あらすじ
男性が死の間際に「御羊」に変身する一族に仕える「わたくし」はその肉を捌き血族に食べさせることを生業とするアンドロイド。ついに大旦那が御羊になったある日、「わたくし」は儀式の準備を進めるが、一族の者たちは「御羊」に対して複雑な思いを抱いていた
第12回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
独特の設定と語り口で紡がれる、とある一族の生き様。「わたくし」がその一人一人を愛しているのが伝わってきて良かった。ふわふわと温かな雰囲気だった。
Posted by ブクログ
これはやさしい本当の物語。─これはやさしい偽りの記録。
──
アンドロイドは電気羊の夢を見るかを想起させる要素が散りばめられながらも、その実、対極な作品であった。どちらかというと、日本のSF(少し不思議)の要素を色濃く受け継いだ作品である。そもそも本作に登場するサイエンスフィクションとしての要素は希薄である。科学技術が発達したことによる虚構は「you」のみであり、それ以外はファンタジーとしての虚構となる。つまり、物語の構造としてもアンドロイドは電機羊の夢を見るかとは全くの対極という立ち位置となる。
また、感じさせるテーマも別物であろう。「アンドロイドは電機羊の夢をみるか」は機械生命体であるアンドロイドが人間と同じ価値観、魂、意志を持てるのか問題定義を行う。その中で、相互理解という壁にぶつかることで理解し合うこと、共生の無意味さを思わせる作品である。対して本作は、機械生命体である「you」が人間になり得るものとして物語が展開される。そして、当然のように人間と共生し、共生するが故に生物としての違いに苦しむのである。前提が違う上で、追い求める過程も異なるのであるから対極な作品といえよう。
さて、本作は「フェイク」である。
(なにを当たり前なこと言っとるんじゃこいつは)と思われるだろうが、重要なのは「フィクション」と形容していないところである。本作には「本来の自分」を他人に見せる登場人物はいない。全員が分厚いペルソナを被っているのである。そのような状況で、「you」だけは全員の心の内を知っている。正確には、「you」だけにはペルソナを被った状態で接する必要がないと全員が思っている。嫌な言い方をすれば、「you」は機械であり、道具である。それを分かった上で共生してるものだから、他の「人間」には見せない「本来の自分」がまろびでてくる。だから「you」は一族の他者にしか見せない「ペルソナ」と、自分にしか見せられない「本来の自分」と二つを記録している。どちらも本物であり、偽物である。本来の自分であるときは、ペルソナの側面が偽物となり、ペルソナを被っているときは本来の自分が偽物となる。陰陽対極図的な関係を保つ。
本作で重要なのは、一族の男が御羊になることではない。人間を看取るということである。一族の人間が死ぬ間際、御羊に姿を変え、一族でその肉を食べる。死んでから御羊に姿を変えるのではなく、死ぬ間際に姿を変えるということは、確実に死ぬ瞬間を看取るものが発生する。故に、本作の最大のフェイクは御羊に転身する事であり、ファクトが看取りである。
羊を捌くのは「you」である。つまり、看取るのモノである。これは何を表すかというと、一族の男は「ペルソナ」と「本来の自分」の二つを視てきた「you」と最期を過ごすということである。家族でもなく、愛した人でもなく、「自分」の全てを知っている隣人と最期の時を過ごす。看取られる側からすれば、なんともやさしい終わりである。では、看取る側はどうなのか。それは貴方次第だろう。
Posted by ブクログ
まさに文体を楽しむ小説、とても面白かった。
SF×純文学という感じで新鮮、両者のいいところをうまく合わせた感じ。物語の設定が明示的に説明されるわけでなく、文章で世界観を構築しているのが凄い。
文章を読んでるだけで面白い稀有な一冊
内容とは関係ないが、コンテストの講評が巻末に載ってるが、鶴の一声で大賞が決まったような雰囲気を感じてウームという気持ち。
Posted by ブクログ
面白かった
幻想小説!
いやふつうに大家族を通した人間賛歌か?
