【感想・ネタバレ】闘う文豪とナチス・ドイツ トーマス・マンの亡命日記のレビュー

あらすじ

大作『ブッデンブローク家の人々』で若くして名声を獲得し、54歳でノーベル文学賞を受賞したドイツ人作家トーマス・マン。
だが、ファシズム台頭で運命は暗転する。
体制に批判的なマンをナチスは国外追放に。
以降、アメリカをおもな拠点に、講演やラジオ放送を通じてヒトラー打倒を訴え続け、その亡命生活は20年近くに及んだ。
激動の時代を、マンはどう見つめ、記録したか。
遺された浩瀚な日記から浮かび上がる闘いの軌跡。

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Posted by ブクログ

ナチス政権台頭時、動乱の世界情勢に著名人が新たな権力に迎合する。音楽や作家への痛烈な批判。
凡ゆる事物への観察眼はジャーナリストよりも正確無比。
終戦後、晩年の限界を感じた哀切ある感情が印象的だった。
「私のいる所にこそドイツ文化がある」
マン自身の言葉である。
WWⅡ開戦後に国籍の剥奪、大学名誉職も除籍される。心中穏やかではなかった...
新聞の情報を信頼しない。思惑を込めた政府筋から流された報告、ガセネタ、記者の思い込みを避けるためだと云う。作家としてのポリシーが垣間見れる。
彼は終戦後、帰国先を祖国ドイツではなく、スイスを選んだ。愛国者というより、平和主義者ではなかったか。

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2022年01月13日

Posted by ブクログ

映画「永遠のジャンゴ」を
観てきたばかりです
ジプシージャズの神様とも言われた
ジャンゴ・ラインハルトの
ナチスからの受難の時代を
ジャンゴはギターという武器を携えて
乗り越えた
その足跡を描いた映画です

そして、
この一冊
トーマス・マンさんが
亡命させられた文学者の立場か
ペンという武器を携えて
ナチスの時代を生き抜いた

その苦難の足跡を
膨大な量の日記を読み通す中で
わかりやすく
興味深く
その時代の考証も交えて
博覧強記の文学者
池内紀さんが
トーマス・マンさんが
書き続け
生き抜いてこられた
その足跡を
「日記」から
ひも解いてこられた

その時の
トーマス・マンさんの憤りと苦悩の
息遣いまで
伝わってくるような
一冊です。

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2018年04月11日

Posted by ブクログ

トーマスマンの小説については読んでいるはずなのにあまり記憶にはないが、この本をよんだので、日記を読んだ気になった。

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2017年10月07日

Posted by ブクログ

「全体主義」への関心から、読んでみる。(最近、アーレントを読んでいるのは、もともと「全体主義」への関心が根っこにあったからで、逆ではなかった。今は、逆転しているかもしれないが。。。)

全10巻あるトーマス・マンの日記(約20年分)が、30年かけて翻訳されるのにあわせて、出版元の季刊誌に書かれたエッセイを集めたもの。(マンの日記が翻訳されているのはなんとなく知っていたけど、30年もコツコツと翻訳し、出版するという努力がなされていたことに驚く)

タイトルで言われるほど、「マン対ナチス」という本ではない。マンの日記を大まかな年代に分けつつも、時系列に沿って記述するのではなく、そこから浮かび上がるテーマをひろって書かれたエッセイからなる。

とはいって、マンの日記のスタートは、1933年ナチスが政権を取ってからなので、サブタイトルにあるように政治的な要素を含む「亡命日記」という感じ。

ナチスや世界の戦争の中でのマンの言動とその背景が伝わってくると同時に、亡命者として、他の亡命者やナチ側について知識人への批判などが、面白いかな?(いろいろあるけど、やっぱり本業は小説家ということか)

アーレントとの関係では、アーレントも1933年に亡命して、アメリカにたどり着き、同じ時代に同じ国にいるわけだが、一方は世界的な大文豪、一方は無名のユダヤ人。

戦後、マッカーシズムが吹き荒れるアメリカにおいて「反共」という名の下に、ナチズムと同じような状況が生じるなかで、マンは再び亡命して、スイスに移住するのに対して、アーレントはアメリカの可能性を信じて、アメリカに踏みとどまり、市民権をえる。1951年、「全体主義の起源」を発表することを通じて、プチ有名人となる。収容所の経験もある亡命ユダヤ人で、反ナチズム、反共産主義の騎手みたいな受けとめだったのかな?

あらためて考えると、「全体主義の起源」って、マッカーシズムの最中に出版されていたんだね。スターリンとヒトラーを合わせて「全体主義」として批判したので、当時の風潮からヒットしたということか?内容的には、相当に難解なので、ちゃんと読んだ人がいるとは思えない。マルクスや共産主義への強い批判はあるものの、歴史認識としては、マルクスに影響されているところも大きい。単純に反マルクスではない感じがする。この辺の微妙な影響関係が難解で当時は誰もわからなかったので、アーレントって、有名になれたんだと思う。

というわけで、この2人の世界は重なりそうで、重ならない。

大戦中のアメリカの亡命者社会みたいなものも面白いテーマかもしれない。

個人的にちょっと切実感を持ったのは、マンが亡命に追い込まれるのは、1933年で、58歳のとき。すでに有名作家とはいえ、そこから、さらに「ヨセフとその兄弟たち」「ファウストゥス博士」など大作を書き上げていく。そのかたわら、膨大な時事的な評論や反ナチの活動、そして講演活動、社交活動をやって、さらに全10巻の本になる日記を書いている。

私もそんな年齢で、このエネルギーにちょっと圧倒される。

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2017年08月23日

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