【感想・ネタバレ】財布は踊る(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

「今よりもう少し、お金がほしい」専業主婦として穏やかに暮らす葉月みづほ。彼女はある夢を実現するために、生活費を切り詰め、人知れず毎月二万円を貯金していた。努力が実り、夢を実現した喜びも束の間、夫に二百万円以上の借金があることが発覚する。株での失敗、リボ払いの罠。日常に潜むお金の落とし穴からどう逃げる? 切実な想いと未来への希望を描く「お金のつくりかた」超実践小説。(解説・朱野帰子)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集のようになっているのですが、1番刺さったのが、奨学金のせいで貧乏暮らしのアラサーOL2人組のお話。

男尊女卑な田舎から逃れるため、奨学金を背負ってまで大学を卒業したのに、不景気世代で正社員になれずカツカツな生活。
コスメは百均、服はメルカリ、アラサーなのに親友とマックのコーヒーで長居。
そんな2人がある時、婚活お財布アドバイザーと出会って、本気の節約生活と投資を始めることに。

1人はコロナ禍でつみたてnisaがガクッと値下がりしても淡々と積み立てを続けて、
もう1人はnisaを解約して、これからは仮想通貨の時代!と全ツッパした。

最終的に、仮想通貨は大暴落。積立nisaはご存知の通り世界的な株高で順調に貯蓄でき、予想より早く奨学金を完済できた。
あんなに大親友だったのに、仮想通貨に全ツッパした子は奨学金を膨らませて行方不明に。

そこで衝撃だったのが、積み立て続けた子が賢いわけでも先見の明があったわけでもなく、2人の運命を引き裂いたのは全て「時の運」だということ。
当時はコロナ禍で、どんな専門家でも先が読めない時代だった。
通貨危機が訪れて、仮想通貨やってた方が億万長者になる可能性は全然あったと思う。改めてコロナ禍を客観視してみることができて良かった。

コロナって今思えば「大富豪の革命」みたいなもので、あのチャンスに大儲けした人もいれば、職を失った人もいる。
実際私も、今後はリモートワークが普及して地方回帰するだろうと予測していたから、まさか下落時にインバウンドが東京のタワマン買い漁って不動産価格が超高騰する未来が来るなんて夢にも思っていなかった。

私もたまたまコロナ前から株をしてたから儲かったけど、もしやってなかったら、コロナ禍の下落時には怖すぎてとてもじゃないけど手を出せなかっただろうし、逆にコロナ明けは高騰しすぎて今更手を出せないだろうから、これもまさに時の運だったのだと思います。

あと、話は変わりますが、私が16歳で倉庫のバイトをしてた時、日雇いで1円すら惜しい大人たちが周りに沢山いる環境だったんです。
そこでよく「治験って結構儲かるらしいよ〜」とか聞いたりしてたので、超貧乏な男の章で治験の話題が出てきて笑っちゃいました。
このくらいの年収の人はこんな話題をするだろうとか作者の原田ひ香さんにはお見通しなんでしょうね。思考回路とかにも傾向があるんだろうな。

それにしても良くも悪くもリアルすぎて、お金がカツカツな人の日々の焦りを疑似体験してちょっと疲れた。
自分もお金持ちなわけではないけど節約せず生活できてるから豊かな方なのかもって思いました。

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2026年01月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

流転する、イニシャル入りのブランド財布。


原田ひ香らしい「生活感覚の文学」。
これは小説の話ではなく、明日起きても不思議ではない話だった。

お金は、人を救いもするし、追い詰めもする。
だが、お金そのものが人を不幸にするわけではない。

本作では、「お金があれば幸せになれる」という幻想も、「お金がすべてを壊す」という極論も、どちらも採用されていない。

この小説は、「お金の話」に見せかけて、実は
・自己決定から逃げる人間
・選択の責任を外部(お金・社会・運)に預ける人間
を描いているとも読める。

財布が踊るのではなく、踊らせているのは人間の不安なのだ、と。

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2026年01月04日

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