あらすじ
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ……」エルサレムを訪れていたポアロが耳にした男女の囁きはやがて死海の方へ消えていった。なぜこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか? そんな思いが現実となったように殺人は起こった。謎に包まれた死海を舞台に、ポアロの慧眼が真実を暴く。
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Posted by ブクログ
外しの美学。
ほんとうに、クリスティーは人の思い込みを見越して、物語を構成する才に秀でていたのだと思う。
被害者の人物像を明確にするための装飾かと思いきや、犯人の動機と直結するという、、お見事。完全に見逃していました。
こんなに凄みのある物語が有名にならない、そのことこそ、クリスティー作品の裾野の広さでもあるかもしれない。
Posted by ブクログ
【再読】
女医のサラと医学博士のジェラールが旅先のイスラエルで遭遇したのは、風変わりなアメリカ人の一家だった。母親のボイントン夫人は子どもたちが他人と交流するのを許さず、精神的に支配していた。サラは彼らを解放するために策を講じるがことごとく失敗に終わる。
そんな中でボイントン夫人が死亡する。元々心臓が悪かったこともあり単なる病死と判断されたが、ジェラールの私物から注射器が紛失し、さらにはボイントン夫人には注射の痕があった。イスラエルを訪れていたポアロはこの事件に興味を抱き、捜査を始める。ポアロ自身、夫人の息子レイモンドが発した不穏な言葉を聞いていたからだ。
関係者から話を聞いたポアロはそれぞれの供述に潜む矛盾に気がつく。しかしそれらは、自分以外の誰かを守るためについた嘘だった。ポアロはこの事件の犯人を一家以外の者によるものだと考え、ウエストホルム卿夫人を指摘する。彼女は元犯罪者で、以前看守を務めていたボイントン夫人にその秘密を知られていたのだった。
幕開けはポアロが耳にした不穏な言葉。事件までがじっくり描かれているからこそ心理的な分析や推理が光る。精神的に支配される家族というのは現代にも通ずるリアルなテーマだと思う。誰にも望まれなくても真相を追わずにはいられないポアロの矜持を感じる作品。
●見どころ
・たった一日で真相を解明するポアロ
・いい人過ぎるコープ
Posted by ブクログ
前半はミステリーというより問題のある家族とそこから若者たちをどうにか救い上げようとするサラの物語としてそれなりにのめり込んだ。
ただそこからペトラのキャンプに舞台が移ると、自分の経験と想像力と知識の無さのせいでいまいちそこの情景が浮かんでこなく、画を浮かべながら読書する自分にとってはちょっと辛かった。
それでもこの話好きだなーと感じたのはポアロによる尋問と謎解きが始まってから。
アクロイド殺しのように全ての容疑者が嘘をついているけど、そのほとんどが家族の誰かを疑いながらも庇うために嘘をついていたというのがストーリーとして美しいし、はまらなかったパズルが埋まっていくような爽快感もあり素晴らしい。
真犯人のトリックや動機は地味だけど、まさかの謎解きで部屋に集められた人「じゃない人」が犯人という、アクロイド殺しやオリエント急行ほどじゃないけどちょっとしたセオリー崩しを使っていて、クリスティの捻くれた遊び心というかサービス精神というかをここでも感じた。
最後に前向きな人生を歩み始めた家族を描写してくれてほっこりした。
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ⑯
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
その言葉は夜の静寂へと流れでて、ややしばらくその辺りを漂い、やがて闇の中を死海の方へ消えていった。
冒頭から不穏な空気が満ちる。
そして、その場に居合わせてしまうポアロ。
家族を抑圧し支配下に置くボイントン夫人。歪んだ家族の形に、ボイントン家の誰もが陰気で無気力でどこか張り詰めていた。
そして、ヨルダンでの家族旅行の際、ボイントン夫人が死んだ。その手首には注射の跡があった。
ボイントン家の誰もが疑わしい。しかもポアロの聞いたセリフが疑念を後押しする。
しかし、ポアロは現場の事実を整理し、関係者の証言を聞くことで、矛盾を見つけ、それぞれの嘘を見つけ出す。
そして提示された真犯人。全く考えもしなかった人物で驚かされた。
事件が解決した後、どこまでも嫌な母親だったボイントン夫人について、次女のジネヴラの言葉が印象的だった。
「お母さんは変だったわ。みんなが幸福になった今思うと、なんだか可哀想に思えてくるわ。お母さんの人生の望みは叶えられなかったのね。それはお母さんにとっても難しかったのでしょうね」
Posted by ブクログ
エルサレムを訪れたポアロが聞いた殺人計画。やがて中東を旅行中のポイントン夫人が殺害される。元刑務所の看守で義理の息子や娘たちを支配する暴君だったポイントン夫人。
