あらすじ
2025年、是枝裕和監督により再ドラマ化。Netflixにて配信!
年老いた父に愛人がいた――。
四人の娘は対策に大わらわ。
だが、彼女たちもそれぞれ問題を抱えていた。
未亡人の長女は不倫中、次女は夫の浮気を疑い、
三女は独身の寂しさに心がすさみ、
四女はボクサーの卵と同棲、そして母は……。
肉親のエゴと愛憎を赤裸々に描き、家族の在り方を追求してきた著者の
到達点ともいうべき傑作。
向田邦子の放送台本を小説化したロングセラー!
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Posted by ブクログ
個人的には昭和に書かれたとは思えないぐらい読みやすかった。ドラマの脚本から文庫になったのも読み終わってから知った。70歳の父親が不倫していることを知って母親の気持ちなどを含め話し合う四姉妹の話だけど、四姉妹もそれぞれ事情を抱えていてそれぞれの視点で話が進んでいくのが面白かった。
Posted by ブクログ
向田邦子さんの小説は「あうん」以来です。登場人物のキャラが濃い、話が面白いのはもちろんなんですが、特に、この小説はストーリーの組み立て方が際立っているなと思いました。
細かいところは間違ってるかもですが、分かりやすくそう感じた箇所を具体的に書くと、、、
国立の実家で三女の滝子とその恋人である勝又が、四姉妹の長女・綱子と次女・巻子を迎えて会話をするシーン。滝子が勝又のダメ男ぶりを姉達に話す。冒頭、勝又の話しが下手で順序がまるでなってない!と滝子は勝又の愚痴をこぼし始める。もともと口下手な勝又は所在なげな顔、「彼氏を立てなさいよ」と諌める綱子と巻子の姉達。
そこへ、浮気の調査を行う興信所に勤めている勝又が姉達に相談を持ちかける。その内容は、まず、ここに二つの封筒がある。片方は5万円の入った封筒、旦那の浮気調査を頼まれた女性からの報酬。もう片方は10万円の入った封筒、その浮気をしている旦那から口止め料。勝又は自分がどちらを受け取るべきだろうか、と言う。その答えとして、長女の綱子は、浮気なんてダメよ!と言って5万円の方にしなさい、とたしなめる。
それからあーでもないこーでもないと皆で議論した後、最期の最期に勝又の口から、その浮気している旦那が枡川という料亭の主人であることを告げられる。つまり、この旦那の不倫相手は綱子である。それを聞くや否や、綱子は態度を豹変させる。「10万円を選びなさい!」と、綱子の不倫を知らない一同は、その一連の綱子の慌てっぷりに怪訝な表情を浮かべ、巻子は綱子の浮気への疑念を深めていく。
ズブの素人ですが私は思わず唸ってしまいました。滝子の「勝又の話す順番がおかしい」から展開して、それ庇う綱子が早速そのせいで迷惑を被るというストーリーは、漫才のようにフリオチがあって読んでいて「おお!」と膝を打ちましたし、巻子だけが綱子の不倫をじっと観察していて滝子は気づかない、気づかせないという構図は見事に後々のストーリーの展開に生かされ繋がっていきます。この阿修羅のごとくからは、こういった組み立ての巧みさ、上手さが随所に感じられます。
このような良さに加えて「あうん」でも感じた向田邦子さんの描く"人間"の描写力はこの本でも健在で、理屈は分かりませんが登場人物が本当に動画のように動いて見えます。本当に面白いですし、本書はご本人が執筆された脚本をどなたかが小説に起こしたものだそうなのですが、そこに対する違和感は全くありませんでした。
咲子と貞治の妻・豊子がかわいそうに感じ後味が少し悪い部分もありつつ、全体的にまとまった印象でとても面白い小説でした。