の話であまり頭に入ってこず。なんとなく読み進めていたら矢が女性用のものであるとか、追加で殺人が起きたとか、何かしら判明したり起こってはいるのだが。
ラストは予想外に呆気なく死んでいったというか、ヴァンスが見殺しにした形ではあったが、犯人が捻くれていて結構面白かったので序盤と終盤だけなら★4。
原注・訳注にて、マザーグースの歌が色々と紹介されている。馴染みのあるものもあれば(ジャックホーナーぼうやなど)知らないものもあり、マザーグース解説本を読みたくなる。
Posted by ブクログ
見立て殺人を扱った小説の元祖ということで読んでみた。マザー・グースの歌に見立てて殺人が行われていくが、動機やトリックのようなものが、数学者的な理由からということで、方程式やら法則やらなんやらと探偵ヴァンスは説明してくれるが、「ほう!そうか!」とはならず、少し消化不良。ただ、色々な見立て殺人の大元になった作品というこという点では、読んでよかった。