あらすじ
二十一世紀半ばに文明は滅んだ。山奥の僻村イリス沢に生き残った少数の人々は原始的な農耕と苛酷な封建制の下で命を繋いでいる。そんな時代でも、少女たちは《イリス漫画同好会》を結成して青春を謳歌していた。文明の放課後を描くポストアポカリプス部活SF。
第12回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
本に挟まってたチラシを見て、これは買いだ!となった。
「二十一世紀半ばに文明は滅んだ。山奥の僻村イリス沢に生き残った少数の人々は原始的な濃厚と過酷な封建制の下で命を繋いでいる。そんな時代でも、少女たちは《イリス漫画同好会》を結成して青春を謳歌していた。文明の放課後を描くポストアポカリプス部活SF。」
これは、買うでしょ。がっこうぐらし感ある。きらら系ポストアポカリプス。ポストアポカリプス系きらら。
ディストピア時代、30年続いた暗黒時代で本や文化的な代物はほとんどが焼かれ処分され、時にはそれを守ろうとした人ごと焼かれたという、ちゃんとしたディストピア。いや、これはディストピアではなく、単にポストアポカリプスか。なんかもうディストピアの定義がよくわからなくなってくる。
そんな中、荒れ果てた廃屋を部室として、女の子4人が漫画、同人誌を書き、今も続いているかわからないコミケを目指すことになる。
そんな序盤だけで相当面白い。
でも、別に平和な暮らしができているわけではなく、ディストピアに達してすらいない文明。一応禁忌というわけではないようだが、漫画という趣味に勤しんでいるこの子達が焼かれることにならないか、怖い。
しかし、思ったよりだいぶポストなアポカリプスだった。
表紙を見ると、みんなちゃんと制服を着てるから、結局はキャッキャウフフしながら東京を目指してハッピーエンドなのかな、心休まりそう!とか思ってたら、全然そんなことなかった。制服に気を引かれたけど、よく見ると普通に背景は廃屋だったし。
まず学生とかそういう概念がなく、主人公たちみんな毎日働いている。制服はただのファッション…いや、ファッションすら存在しないから作業着というか。ありものを着ているだけというか。
主人公は医者の卵として村で日々働き、医者である母の跡継ぎとして当たり前のように将来的には医院を継ぎ、子供を育ててずっと医者の系譜をつなげていく。
しかも夜這いの風習が普通に復活しており、主人公たちも当たり前のように夜這いを受け入れ、そしていつかは子供を産むという、自由恋愛なんて存在しない社会。
話が進むと主人公はまだマシな方で、「部員」たちの生活も垣間見え、ますますコミケなんか行ってる場合じゃねーだろ、むしろ行かないでくれという気持ちになってくる。
きららジャンプが出てくる雰囲気は全くなかった。
そして中盤になるとなんか普通に主人公以外でコミケに行く雰囲気になったと思いきや、なんか色々な新事実が判明して、なるほど?となってる間にいつの間にか主人公も一緒にコミケに行くことになって終わるという、いささか駆け足に感じる終わり方だった。面白かったけどね。
しかしまあ、最初はディストピア小説かと思って読み始めたけど、結局ポストアポカリプスであって、ディストピアではなかった。割と色々崩壊してて、特に統制とかされてなかった。普通に文明が昔に巻き戻っただけだった。ディストピアとはなんぞや、ポストアポカリプスとはなんぞやというのを、おかげで再認識できた。やっぱり文明には文化が必要なんだ。
どうも最近は自分が疲れているのか、優しい創作しか読めなくなってて、ディストピアやポストアポカリプスであってもホラー感はなく毎日を楽しくおかしく生きていくような作品ばっかり読んでたから、やっぱ崩壊というスパイスはいいよな!くらいの勢いだった。全然そんなことなかった。
書こうと思ったら続きは書けるだろうけど、絶対ハッピーエンドにならないだろうな。読みたいような読みたくないような…
Posted by ブクログ
人間の現行文明の儚さを感じた。そう。人間は、一度失えば転がり落ちるように全てを失う程度の文明しか持っていないのだと。改めて認識させられた。途中の野盗と集落の戦闘描写などおかずになる文章がぐいぐいと引っ張っていく。ものの哀れ、諸行無常。そして結末に続く余白として、女の子四人がこうなってしまった世界を旅をして無事でいられるわけがないというのが、よりせつない。
Posted by ブクログ
火山噴火によるカタストロフィーを契機に核戦争が勃発、日本は反知性・科学主義の独裁国家になり、その後内乱の結果東京はじめ都市は消滅。山間へき地にかろうじて人が生き残るも文明は後退し、領主ー大借地農・中借地農ー作人ー野盗等からなる身分制・封建社会になったディストピア。
マンガ同好会の部活のまねごとをする4人の少女の話から始まるが、4人にも身分の差と身分による役割が隠されている。現状打破や一時的逃避のため、村を脱出し廃京のコミケに行こうとする。
Posted by ブクログ
昔の出来事を備忘録として残してあるノートを見ることで振り返るシーンがあったが、教科書を見ているような退屈な感覚になってしまった。
決められた物語の道筋をただ辿っていくような感覚だったため、ドキドキ感が感じられなかった。
このような時代で自分自身が生きていたらどう感じ、どう生きたのか考えさせられる作品だった。
自分自身が好きなゲームや漫画も無意味なものと位置付けられることがあるが、それこそが生きる目的であり、それがない人生はもはや自分の人生とは言えないのかもしれない。
コミケに旅立ちそこで何を思うのかも見てみたかった。
ポストアポカリプス 終末もの
Posted by ブクログ
ポストアポカリプスから100年後の世界は、いかようであろうか。数百人程度の集落、インフラはない。
この点に変なこだわりをもって読んでしまったせいで、前半はネガティブな気持ちに支配されていた。
徐々に明かされていく事情を知るにつれそれはおさまっていったが、次は人々の価値観が現代的すぎやしないかという印象を抱く。
状況の中にあって状況を俯瞰できる資質はひょっとすると稀ではないのかもしれないが、教育の行き届かない、余暇を過ごすゆとりもない状況でそれを得ることは叶うのか、という。
一万年後の未来なら、ミュータントや魔物が徘徊しててもそういうこともあるかもしれないと気にもしないが、100年後くらいだと、現実と地続きすぎるせいか、ちょっとそれは違うんじゃないのというツッコミが自動的に発動してしまう。ツッコミの数が多ければ多いほど、創作の楽しみは減じることになる。
現代の日本では政府主導で漫画やアニメを世界に広げようと口にはしながらも後ろ足で砂をかけるような行為も並行しており、アクセルと踏むぞと宣言だけしてブレーキを踏んでる観がある。官主導でやりたいのだろうが、官主導だと吉本に資金注入するのがせいぜいなアレっぷり。出来事を並べて見ると助成金ビジネスを取り繕うための迷彩としか見えない。
……というような、かつて抱いた感想を思い出しながら、クールジャパンをもっとマジメにやんなさいよ、日本には日本にしかできない恒久平和への方策があるでしょ?という、著者からのメッセージを読み取った気になった。
過去バナのようなナニカにて描かれた最終兵器に、『風の戦士ダン』に登場した「人食いカビ」を思い出して和みつつ。