あらすじ
美の錬金術師ポオ(一八〇九―四九)。その美への情熱は精確無比な計算と設計にもとづいてあらゆる作品に発揮されており、読者を怪奇な幻想世界、異常心理の世界へと抗いがたく引きずり込む。ポオの作に傾倒した若きヴァレリはあの「数学的アヘン」を決して忘れることはできぬ、と言った。表題作のほかに「裏切る心臓」「盗まれた手紙」など。
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Posted by ブクログ
『黒猫』
妻が飼っていて黒猫の眼をえぐり殺害してしまった男。一度は後悔し似た黒猫を手に入れ再び飼い始めた夫婦。黒猫に恐怖を感じる男。猫を殺そうとし誤って妻を殺害してしまう。壁に塗りこまれた妻の死体。消えた黒猫。警察の捜査。
『ウィリアム・ウィルソン』
自分と同姓同名の「ウィリアム・ウィルソン」という男に悩まされる男。一度は追放することに成功するが・・・。「ウィリアム・ウィルソン」二暴かれたカードのいかさま。
『裏切る心臓』
老人の遺産を狙って老人を殺害した男。警察の捜査を受けるが・・・。聞こえてくる不思議な音。
『天邪鬼』
『モルグ街の殺人事件』
オーギュスト・デュパン・シリーズ
準密室で殺害されたレスパネェ夫人親子。道に投げ出された夫人の死体。暖炉に押し込まれた娘の死体。証言者によって変わる口論の会話の謎。
『マリー・ロジェーの失踪』
オーギュスト・デュパン・シリーズ
マーリー・ロジェーの失踪。一度は姿を現すが一週間後再びの失踪。川に浮かんだ遺体。新聞による事件の解説。新聞の情報によるデュパンの推理。
『盗まれた手紙』
オーギュスト・デュパン・シリーズ
警視総監Gの依頼。大臣Dによって奪われたある婦人のスキャンダルに関する手紙。警察の捜査の行き詰まり。変装し大臣の家で議論を持ちかけるディパン。
Posted by ブクログ
表題2作の他に「ウィリアム・ウィルソン」・「裏切る心臓」・「天邪鬼」・「マリ・ロジェエの迷宮事件」・「盗まれた心臓」を収録。
各篇ともジャンル小説の体裁ではあるが、怪奇小説なら主人公の恐怖体験だけでなくその前後の堕落と破滅の描写に、探偵小説なら事件のトリックよりも人が物事をどのように捉え考えがちなのかについての考察に重きを置いている印象だ。冗長な箇所があったり作品全体の完成度が低かったりはするが、人間心理の追究は見事だと思う。