あらすじ
貴族のお姫さまではあっても、意地悪い継母のせいで、召使い同然、粗末な身なりで一日中縫い物をさせられ、床が一段低く落ちくぼんだ部屋にひとりぼっちで暮らしている――。千年も昔、日本で書かれた王朝版「シンデレラ物語」。姫君と貴公子のラブ・ストーリーを田辺聖子の現代語訳で!(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
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Posted by ブクログ
田辺聖子さんの作品を読むのはめちゃくちゃ久しぶり。
高校生の時、古典対策(飽くまで試験用)に源氏物語の現代語訳を読んで以来。
そして今回のこの作品、初出は1979年だそう。でも古さを感じさせない!というか舞台が古いしね。
なお田辺聖子さんは2019年に91歳で逝去されました。
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本作、一言で言うと、裏表紙側の帯にある通り、『和製シンデレラ・ストーリー』。
天皇の血筋なのに、母親に早くに死なれ、父親の連れ子として継母にきつく当たられる「おちくぼ姫」。唯一の味方は乳きょうだい(乳母の子ども)で、その子も身分は高くないため継母のおちくぼ姫への攻撃をかばいきれない。
その中で、ふとしたことから今を(政治的に)ときめくイケメン貴族に見初められ、あわやのところで駆け落ち(人さらい?)を成功させ、夫婦ともに超ハッピーな感じに。最終的には継母にも復讐をした後に仲直りをするというもの。
めでたし、めでたし、と。
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やはり出色なのは、その優しい筆致。
所謂現代語訳ではなく、訳しつつ、慣習の説明や状況説明も自然に挿入されており非常に読みやすい。
原典タイトルは『落窪物語』だそうですが、原典からの乖離を考慮してか本作タイトルは『おちくぼ姫』。
原典に忠実ではないことで、逆に風合いはソフトでマイルド、うま味マシマシになっているのだろうと思います。
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あと、ストーリー展開とツイストの要素にも注目です。
一夫多妻が普通であった当時にあって、モノガミー思考のイケメンにゲットされる。そういう、現実ではあり難いことが起こる。だからこそ、美しい物語として際立ちます。
また、本当にいやーな継母が最終的に懲らしめられる。しかも、主人公のおちくぼ姫はそれを望んでおらず、むしろ周囲の気が済まずにそれが行われる。そのおしとやかな性格・やさしさも、やはり有り難いことではないでしょうか?
そうした『あったらいいなあ』が夢見られる素敵なお話だったと思います。
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ということで田辺さんの古典作品でした。
古典、いいですね。教科書で学ぶのとこうして文庫で手に取るのとでは全く違います。ここに現代の作家の技を見た気がします。
今後はこうした古典の現代訳を読み返したくなりました。源氏物語とか、枕草子とか。原典に当たる勇気はありませんが笑 やっぱり日本人ですしね、知っておきたいですよね。本当に読むか分からんけどいつか読みたいです。
Posted by ブクログ
最近平安モノの書籍を読むことが多いので、息抜きにこんな本を手に取ってみました、久々の再読です。。
グリムとかアンデルセン童話だって、当時のグロテスクな結末を子供向けに修正したり、さらにそれをディズニーではハッピーな結末に大幅に変更したりしていると思えば、落窪物語だってこれくらいの修正をしてもいいよね、と思います。
楽しい作品。
田辺さんバンザイ!