あらすじ
カフカの短い言葉は俳句のよう――
「鳥籠が鳥を探しにいった」「体の真ん中に毛糸玉がある感じ」等、20世紀の文豪がのこした断片80首を、自由律俳句のように味わう鮮烈なカフカ入門。カフカの短い断片を新たに訳し下ろし、小宇宙のような深みを楽しめる解説つき。
時代や場所を越え、カフカの世界を縦横無尽に感じられる一冊。
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Posted by ブクログ
カフカの作品は難しいイメージがあって
手に取りづらかった。
そんなとき、俳句なら…と手に取った。
これが沼にはまった原因だ。
個人的に好きだった句は
【わずかな光が言葉を通して洩れてくる】
言葉にできるのは、わずかな事だけ。
逆も然り、言葉を通して必ず伝わる事もある。
【外にでることをゆるされぬままに
内部を焼きつくす火の不幸】
何かしたい(情熱)が何らかで実行されない時、
外に出られなかったために内部を焼き尽くし、
せっかくの情熱が自分を傷つけてしまう。
(=不幸)
【黒い水をかきわけて泳ぐ】
絶望したまま、どう生きるか。
光を求めて溺れてしまわないように。
Posted by ブクログ
2024年に没後100年の記念イヤーだったカフカの自由律俳句集……?
ではもちろんなく、カフカの手紙やメモ、小説の断片から、文学紹介者の頭木弘樹さんが、“俳句的”な文章を選び、短い文章をつけた一風変わったカフカ紹介本。
繊細でナイーブなカフカは、頭木さんいわく、「炭鉱のカナリアのように」他の人の気付かない不安や恐怖に反応してしまう。
一見、ネガティブな“句”(と、この本では呼んでいる)だけれど、他者に対する攻撃性はまるでなく、自分の内面や、自分と世界の関係について、深く深く内省している姿が、ごまかしがなく、とても誠実に感じる。(もしかしたら、そう感じる言葉を選んでいるだけかもしれないけれど)
気に入った句
〈鳥籠が鳥を探しにいった〉
〈まっすぐに立つ不安〉
〈ずっとベッドの中。拒絶〉
〈溺れた者として救いを夢見ている〉
〈ドアががばっと開き、家の中に世界があらわれる〉
〈会話はわたしのせいで絶望的なものに〉
〈ただ自分のことを悲しんでいる〉
〈ときおり体が八つ裂きになりそうな不幸を感じる〉
〈人間の体のくっきりとした輪郭が怖ろしい〉
〈快適だと何もせず、快適でないと何もできない〉
〈闇の暖かさのない闇〉
自由律俳句の山頭火や尾崎放哉と奇しくも同世代なのだそう。
巻末の頭木さんと俳人の九堂夜想さんとの対談も面白かった。