昔、映画館で『死海殺人事件』を見たときはあまり面白く無かった気がするけど、原作の方は面白い。
ポイントン家の人たちにイライラしたりするけど、事件の展開はとても良い感じ。
Posted by ブクログ
面白かったなあ…
この本を原作とした三谷幸喜のドラマが再放送するのを知って読んでみた。三谷幸喜は「地味だけど面白い」って言ってたけど、たしかにめちゃくちゃ面白かった。
個人的には『ナイルに死す』や『メソポタミヤの殺人』より好き。
作中に登場するエルサレムやペトラの風景がピンとこなかったので、ネットで画像検索しながら読んだら楽しかった。
あと三谷幸喜のドラマのキャストを見て、登場人物のイメージを掴みながら読むのも楽しかった。
ただ、当時のヨーロッパの人の中東地域への価値観や宗教観はやっぱり理解できてないので、そこは仕方ないかな〜という感じ…
「彼女を殺してしまわなければならないんだよ」というセリフを一番最初に置いて、様々な登場人物がボイントン家に関わり合っていく…旅行中の出来事を通して、家族全員の気持ちが犯行へ傾いていく、その過程も面白かった。
そしてそのすべてが伏線で、鮮やかに回収していくのが本当に気持ちいい。
真犯人は最後の最後までわからなかった…
Posted by ブクログ
嘘ォ!?となった犯人。予想外すぎた。しかしクリスティは機能不全に陥る三歩手前くらいの家族の描写が上手すぎる。現実は意地悪婆さんが長生きして、他の家族が押しつぶされるという結末のが多いんだろうな。
Posted by ブクログ
殺人が起きるまでの第一部は「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃならないんだよ」という興味を引く一文から始まるわりに大したことも起こらないようにみえて焦らされた
中東の風景に詳しくないのもあって想像しづらかった
うってかわって謎解きに入ってからはボイントン家の人々の行動や犯人にかなり意外性があって想像以上におもしろかった
自分が母親に会ってみたら死んでて、それを家族がやったと全員勘違いしていくところがいい
犯人を含めて一堂に会した謎解きかと思いきや、犯人には隣の部屋で盗み聞かせておいて…というのが凝ってるなと思った
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティー大全集で星5つだったので期待して読んだ作品。
ボイントン夫人の性根の悪さには納得。誰かをいたぶっていないと生きている意味がない、というような人で、一度ターゲットを決めたら徹底的に追い詰める。あれだけ人を苦しめていたら、誰かに殺されても仕方ないと思ってしまうほどだった。
ただ、ボイントン家の娘たちにはかなり引っかかった。母親に支配されてきた被害者なのは分かるけれど、あまりにも自己中心的。結局、自分のことばかり考えているように見えて、「あなたたちも大概じゃない?」と思ってしまった。
そして一番気になったのがサラ。ボイントン家とは何の関係もない部外者なのに、「自分がこの家族を変えなければ」という発想になるのがどうしても理解できなかった。いや、あなた部外者ですよね?と思ってしまう。しかも、出会ったばかりのレイモンドとすぐに恋に落ちる展開も、正直あまり腑に落ちなかった。
犯人がウエストホルム卿夫人だったのも、「え、そこ?」という感じ。最初の頃に事情を聞かれて、服装について話していたくらいの印象だったので、最後に犯人として出てきたのはかなり唐突に感じた。
さらに、最後はポアロに追い詰められたウエストホルム卿夫人が自殺する。『アクロイド殺し』のときと同じように、ポアロが犯人を自殺へ追い込んでいるようにも見えて、「ポアロ、そこまでやるの?」という気持ちになった。
作品として評価が高いのは分かるけれど、私は謎解きそのものよりも、登場人物たちの行動に「いやいや、それはおかしくない?」とツッコミを入れながら読んだ作品だった。
でも、こういうふうに登場人物に納得できないところがたくさんある作品ほど、読後にあれこれ話したくなるので、これはこれで面白かった。
Posted by ブクログ
一家を財力で支配するサディスティックな未亡人。ボイントン一家の人間が自由を手にするためには、専制君主気取りの女王を死に追いやらなければならない。「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」という一文から始まるのが魅力的。ただ、一家の人間は被害者以外は薄味というか、あまり記憶に残らないキャラクター造形でレノックスとレイモンドがややこしくて何度冒頭を振り返ったか。部外者サラが一家の人間を救い出そうと奮闘するも、君主にすべて気取られて釘を刺される展開は一種のディストピアもののような趣向で面白い。実はこの出来事が事件の謎を解く鍵となっている…
誰からも憎まれる被害者の設定が、登場人物たちの行動・証言をより複雑にして、不可思議な状況が出来上がるという趣向もいい。あのクリスティーの名作の亜種みたいな印象だ。