【感想・ネタバレ】経営学の技法 ふだん使いの三つの思考のレビュー

あらすじ

「なんで経営してないのに、経営のことがわかるんですか?」
経営学者が最もよく聞かれる質問の一つである。

実学として「役に立つ」ことが求められすぎている経営学は
科学的な正しさを求めるがゆえの分かりにくさと
一般社会へ伝えるための分かりやすさとのあいだで
かくも壮大な矛盾を抱えている。

本書では、成果主義、官僚制、科学的管理法など
経営学のなかでも重要とされてきたトピックを扱いながら
あえて、素朴に発せられる質問から出発してみる
という手法で、試行錯誤を繰り返し
現代の新しい経営学の在り方を真摯に問い直す。

「科学は他人を叩く棒でもないし、錦の御旗でもない。
他人ともう少しだけうまくやっていくための道具であり、
もしかしたら社会を良くすることができるかもしれない。
そんな技法のひとつとして、経営学をぜひ使ってみていただきたい。」
(本文終章より)

目次
はじめに 専門家の時代の経営学
第1章 経営学にきいてみる
第2章 成果主義は虚妄だったのか?――条件思考のすすめ
第3章 官僚制は悪なのか?――両面思考のすすめ
第4章 経営科学は役に立つのか?――箴言思考のすすめ
終章 科学と学者の使い方――科学でコミュニケーションする

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Posted by ブクログ

経営学を通して科学とは、科学的態度とは何かを説いた書。経営学って役に立つんですか?→経営学(科学)を役立たせるにはどうすればよいか、という視点で日常使いできる3つの思考法を紹介。科学的に〜とか、エビデンスが〜とか言えばいいってもんじゃなく、自分の文脈に引き寄せて敢えて「誤解」できる余地があってこそ実装にも繋がりうる。そうして自分で咀嚼することこそがオモシロイのかも。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

●2025年7月14日、東京大学・書籍部にあった。2回目のセッションで寄った日。

30冊くらい、平積み・面だしで陳列されてるから、すごく売れる本なのかと思った。

東京大学・書籍部エンド。

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2025年07月14日

Posted by ブクログ

経営学の本を読んだ時のツッコミが先回りして書かれており、さらに掘り下げている好著。

仕事を通じての考え方にも通ずる話なので、経験があれば思い当たる節があるだろうし、なくてもスッと入ってくる内容。新人からベテランまで、色々な人にとって参考になると思う。

また、社会科学におけるエビデンスを知るのにもいい機会になるとも感じた。

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2025年04月29日

Posted by ブクログ

経営学というより科学全般、巷に流布する学説との付き合い方を教えてくれる本。よくあるビジネス本と違って、答えを教えてくれるわけではない。でも、対峙する技法は一生役に立つと思った。

学んだこと
一、流行りの学説を鵜呑みにしない。成立条件を確認する。成果主義の失敗を題材に
二、物事の正否を安易に判断しない。メリットデメリットの両面を確認する。官僚制批判を題材に
三、厳密なエビデンスを求めすぎない。経営は科学ではないのだから、ゆるく構えて実践すればよい

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2025年02月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「経営学は役に立つか?」という素朴な問いに対し、経営学から抽出できる技法・思考法(条件思考(boundary condition)、両面思考(逆機能)、箴言思考)という観点から役立てるための道筋を提示した一冊。書籍内で参照されている論文や書籍等は何れも馴染み深いものであり、確かに技法という観点で纏めることもできるなと、納得しながら読み進めた。
経営学は、実務との重なりが大きく(また実務家による「しろうと理論」(ネガティブな意味ではない)が蔓延っている)、今すぐ役立つ知見を求められる一方、科学に対して真摯に向き合えば向き合う程、強い言葉を使えないという難しさがあることは、他の書籍でも言及されている通り、もはや研究者の共通認識であると認識。本書はその難しさに対して、橋を架けるような取組みの一環であり、経営学は使い方次第では実務家に役立つものと信じている自身のスタンスと近しいものを感じた。
現時点の自分が、実務家に対して経営学の生かし方を説明するのであれば、【(実務家が言語化・認識できていない)現象メカニズムの参照】【(研究潮流を俯瞰した上での)トレンドと社会背景の関係性理解】あたりがキーワードとなるかな・・・等を考えながら読み進めた。