まあよくわからない感じなのだが、読書体験としては極上だった
ありがとう
Posted by ブクログ
近未来なのかは分からないけれど、SF枠を更に作りたくなくて、の分類。
命が命を繋いでいく物語。
そして命ではないものが繋いで生き続ける物語。
うつくしいことばはうつろいゆくようで、
すこしまろく、まどろっこしく、幼いような真摯さで、
結晶のようにくるくると愛を躍らせていた『私』の言葉たち。
夜を跨いでそれでも積もっていく愛情の蜜が、
いつかあなたを壊してしまいますように。
愛するひとたちと果てをみますように。
とても好きな本になりました。
ありがとう。
Posted by ブクログ
「何故そうなのか」についてはわからないのに「そうである」ということが静謐かつときにユーモアを感じさせる不思議な文体で綴られている。終わる命と終わらない命の対比、一族を縛る呪いと長い時の流れの中での連なりが繊細なレース編みのよう描かれた美しい物語。
Posted by ブクログ
ある朝、羊になった男主人が寝室で発見されたところから始まる。その羊の肉を残された一族の者たちにふるまうため、儀式の準備を進めるアンドロイドの一人称視点の物語。
先に言っておくと、なぜこの一族が羊になるのか、なぜその肉を食べなければならないのかをアンドロイドは説明してくれない。羊に変わる一族の人たちもそれぞれ抱えているものはあるが、その心情を推し量ることもしない。それでも、アンドロイドが愛情深くこの一族に寄り添おうとする姿が心を打つ。
シームレスな時系列の切り替えや文体は人を選ぶかもしれないが、アンドロイドから見るこの一族はこうも幻想的で耽美に映るのかと思うと面白い。語られないことによる想像の余地があって私は好き。
Posted by ブクログ
美しい世界、それぞれに不満や弱さ、優しさなどを持つ家族のすれ違いや共鳴などが独特な文体で描かれます。ところどころ、最後まで説明がなされず、特にヒントもなく触れられないまま終わる疑問もありましたが、それも人間に近しいけれど人間ではない存在が語り手ゆえのことなのかと思います。劇的な事件が展開されることはない(あっても過去の記録として)作品ですが、終盤は特に引き込まれました。
Posted by ブクログ
少しわかりにくいところもあるが、人間関係とか背景とか遺伝とか、物語の雰囲気全て好みだった。
死んだら羊になって、それから食べられるって、なかなかシビアに怖いことだ。でもそれを淡々とこなすAIのユウ、一晩眠ると記憶がリセットされ、夕方に近くなると人間に近づく設定などとてもユニークで面白かった。
Posted by ブクログ
Xで見かけて、好きな感じだろうな…で読み始めましたがドンピシャ。好みの世界観!!
You、あくまでも式のための機械かと思いきや、この一族の精神安定剤みたいにもなってるのかな。皆さん呼び方が違うのもいい。
一体桃子は何歳なんだ……トロッコに乗れるしぬいぐるみぶん回してるけど、幼女の言葉遣いと気遣いではない。一族、皆さん微妙に年齢がわからない
文体が読みづらいのもわかります、地の文が尊敬語というのは初めてと思うけど思いの外読みづらいんだな。わからない言葉遣いではないので慣れるのに時間がかかりました。
宮木あや子「太陽の庭」と綾辻行人「暗黒館の殺人」を連想してしまいました。違うけど。
ラムとマトンの中間の羊肉があることを知りました。御羊それくらいで饗されるのかなぁ。
Posted by ブクログ
そもそも主人公のアンドロイドはなぜ少女の姿をしているのか。羊を捌くなんて大仕事のためなら大人の形のほうがいいはず。
彼女が仕える一族も、広い敷地と大きな屋敷と相当な財産があることはわかるが具体的な生業はわからない。
ただ一族それぞれの衣装、食べるもの、好きなことなどは細かく描写されている。
面白かったという一言では片付けられない複雑さ。
Posted by ブクログ
一族の男はある時羊へと姿を変え、残された一族の人間はその羊を食べる。主人公はその羊を捌き料理するアンドロイド。
と、なんだかさっぱりわからないことを読みながら理解、儀式的な羊の解体シーンへと繋がる。
アンドロイドを通して見る世界を見ているので、表現が回りくどかったり意味がわからなかったりするけれど、世界をこのように見ている人がいるのかと離れて見ると、一族が関わるものは美しく、関わらないものには興味がないのだとわかる。
一族に継承、アンドロイドに生まれ変わりの役割をそれぞれ交換して何かを生み出そうとしているのか?と考えたけれど、一族を一つの家族として存続させるための役割として羊とアンドロイドがあるのではと考える。多分羊に変わり始めたのも一族始まってからではないと思うし。
不思議な世界に少しだけ浸るために。
Posted by ブクログ
アンドロイドは眠らないと人間に近づき、人間は永遠に眠る時、人でなくなる。その対称性が面白かった。あと、you への呼びかけが一人一人違ったことも、you が完全な他者ではあるけど、he/she で語られる三人称ほどには心理的にも物理的にも離れていないんだろうなと。諸々面白ポイントがありすぎて、考えがまとまらずにぐるぐるしてる。
