あらすじ
目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見たて、日々の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが……。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし「ウソカノ」の2作を初収録。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
乙一さんの短編集。
個人的にはZooにも引けを取らないくらい面白かった!
•自分の頭の中の携帯で他人と電話をする摩訶不思議な話「calling you」
•事故により右手指しか動かせなくなり、感覚は右腕の触角のみとなった主人公の物話「失はれる物語」
まるで乙一さんが経験したかのような繊細な描写が凄すぎた…個人的ベスト!
•他人の傷を吸い取るアサトと”オレ”の物語「傷」
痛みをはんぶんこする2人の友情にジンときた。
•叔母のカバンから宝石を奪おうと、旅館の壁に穴を開けて外から盗もうとする主人公。
しかし、その手で掴んだのはなんと人の手で?!「手を握る泥棒の物語」
•家主が亡くなった家に住むことになった大学生が、子猫と”家主”の霊と同居するお話「しあわせは子猫のかたち」
•白いブリーフパンツの”パンツくん”に、励まされながらも成長する少年を描いた短い短いお話「僕の賢いパンツくん」
•突然飛び降り電車に轢かれバラバラとなった鳴海マリア。生前彼女に魅了された内の1人である主人公のもとに、ある日野良猫がマリアの指を持って現れる…「マリアの指」
マリアの死に驚いた。
「かつてある男子生徒を自殺に追いやったこともあるマリアが、男を愛せるような女に変わったことを許せなかった」という理由に驚愕。
•一度嘘をついたことで、存在しない彼女の話を続けることになってしまった男子生徒2人の話「ウソカノ」
なんともユーモアのある作者さんです。
ここまでいろんな分野の話が入った短編集もなかなかありません。
Posted by ブクログ
面白かった!!
失われる物語は素敵だと思うところもあったけど、悲しさが大きかった。
傷は結構痛々しさが強かった。
マリアの指は結構鬱な展開でなかなか読み進められなかった。
僕の賢いパンツくんは不思議だった。
Calling You、しあわせは子猫のかたちの2つは、時が経つに連れて前向きに元気になって、悲しいところもあったけど最後に ありがとう、頑張る みたいになってて好きだなあ。
手を握る泥棒の物語も、この終わり方好きだなあと思った。
ウソカノも良かった。
Posted by ブクログ
昔読んだ電話の作品が忘れられなくて、いろいろ探した末に見つけることのできた短編集。
それなので、Calling youが目当だった。懐かしい気持ちとともに、改めて筋書きの面白さと完成度の高さに感動した。
それ以外で、好きだったのは「しあわせは子猫のかたち」だった。
全8つの短編はどれも暗さや寂しさが潜む作品が多い印象だったが、この作品は、寂しさもありつつ、温かさや前を向けるようなラストで、しんどい作品が多い中、ほっこりすることができた。
この作者は、比較的切ないストーリーの場合は「白乙一」と呼ばれているらしく、今回の作品のような白乙一の方をもっと読みたいと思った。