【感想・ネタバレ】科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか―のレビュー

あらすじ

なぜ米国が「科学の覇権」を握ったのか? 福島原発事故を世界の科学者はどう見ているのか? 一流科学者も嵌った捏造・盗用・擬似科学の罠とは? 世界に君臨する二大科学誌「ネイチャー」「サイエンス」を舞台に、科学者たちが繰り広げる熾烈な競争の現実から、なぜ科学力が日本の興亡の鍵を握るのかを読みとく。

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国力に直結する科学力

・人や組織が、世界に通用する仕事をするために必要なのは、第一に使っている言語での「流暢さ」であろう。
言語を自由に使いこなせないと、アイディアは枯渇し、コミュニケーションもうまくいかず、
多大なストレスが生じ、大きな成果が生まれることはない。
・社内英語公用化の弊害は、(英語で思考することが普通でない場合)
常に頭の中で、日本語と英語の直訳作業を強いられることにある。
ハンデが大きすぎて、本領発揮とはいかないのだ。
人間の脳がいくらマルチタスクに向いているといっても、
直訳という、常に余計な作計な作業をすることに何の意味があるだろう。人間の論理的思考の大部分を司る言語は、
付け焼刃でこなせるほど甘いものではない。
・流暢な日本語できっちりと発音し、それを一流の通訳が、
世界向けに流暢な英語で発信した方が、よほど格好いいし、実益にも繋がる。
・今の日本で、科学が人気がない理由は、あまりにも周囲の評価を気にしすぎていて、
科学の原点である、素朴な疑問の追及や、わくわくドキドキ感をどこかに置き忘れてしまったからかもしれない。
・エネルギー問題は根が深い。日本人の多くが再生可能エネルギーに対して幻想を抱いている。
だが、科学者やエンジニアの間では、再生可能エネルギーの「限界」が常識となっている。
火力発電や原子力発電は「濃い」エネルギーである。
それに対し、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは「薄い」エネルギーなのだ。
原子力発電が金脈であるとすれば、太陽光発電は川で砂金を掬うようなものだろう。
・太陽光発電の場合、夜間や雨の日に備えた充電設備が必要だ。
風力発電なら、風のない日をどうするか考えなくてはならない。
家庭も工場も、再生可能エネルギーで電力を賄うためには、これからの研究開発を待つ必要がある。
・人間のすることにはミスや失敗がつきものである。
問題は、そこからいかに次を導き出すかだ。
結局、どんなことが起きても、自分の仕事を見つけて一生懸命やるしかないのである。

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2022年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・第Ⅰ部…ネイチャーとサイエンスの違い
・第Ⅱ部…2誌を巻き込んだ科学史上の事件
・第Ⅲ部…日本の科学のあるべき姿とは
・特別鼎談…(天文学)中川貴雄・(生物学)中垣俊之・著者

「新潮45」に連載された「科学の興亡 ネイチャーVS.サイエンス」を加筆修正したもの。メッセージ性の強い書名で少し腰が引けてしまうが、実際のところ評論と言うより科学エッセイに近い。
読者自身に科学的な視点で物事を考えてもらうことを目標に据え、常に中立的立場から率直な物言いがなされているところが評価できる。

私は幼少時代に「子供の科学」を買い与えられていたものの、結局ほとんど手をつけなかったような科学嫌いだが、本書は抵抗なく読めた。全篇を通じて科学ネタが満載で、「実現可能なタイムマシン」や「粘菌レーダー」の件には興味をそそられた。また、鼎談で生の研究者の声を聞けるのもよい。「科学は(もしくは自分の研究は)何の役に立つか?」という問いに対する各人の回答が興味深い。
本書の白眉は、2誌の違いを歴史から運営方針まで丁寧に解説した第Ⅰ部だと思う。私は仕事上「ネイチャー」や「サイエンス」を扱うが2誌の違いはわからなかったので、第Ⅰ部は非常に役立った。第Ⅰ部・第Ⅱ部は、とくに理系学生に強くお薦めしたい。

<メモ>
『ネイチャー』
英・商業誌
発行元:出版大手のマクラミン社→独・ホルツブリンク社(サイエンティフィック・アメリカン誌の親会社)の傘下へ
編集長:個性的
特色:批判的主張やニュース記事など、ジャーナリズム色が強い
   日本語コンテンツ→ネイチャー・ジャパン社「ネイチャー月刊ダイジェスト」
態度:寛容・余裕

『サイエンス』
米・会員誌→同人誌的色彩
発行元:科学振興団体のAAAS
編集長:優等生
特色:アメリカの科学政策を導くという壮大な理念
態度:合理性

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2012年05月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルと内容が解離気味に感じたが、とても興味深かった。特に印象的だったのは、日本における英語公用化の流れに対する意見を述べていたところ。なるべく中立に客観的な視点で論ずる姿勢に好感を抱いた。

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2012年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 科学に興味のある人はもちろん、科学嫌いの方にも是非読んでもらいたい一冊です。難しい数式はなく、平易な文章で書かれていますので、読みやすかったです。

 本書は世界を代表する2大科学雑誌「ネイチャー」と「サイエンス」の比較を通じて、科学を正しく、わかりやすく伝えるということの重要性を問いかけているように思えます。特に東北大震災後の原発事故の報道や、トンデモさんのデマを見ると強く感じます。

 トンデモさんといえば、本書でも疑似科学の話題にも触れています。筆者は「人類の科学レベルでは解明できないことは無数にある。超能力や超常現象だって、100年後には反証可能となり、ふつうの能力や現象として、学校で科学の時間に教わるようになるかもしれない。」と述べています。確かに科学で解明できないことはありますが、疑似科学の多くは、ちゃんとした論理の組立もなく、ずさんな実験方法が多いので、100年後に反証可能となることはないでしょう。

 疑似科学は論文として掲載されるだけならまだいいですが、多くの疑似科学は、本やネットを通じて伝わり、詐欺まがいのことや健康被害といった社会問題になりやすいのです。疑似科学ではこういう問題が起こりやすいので、私は筆者ほど寛容にはなれません。
 

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2012年05月31日

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