あらすじ
『土 地球最後のナゾ』で河合隼雄賞受賞を受賞した著者による、書下ろし最新作!
〔前書きより〕
「土とは何なのか?」「なぜ生命や土を作ることができないのか?」という本質的な問いをあいまいなままにしておくことはできない。46億年の地球の歴史を復元し、豊かな土と生命、文明を生み出したレシピを明らかにすることがこの本の目的である。
生と死は、生物と無生物は、土でつながる。多くの陸上生物は土から命の糧を得て、やがて遺体は土の一部になる。つまり、土も変化する。土が変われば、そこで生きられる生物も変化する。40億年の相互作用の中で、地球は次の時代の主役となる生物に適した土壌を用意する。土に居場所を見つけた生物は生存権を得て、さもなければ絶滅してきた。途中でレースを降りた恐竜の化石とは違い、土はいつも陸上生物のそばで並走してきた。土は、地球の変化を見続けてきた“生き証人”としての顔を持つ。
どうだろうか。もし、足元の土が実は生命誕生や私たちヒトをも含む生命進化、今日の環境問題の根っこにまで大きく関わる46億年にわたる壮大なストーリーを教えてくれるとしたら。もう恐竜の化石にすべてを任せておくわけにはいかない。身近にありながら、普段はあまり注目されることのない土だが、私たちは土なしに繁栄していなかっただろうし、いまだに人類が人工的に作れない複雑で神秘的な力を秘めている土が未来を照らす一条の光となるにちがいない。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
「土」について、生物にとって重要だろうとは認識していたが、生命の誕生、動植物の進化と絶滅、人類、文明の栄枯盛衰に密接に関係していると考えたことはなかった。
本書では、「土」とは何か、どのようにせきたのか、から、生命の誕生、植物の進化、動物の進化、人類の進化、文明の栄枯盛衰を土との関係から解説し、土を作る試みまで幅広く論じている。
土とは「岩石が崩壊して生成した砂や粘土と生物遺体に由来する腐植の混合物」である。
現代の科学技術をもってしても作れない二つのものが「生命」と「土」。
一見地味な学問である「土」の研究だが、地質学はもとより、生物学、化学の広範な知識と豊富な現場経験をもとに読みやすい科学書となっている。
環境問題は地球温暖化がグローバルなテーマになっているが、土壌劣化もまた人類が存続するためには克服すべき大きな課題であることを認識させられる良書。
【目次】
第1章 すべては粘土から始まる
第2章 生命誕生と粘土
第3章 土を耕した植物の進化
第4章 土の進化と動物たちの上陸
第5章 土が人類を進化させた
第6章 文明の栄枯盛衰を決める土
第7章 土を作ることはできるのか
Posted by ブクログ
当たり前にある「土」。家庭菜園もろくにしていない私にとっては、そこは体験的にも知的にも未知の世界だった。
土壌の生態系について本書で学ぶにつれ、生化学というか化学をしっかり学びたくなる。土に関する啓蒙書だが、ブルーバックスだけあって、高いレベルが維持されている。
<メモ>
・粘土が鉱物だったとは!
・粘土はマイナスイオンのため帯電しており、だからこそ水と混ぜるとネバネバするのか!
・粘土があると、アミノ酸はタンパク質に発展しやすい!
・粘土鉱物は、遺伝子と同じように複写能力がある!
・シアノバクテリアは植物ではなく、細菌!
・有機物を酸素を使って分解するのではなく、微生物によって嫌気的(酸素無し)に分解する仕組みを発酵という!
・ミミズは海をまたいで存在していることから、かつて陸地は繋がっていたことを示している。
・腎臓がないと1日170リットルの水が必要だが、99%の水を再吸収する腎臓のおかげで2リットルで済んでいる。
・土壌細菌は25度以下で活性化するが、哺乳類は37度前後の為、増殖できない。
・ヒトゲノムの半分はウイルス由来
・