【感想・ネタバレ】蚕の王のレビュー

あらすじ

この小説は、決して過去の話などではない。
二俣事件、幸浦事件、小島事件、そして現在もなお審理が続く袴田事件――。
警察と司法が手を組んで行われた犯人捏造の実態とは?
この国の闇に踏み込む、事実に基づく衝撃作。

昭和二十五年(1950年)一月。静岡県二俣町にて一家殺害事件が発生した。のちに死刑判決が覆った日本史上初の冤罪事件・二俣事件である。捜査を取り仕切ったのは、数々の事件を解決に導き「県警の至宝」と呼ばれた刑事・赤松完治。だが彼が行っていたのは、拷問による悪質な自白強要と、司法さえ手なずけた巧妙な犯人捏造であった――。
拷問捜査を告発した現場刑事、赤松の相棒であった元刑事、昭和史に残る名弁護士・清瀬一郎。正義を信じた者たちが繋いだ、無罪判決への軌跡。
そして事件を追い続けた著者だけがたどり着いた、衝撃の結末とは――?

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Posted by ブクログ

静岡出身の著者が、戦後の静岡で起きた「二俣事件」を題材にした事実に基づく小説。

赤松刑事の自白強要が強烈に伝わってくる。
そして、犯人捏造がこんなにも軽く行われていたということに愕然となる。

著者自らが、取材しながらのストーリーになっているので史実では…と感じる。
この事件は、無罪判決が出るまで7年かかったとある。



ほかにも静岡県では、幸浦事件、小島事件、島田事件、丸正事件、そして袴田事件はよく知られていると思う。
拷問捜査で冤罪をつくりだすというだけではなく、警察内部の体質にも問題があるのだろうと感じる。


最後にジャーナリスト・清水潔との特別対談も読み応えがあった。




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2025年03月13日

Posted by ブクログ

安東能明『蚤の王』中公文庫。

実在の冤罪事件をテーマにしたノンフィクション風警察小説。

著者の安東自身が取材を行うという描写もあり、創作小説をより一層ノンフィクション小説の側に寄せている。なかなか面白く、読み応えのある骨太の小説であった。

巻末には北関東幼女連続殺人事件の真相に迫るノンフィクションを執筆し、足利事件の冤罪を証明してみせた清水潔と安東能明の対談が収録されている。

拷問による取調べにより幸浦事件、二俣事件、小島事件と次々と冤罪を作り出した悪徳刑事の赤松完治のモデルは悪名高き紅林麻雄であろう。最近、無罪が確定した袴田事件を始め、静岡県で冤罪事件が多いというのは非科学的或いは非論理的な捜査手法に寄らず、自白至上主義の捏造捜査と収賄に浸り続けた静岡県の警察組織や警察官の腐敗といった悪しき伝統によるのだろうか。


昭和25年1月、静岡県二俣町にて一家4人が殺害される事件が発生した。後に死刑判決が覆った日本初の二俣事件である。捜査の陣頭指揮にあたり、犯人を逮捕したのは数々の殺人事件を解決に導き、『静岡県警の至宝』と呼ばれた刑事の赤松完治だった。しかし、彼の捜査手法とは拷問による悪質な自白強要と、司法さえ手懐けた巧妙な犯人捏造であった。

拷問捜査を告発した現場刑事の吉村や赤松の相棒であった元刑事の城戸、昭和史に残る名弁護士の清瀬一郎が正義を信じ、無罪判決を勝ち取る。そして、事件を追い続けた著者だけがた辿り着いた衝撃の結末とは……

本体価格1,000円
★★★★★

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2024年12月07日

Posted by ブクログ

戦後に起きた冤罪事件を題材にした小説

作者の後書きにもあるとおり、ほぼ史実をベースに書かれているようです。


冤罪とはたった二文字で表される言葉ですが、冤罪は一人の人生を台無しにしてしまいます。

人はどうしても嘘を吐きます。
犯罪者という属性上やむを得ないと思います。
警察や裁判官はその嘘を見抜かなければなりません。
しかしその嘘を見抜く為に嘘をついてしまったら犯罪者と同じで、犯罪者が被害者から未来や金品を奪うのと一緒で、国家権力が冤罪被害者から未来を奪ってしまいます。
根幹には間違った起訴が許されない事と警察や検察の官僚制度というか一種のポイント制度のようなものが、冤罪事件を産み出しているのではと考えさせられます。

社会から犯罪と冤罪をなくす為に、思い切って、生まれた時に嘘を吐いたら体に電気が流れる手術をして、嘘をつけない体にするしか無いのでは思います。


静岡県で起きた二俣事件
一晩で一家四人が惨殺される!!!?
容疑者として挙げられたのは一人の若者で、当時の静岡県警エースによる拷問の末に、警察が描いた容疑を認めてしまう!!!
犯罪と裁判と拷問の関係性と、戦後間もない当時の考え方と権力のあり方について考えさせられる一冊!!

ある意味、ディストピア小説です!

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2025年05月11日

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