あらすじ
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ……」エルサレムを訪れていたポアロが耳にした男女の囁きはやがて死海の方へ消えていった。なぜこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか? そんな思いが現実となったように殺人は起こった。謎に包まれた死海を舞台に、ポアロの慧眼が真実を暴く。
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Posted by ブクログ
外しの美学。
ほんとうに、クリスティーは人の思い込みを見越して、物語を構成する才に秀でていたのだと思う。
被害者の人物像を明確にするための装飾かと思いきや、犯人の動機と直結するという、、お見事。完全に見逃していました。
こんなに凄みのある物語が有名にならない、そのことこそ、クリスティー作品の裾野の広さでもあるかもしれない。
Posted by ブクログ
エルサレムを訪れたポアロが聞いた殺人計画。やがて中東を旅行中のポイントン夫人が殺害される。元刑務所の看守で義理の息子や娘たちを支配する暴君だったポイントン夫人。
昔、映画館で『死海殺人事件』を見たときはあまり面白く無かった気がするけど、原作の方は面白い。
ポイントン家の人たちにイライラしたりするけど、事件の展開はとても良い感じ。
Posted by ブクログ
面白かったなあ…
この本を原作とした三谷幸喜のドラマが再放送するのを知って読んでみた。三谷幸喜は「地味だけど面白い」って言ってたけど、たしかにめちゃくちゃ面白かった。
個人的には『ナイルに死す』や『メソポタミヤの殺人』より好き。
作中に登場するエルサレムやペトラの風景がピンとこなかったので、ネットで画像検索しながら読んだら楽しかった。
あと三谷幸喜のドラマのキャストを見て、登場人物のイメージを掴みながら読むのも楽しかった。
ただ、当時のヨーロッパの人の中東地域への価値観や宗教観はやっぱり理解できてないので、そこは仕方ないかな〜という感じ…
「彼女を殺してしまわなければならないんだよ」というセリフを一番最初に置いて、様々な登場人物がボイントン家に関わり合っていく…旅行中の出来事を通して、家族全員の気持ちが犯行へ傾いていく、その過程も面白かった。
そしてそのすべてが伏線で、鮮やかに回収していくのが本当に気持ちいい。
真犯人は最後の最後までわからなかった…
Posted by ブクログ
嘘ォ!?となった犯人。予想外すぎた。しかしクリスティは機能不全に陥る三歩手前くらいの家族の描写が上手すぎる。現実は意地悪婆さんが長生きして、他の家族が押しつぶされるという結末のが多いんだろうな。
Posted by ブクログ
殺人が起きるまでの第一部は「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃならないんだよ」という興味を引く一文から始まるわりに大したことも起こらないようにみえて焦らされた
中東の風景に詳しくないのもあって想像しづらかった
うってかわって謎解きに入ってからはボイントン家の人々の行動や犯人にかなり意外性があって想像以上におもしろかった
自分が母親に会ってみたら死んでて、それを家族がやったと全員勘違いしていくところがいい
犯人を含めて一堂に会した謎解きかと思いきや、犯人には隣の部屋で盗み聞かせておいて…というのが凝ってるなと思った
Posted by ブクログ
注! 内容に触れています
やたらと全知全能なポアロwがことの真相を明かす後半より、ボイントン夫人が子どもたちを支配している、ボイントン家の状況が語られる前半の方が面白かったかな?
ただ、めでたし、めでたしな結末はよかった。
ホッとした(^^ゞ
ていうか、その人が犯人なら、ボイントン家の人たちやサラを、さも、「犯人はお前だろう」的にネチネチいじめないで、さっさと真相を言ったらいいじゃん!
ポアロって、性格わりぃー!(^^ゞ
もっとも、著者としては、読者に「え、その人が犯人なの? いやー、その人が犯人なんて可愛そう」とハラハラさせながら読ませることを目的に書いているわけで。
ポアロが性格悪いというよりは、著者の性格が陰険なのかもしれない(爆)
ていうか、ま、これはミステリー小説なわけで。
つまり、その性格悪いハラハラも含めて、「エンタメ」ってことなだろう。
とはいえ、犯人があの人っていうのは、著者がクリスティーだから許されることで。
これが、新人作家の著作だったら、ボロクソにこき下ろされそうな気がするかな?(爆)
これって、映画化したってことだけど、どんな内容なんだろう?
映画としてはコケたってことだけど、そもそも、こんな地味な話をどうして映画にしようとしたんだって話だ。
前半のボイントン夫人の暴君っぷりを見ていても不快なだけだし。
かといって、起こった事件は一つなわけで、
どうやって見ている人を話に惹きつけたんだろう?と、逆に映画を見てみたくなった(^_^;
本来、旅行なんかに出たくないはずのボイントン夫人が旅行に行こうと考えた理由が、途中で、ジェラール博士によって明かされる(ただし推察)。
“年寄のご婦人がたは世界中どこの国でも同じようなものなんです。つまり、彼女たちは退屈しているのです。”
これなんかは、今の日本人全てに当てはまるんだろうなぁーと。
ちょっと可笑しく、そして耳が痛い(^^ゞ
Posted by ブクログ
そうくるかぁー。入れ替わり立ち代わり雑談を交えながら関係者に尋問して真相を暴いていくタイプで、一行が家族って設定だったから、オリエント急行を連想してしまった。けど今回は真逆で、家族は誰も犯人じゃないのかぁ、と。いや確かにプロットはすごいけど、ちょっと最後無理矢理過ぎない?と真っ先に思ったが、犯人のチョイスやエピローグを見て、ミステリーのプロット以外にもクリスティーなりのテーマが今回もあるんだなと思い、好きな作品の一つになった。
持って生まれた欲求や性質があるなら、それを持て余して堕落するのではなく、良い方向に昇華させることもできるはず。ボイントン夫人の卑しい人生と、事件後のジネウラの幸せと成功な姿があまりにも対極的で印象に残った。
前半の登場人物の描写が鮮明で、相変わらず人間の洞察力に長けた作家だなと思う。冒頭の鮮烈な一文に反してしばらく事件は進展しないが、登場人物が関わり合っていく様子や人物描写に引き込まれて一気読みしてしまった。
犠牲は時には必要なんじゃないかというサラに向かってジェラールが言った台詞が心に刺さった。「あなたがそう考えているなら医者を選ぶべきではない、医者は常に死と戦うべきなのだから。」
創作機能の負担を減らしたいから、人間はだいたい真実を語るものだ、しょっちゅう嘘ばかりついていられない。というポアロの発言に非常に納得した。そう言いきって、実際に自分のやり方で真相を暴いちゃうポアロの魅力にどうしても釣られて、ポアロものを読んじゃうんだよな…。
Posted by ブクログ
一家を財力で支配するサディスティックな未亡人。ボイントン一家の人間が自由を手にするためには、専制君主気取りの女王を死に追いやらなければならない。「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」という一文から始まるのが魅力的。ただ、一家の人間は被害者以外は薄味というか、あまり記憶に残らないキャラクター造形でレノックスとレイモンドがややこしくて何度冒頭を振り返ったか。部外者サラが一家の人間を救い出そうと奮闘するも、君主にすべて気取られて釘を刺される展開は一種のディストピアもののような趣向で面白い。実はこの出来事が事件の謎を解く鍵となっている…
誰からも憎まれる被害者の設定が、登場人物たちの行動・証言をより複雑にして、不可思議な状況が出来上がるという趣向もいい。あのクリスティーの名作の亜種みたいな印象だ。