あらすじ
20年ぶりに故郷である高知の矢狗村を訪れた比奈子は、幼馴染みの莎代里が18年前に事故死していたことを知った。その上、莎代里を黄泉の国から呼び戻すべく、母親の照子が禁断の“逆打ち”を行っていたのを知り、愕然とする。四国八十八ヶ所の霊場を死者の歳の数だけ逆に巡ると、死者が甦るというのだ――。そんな中、初恋の人・文也と再会し、恋に落ちる比奈子。だが周囲で不可思議な現象が続発して……。古代伝承を基に、日本人の土俗的感性を喚起する傑作伝記ロマン。
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Posted by ブクログ
『ぼくらの頭脳の鍛え方』(立花隆・佐藤優)をきっかけに本作に興味を持った。読んだ感想として、自分が好きな和風ホラーゲーム「零 赤い蝶」と似た雰囲気や展開で、個人的に読みやすい小説であった。本作は高知県の矢狗村を舞台に、小学時代に過ごした村を訪れた主人公の明神比奈子、かつて主人公の親友で今は亡き日浦莎代里と幼馴染の秋沢文也の三人を中心に物語が進む。この話の見どころは、秋沢文也をめぐっての主人公と蘇った親友の関係性と争いであろう。物語の中盤で判明するが、比奈子にとって、莎代里が小学時代で一番仲がよいと思っていたが、それに反して、莎代里は比奈子を単なる付属物、いいかえると自分にとって都合のいい操り人形にすぎないと、それぞれの心情が食い違うのである。また、莎代里が比奈子と同様に文也が好きだと物語の後半で明らかになり、そこからお互いが文也を取り合うという三角関係が特徴的である。それだけではない。この小説は、所々『古事記』や古代日本の伝承等に言及しており、それによって日本特有の恐怖や観念を醸し出すところが幻想的で虜になる。
Posted by ブクログ
展開が早く文章も上手なんでさくさく読めました。
生者と死者の対比が小野不由美の「屍鬼」を連想させる。
少女の粘りつくような執念が恐ろしかった。
怪奇現象に散々悩まされてるわりに主人公の比奈子と文也の行動が能天気すぎる気がした。
読んでる自分ですらぞっとしたんだから、登場人物二人もあんな目に遭ったら暢気にハイキングなんていかずに屋内に閉じ篭ったりするんじゃないかな。
Posted by ブクログ
栗山千明様の表紙ではなく、皆川博子様「巫子」みたいな装画の版で読みました。
映画は観ました。栗山千明様は美しいし夏川結衣さんも美しいし根岸季衣さんは怖いし筒井道隆さんはフラフラしている……あんまり怖くない作品でした。
3人の三角関係が中心だったようで、小ぢんまりしていた印象でした。
原作は、3人が幼少期を暮らした矢狗村や神の谷、石鎚山すべてを巻き込む死者の蘇りで、大ごとになっていました。
復讐される人もいれば、「会いたかった…」と還ってくる人もいました。哀しい。
修験者は石鎚山の山頂で鎮めて、神の谷では再生した莎代里を死の国に戻すために、死の国から日浦康鷹がやってきて連れ帰る。照子さんを振り切りながらなのでアツい…!願わくば、これを大杉漣さんで観たかったな…
狭いコミュニティだと、噂はすぐ広がるから、何か話題が出たら「どこから知られた?どこまで拡がってる!?」と疑心暗鬼になってしまい避けるようになるのはあるある。人も土地も。
四国にはいまだにいったことがないのでますます行ってみたくなりました。
石鎚山、2000m近くあるのか!観てみたいな〜
Posted by ブクログ
自分の住んでいる四国を舞台にこれほどまでの土俗ホラーが繰り広げられるのにまず驚いた。寒風山トンネルとか石鎚山とか馴染みのある地名が出てくるので、自分の住んでいるところがとんでもなく恐ろしい死者の地のように感じた。
しかし、この死者を甦らせる逆打ちという儀式、これが本当にあるのか、または言い伝えとして残っているのかは寡聞にして知らないが、このアイデアは秀逸。実際、ありそうだもの。
そして素直にお遍路さんを感心して見る事が出来ないようになりそうだ。
この逆打ちを中心に、四国が死者と生者が同居する“死国”となる展開、そして比奈子の実家の管理人、大野シゲの若かりし頃の不倫の話、儀式として四国霊場八十八ヶ所巡りを村の男が順番に行う男の話、植物人間状態で入院している郷土研究家の莎代里の父と介護する看護婦の話、これら全てが逆打ちに同調して収斂する手際は見事だ。
今回読書中、『八つ墓村』とかの昔の日本の映画の雰囲気を思い出した。あの独特の日本人の魂の根源から揺さぶられる恐怖がここにはある。日本の田舎が持つお化け屋敷的な怖さを感じさせる文章力は素晴らしい。
そして映画は未見だが、恐らく莎代里=栗山千明なのだろう。このキャスティングは見事。イメージぴったりだ。映画も観たくなった。
Posted by ブクログ
結局は三角関係の話。と思うと陳腐だけれど。
四国の自然とか古事記の世界と合わせると、情景が豊かに浮かんでくる。
ちょっと四国が怖くなった。四国の人はどう思ってるんだろう?
結局男は死んだ女のもとに行ってしまうのだけど、そんな呪縛から逃げれないのは不幸なこと。主人公もせっかく帰省したのに踏んだり蹴ったり。東京の彼も終わってるし。