以下、印象に残った箇所を引用
・で、経営学って何なの?と問われると非常に難しいのだけど、経営学を定義するなら「経営に関する学問」となるだろう。ある方の比喩を借りると「小児科」である(p.33)
・歴史的にみても、著名な学者たちが既に官僚制批判を展開している。代表格が、社会学者ロバート・マートンによる「逆機能」の提唱である。つまり官僚制は、機能をもつが「逆」機能も働く(注釈)たとえば規則を遵守することは目的達成のための手段である。しかし構成員は次第に規則を遵守すること自体が目的化し、手段の実行に価値を置くようになる(p.127)
・4つの合理性(p.136)
 - 目的合理性:目的のために合理的であるか
 - 価値合理性:価値観に対して合理的であるか
 - 形式合理性:目的を達成するために効率的な手段であるか→特に、計算可能であるか
 - 実質合理性:理性に照らし合わせて合理的であるか
・行為システム論の骨子はまず、ある意思決定から導かれる結果は、良い面も悪い面ももたらしうる両面的なものだ、ということが挙げられる。ある原因は単一の結果しか生まないわけではなく、複数の結果を生む。そしてその因果は連鎖していく。連鎖が重なると、すべてを予想することはできなくなってくるので、どこかで「意図せざる結果」を生む。そういった連鎖のかたまりを「システム」とよぶ(p.159)
・つまり批判とは、相手の主張をしっかり理解しないと成立しないし、そして主張に内在する問題について指摘されるべきなのだ(p.186)
・ところで、次の言いぐさをどう思うだろうか。「客観的に見て美しい」。美しく思うというのはかなり主観な気がするけど、それが客観的だとしたら、つまり客観とは「共同主観」なのではないだろうか。もしこのフレーズに違和感をもたなかったとして、では客観とは何だろうか。何をすれば、「主観ではなく客観」なのだろうか(p.206)

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2024年12月20日

Posted by ブクログ

経営学は、経営に関与する学問のうち小児科のようなもの。会社、職場、組織、に関する学問。
共著論文は、お互い高度化した議論を理解できない。専門知は集合知。エジソンの発明と同じ。

成果主義=条件思考が必要な例。
富士通の失敗=原因は、目標設定に上司が介入したため指示待ちになったこと、長期目標より短期目標が優先された、他人を助けることの評価がなかった。
成果主義は中身はいろいろ。
報酬は、成果、年功、職務のどれのウエイトを高めるか、という問題。
成果主義は能力開発の機会を用意するべき。
equalityとequity(公平と公正)、diversityとinclusion(多様性と包摂)。
昔から、賞与で成果は評価されていた。日本は報酬を下げるために採用した。本来は組織の成果を報酬に反映する仕組み。
年俸制は現代の成果主義。

官僚制=両面思考が必要な例。
官僚制の批判としてティール組織が挙げられる。
官僚制の特徴=階層原則、公私の分離(規則に従う)、文書主義、専門的分業。
伝統的支配、カリスマ的支配、に比べれば合理性がある。
Wikipediaは官僚的に規則が決まっている。そのほうが価値合理的。
サンクコストも、それによって団結して成果が出るなら悪いこととは限らない。

諫言思考=科学から諫言を読み取り、実務に活かす。厳密な効果は求めない。
テイラーの差別的出来高制度とメイヨーの人間関係論。
人間関係論のもとになったホーソン研究は科学的でないという批判がある。
厳密な効果を求めると、効果は小さくしか現れない。
ドラッカーの著書は諫言集であり、解釈の余地が大きい。

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2025年10月12日

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