【感想・ネタバレ】タイムマシンに乗れないぼくたちのレビュー

あらすじ

愛され度200%! 大人気著者初の短篇集

商店街で働く南優香は、いまよりほんの少し愉快に生きるためのライフハックを思いつく。今日から私、殺し屋になる――(「コードネームは保留」)。
博物館の片隅で現実逃避に余念のないサラリーマンと小学生。つい悩みを吐露し合ってしまった二人の本当の願いは……(表題作)。
読むほどに心が楽になる、7つの物語。
解説・森川すいめい

目次
(1)コードネームは保留
(2)タイムマシンに乗れないぼくたち
(3)灯台
(4)夢の女
(5)深く息を吸って、
(6)口笛
(7)対岸の叔父

単行本 2022年2月 文藝春秋刊
文庫版 2025年2月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

世間のいう普通や幸せから少し外れた人達、でも誰にでも当てはまる気もする人達の短編集。
個々の葛藤が完全に解決する訳ではないが、それでも他者との繋がりを感じたり、自分から一歩を踏み出したりする場面が描かれており、心が暖まった。

「深く息を吸って、」が一番好きだった。心情の微細な部分まで追いかけて表現されているため、「きみ」が最後に立ち向かう場面の緊張感が手に取るように伝わってきて、短い作品ながらも最後は没入して読んでいた。
世間における「きみ」の濃度と、呼吸の深浅の比喩も、とても好きな表現だった。

一方で「対岸の叔父」は、世間に立ち向かうことが全てでなく、逃げる道もあると教えてくれるようで、話のコミカルさもあって心の緊張が解れるようだった。

全体を通して、様々な生き方を肯定してくれる短編集だった。

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

SNSで紹介されてたのをきっかけに読んだんだけど,紹介してたのが,社会正義に基づいて,理詰めでバッサバッサと官僚や政治家を斬っていく,あの鋭い舌鋒の政治家.
しかも,YouTubeではちょっとコミカルな顔も見せるギャップの持ち主で,日本の“政治界の頭脳三傑”の一人だと思ってるような人.
…が!このタイトル?この表紙?この作風??
えっ,本当に!?と思いながら読み始めたけど,読後にはしっかり納得していた.
というか,むしろこの人がこの作品を勧めていたことが,自分にとっては強く印象に残った.

物語は静かで,日常の細やかな場面が中心.
でも,そこにさりげなく差し込まれる言葉たちが,じわじわと心に沁みてくる.
特に「好きな人に,いい枕で寝て欲しいと思っています」という一言には,ぐっときた.
(どんな場面で出てくるセリフなのかは,ぜひ本編で確かめてみてほしい!)
自分が何かをすることよりも,その人が穏やかに過ごしてくれていたらいい,という祈りのような感情.
無償の愛って,きっとこういうことなんだろうな.

誰かのために祈るって,実は自分のためでもある.
そしてそれは,同情でも,理解でもなくて,
立場や価値観を超えて「そばにいたい」と思える,ただそれだけの共感.
でもそれが,たぶん,いちばん尊くてむずかしい.
そうなりたいけど,でもどこか違う気もして…
そのモヤモヤを抱えながら,最終話「対岸の叔父」に辿り着いたとき,
“ぼく”の視線に,自分の気持ちが少しだけ重なった.

思い出したのは,シルヴァスタインの『おおきな木』(これもきっと,読んでみてね)の最後の一言.
「でも,それはほんとうかな?」
優しさや共感が,もしも犠牲の上に成り立っていたとしたら,
それはほんとうの優しさだろうか?
その問いを,そっと胸に残してくれる一冊だった.

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2025年09月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集。最近はノンフィクションやエッセイを読んでいたので、久々の小説復帰。

全体的に、序盤は閉塞感があるが、終盤は開放感を得られる物語だった。マジョリティから少しはみ出た人たちの日常を描くのが上手い。
コードネームは保留、夢の女の二編が好みだった。現実逃避するために、自らにコードネームをつけて役を演じようとする女性、日常の憂いから逃れるために秘密のSF小説を書いていた男性。、生きるって奥深いな〜。

夢の女は、どことなく神様のビオトープに近しい雰囲気を感じることができた。
また、対岸の叔父では、『川のほとりに立つものは』に通じる表現が散りばめられていた。


小説復帰したが、何かを得ようと思って読むのではなく、雰囲気を楽しむのもひとつの楽しみ方だと思った。文芸誌を読むのも一考かもしれない。

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2025年05月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

殺し屋の設定、博物館、ケンカの仲裁役、旦那のSF小説に出てきた絶世の美女、雑誌、口笛、街で嫌われている叔父。
どれもが主人公にとっての拠り所になっている。
でもそのままでは最後の部分で救われきることができない。支えられながら、一歩だけ、あるいは半歩でも踏み出すことで世界がほんの少し変わる。シンデレラほどは変えられなくても、明日を迎えてみようと思えれば、それで十分だと思う。一人で歩き始められれば見える景色が増えるのかも。

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2025年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『しあわせとやらが1種類ではないことぐらい、わたしたちはもうちゃんと知っているはずだ、』p96

短編集。

殺し屋、コードネーム:保留。
そういう設定が斬新で、面白かった。
私もたまにはそんな設定でいく1日があってもいいかも。
なんて、思って想像したら笑けてきました笑

とてもユーモア満載の作品でした。

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2025年04月17日

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