Posted by ブクログ
男性が死に至る時に羊になってしまう、そしてその羊を家族で食す…という儀式を脈々と行う一族の人物史を、家に仕えるアンドロイドの目線で描いた小説。
アンドロイド視点の語り口調だからか、地の文も不思議で不安定な文体で、幻想文学が好きな人は好きなんじゃないかなと思った。私は好きです。
どこまでが回想でどこまでが今のことなのか混同するような書かれ方を度々するけれど、彼女の視点で、思考で出力されたものをそのまま見せてもらっているような体験で面白かった。
とはいえ全部を理解できたとは思えないし、家系図を何回見に行ったかも分からない。
男性だけが羊になること、は一体どういうことを伝えたくてできた世界設定なんだろう。
読みやすい作品とは言えないと思う、んだけど、惹き込まれる何があって、一気に読んでしまった。
現実の私たちの世界では男性は羊にならないし、家族だった人を食べるようなこともしない。ただ、儀式を繰り返しながら続いていく家族の姿を見ていると、生まれて死んでを繰り返して家族が続いていく人間の営みが続く先に一体何があるんだろう、意味なんかあるのかな、と喪失感のようなものを覚えた。
1番下の4兄弟が皆魅力的で、これだけの登場人物がいる中での色付けがすごく素敵だった。
「ここはすべての夜明け前」を思い出すところがたびたびあった。
Posted by ブクログ
死ぬ間際の男性が御羊になる一族。残された家族たちはその肉を食べる
意味が分からないけど分からないなりに読む
何代にもわたり一族を助け見守るアンドロイドの目から語られる家族は、飄々としているようで生きることの悲しさを内包しているようにも見える
嫁姑関係で生を輝かせる女性たちが良かった
Posted by ブクログ
表紙に惹かれて、以前から気になっていた本でした。
この物語は、ある一族に仕えるアンドロイドの視点で語られていきます。直系の男性は死ぬと御羊になる一族。そして、その肉を食べるそう。更に、登場する一族は皆、かなり特徴的。謎な部分が多々あるものの、それらの謎はほとんど置いてけぼりです。でも、アンドロイド視点だし仕方ないかな、と思えました。
かなり不思議な作品です。もう少し、この一族の謎について教えてもらえたらな、と思わなくもないですが、終始徹底した曖昧な世界観に好感を持ちました。好みは分かれそうです。
Posted by ブクログ
ジャケ買い。
ジャケットとタイトルの時点でわけわかんなそうだなと予感。
で、最初の数頁で「あ、読むの大変なやつだ」と確信。
けど、とっつきづらいのは間違いなかったが、意外と最後まで引っかかることなく読み切れたことに驚いた。
何よりこのような独特な世界観で文学的表現が散りばめられた中で、ラストは「ああ!」と感嘆と感動があるほどだった。
次作者買いをするかはわからないけど、こういう出会いがあるから本屋は面白い。
Posted by ブクログ
一度挫折して、もう一度読み直したら、意外とするするいけました。
幻想小説だということを念頭にして、ひとつひとつの事象を自分なりに解釈して受け入れることが必要ですね…
(霧に存在が溶け出して、また自然に戻ってくるとかごく普通な様にやり出すし)
やや不安定なアンドロイド視点で、過去にいきなり飛んだりするのも、難読原因かも。
だけど、登場人物たちの心情や、キャラクター性、その奥行きに想いを馳せることができれば、なかなかない小説体験ができます。
なんの話?とかどういうメタファー?とかは、何度も読み直して自分なりの解釈をするしかないと思いますが…
Posted by ブクログ
ハヤカワSF大賞受賞作ということで気になって読むことに。閉塞感のある一族。外へ逃げることが幸福と言い切れるのかはわからないけどそれでも救われて欲しいと願う気持ちはわからないでもない。
正直、読みにくいというかなぜか眠くなるので読み終えるのに時間がかかってしまいました。幻想小説?という感じで設定はもちろん作り込まれてるしアンドロイドと閉塞感とジェンダー感と羊と、好きな要素ばかりなのに。雰囲気が好きなのでこの方の他の作品も読んでみたいと思いますね。
Posted by ブクログ
ぶっ飛んだ設定と独特すぎる文体の第12回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。
ボリュームの割に読むのに時間がかかったのは、この文体のせいである。
好みがはっきりと分かれる作品ではあるけど、私は比較的好きだった。
ラストはなんだか切ない気持ちになった。
Posted by ブクログ
ストーリーは同じテンションでずっと続いていくので夜読むとよく眠れると思います。
文章は可愛くて好きでした。
葉子どもとか、桃子様の仕草とか。
特に「桃子様はくたびれた白色のうさぎの両の耳を握りこんで、振り回し、皆さまとのお茶会へのよろこびを表現している」とか可愛すぎました!
一度読んで、ん??てなって何回か同じところを読んでこれは一体何だ…???となぞなぞのような文章を解読するのもちょっと楽しかったです。