あらすじ
「早々に当日復旧を断念したJR東日本の決断は正しかったのか?」
「日本全国の海沿いの路線は、内陸に付け替えるべきか?」
「地元住民にとって、バスはローカル線の代替になりうるのか?」
「災害対策にならないリニア建設で誰が恩恵を受けるのか?」…
シリーズ10万部突破の『鉄道ひとつばなし』(講談社)の著者が「震災」を語る。今、鉄道の視点から、現代日本を問う!
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Posted by ブクログ
震災をきっかけに、鉄道の目的は何なのかということについて論じている。著者は本来政治学者だが、趣味の鉄道に関する著作は多い。専門家とは違った視点で論じていて面白い。
鉄道とは、人々のコミュニケーションの場としての役割も果たしており、目的地へ移動するためだけの手段ではない、という考え方が新鮮で面白い。
Posted by ブクログ
2011.3.11の東日本大震災による鉄道被害とその後の復興についての苛立ちを綴った、言わばJR東日本・JR東海への批判の本である。
特に、震災前からJRは国鉄時代の地方の赤字を抱えたローカル線を次々と廃線し、または第三セクターに売却して国鉄時代の鉄道ネットワーク網から寸断させてきた。そして、地方在来線の運行本数を減らして地域の足を奪ったあげくに、新幹線を通して言わば「地点から地点へ移動するための手段」を通して、日本が特有に抱えてきた、鉄道が有する公共性・コミュニティ機能を次々と壊滅に至らしめたと、痛烈に批判する。その批判の手は現在計画が進められているリニア新幹線にも及ぶ。リニアだろうが新幹線だろうが、要は東京(名古屋)へ行くための利便性を高めるために過ぎず、新幹線が開通しても通過する駅には何ら恩恵を与えず、ストロー効果により余計に地方が疲弊していくと、その忸怩たる思いを赤裸々に綴る。
そう、鉄道を使って地域を独占的にコントロールしてきた構図は、まさに東京電力と変わらないではないか、とその鉄道事業の社会的責務を東日本大震災が起こっても全然果たしていないと、氏は批判を重ねる。そして、鉄道が日本で果たしてきた公共性や余暇の機能を取り戻すことが、震災の復興だけでなく、今後の高齢化・少子化・人口減少社会の日本で欠かせないことであると、本書では強調されている。
日頃、電車通勤で苦しんでいる身としては、JRの姿勢に疑問を呈することも少なくない(特に夜のラッシュ時での私鉄との運行本数の差)。やはり巨大な企業だから様々なニーズに対応しきれないのだろうか。