あらすじ
新迷探偵コンビ登場!?
文芸編集者の娘と高校国語教師の父が、出版社の「日常の謎」に挑む!
主人公は大手出版社「文宝出版」に勤める田川美希。
女性誌から晴れて希望の文芸部門への配属がかなうと、
大学時代までバスケットボール部で鍛えたバイタリティを活かし、
仕事に燃える毎日だ。
ある日、文宝推理新人賞の最終候補を決める会議で、
有力な候補作品「夢の風車」の担当となった美希は、
その候補者へお知らせの電話をかけた。が、まさかの返事を聞くことになる。
「――応募していませんよ、私は」、と。
一昨年までは新人賞へ投稿していた候補者の男性だが、
まったく芽が出ずに今回は応募をしていないというのだ。
何とかこの作品を世に送り出したいと願う美希は、さまざまな可能性を探るが、
どこからこの原稿が届いたのかまるで見当がつかない。
ふと、父親にことの顛末を話してみようと思った。
..高校教師をしている父は百科事典タイプの人間で、
インターネットで分からなかった疑問を解決してくれたりもする。
相談役として誠に便利な存在だからだ。
娘の相談にお父さんが導き出した真実とは果たして?
大作家同士の手紙、スケッチを映した写真、落語の解釈、
マラソン大会でのハプニングなど、中野の実家に住む父は
抜群の知的推理で謎を次々に解き明かす。
「日常の謎」の名手が、自らのフィールドを最大限に楽しみつつ、
新たに送り出したユーモアとけれん味たっぷりの名探偵シリーズ。
解説=佐藤夕子
単行本 2015年9月 文藝春秋刊
文庫版 2018年9月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
旅のお共にて。久々に北村薫読んだわ。文芸編集者の娘と退職間近・高校教師のお父さん。娘が持ち込んだ日常の謎をお父さんがスッと解決するという、すごく短い話が8編も入ってて読みやすい。謎解き云々というよりも文芸編集者だけあって、文芸にまつわる謎と言うか、豆知識みたいなのが入ってて、北村薫だなぁと思う。あの私と円紫師匠のようだ。あれもまた読み返したいけどなー。わ、今見たら、これもシリーズになってて、あと3冊も出てたわ。
Posted by ブクログ
大手出版社勤務の田川美希、新人賞の担当作でトラブルが発生する。さて誰に相談したものか…と思いついたのは国語教師の父親。お父さんは鮮やかに事件を解決できるのか。
短編8篇、美希の周辺のトラブルをお父さんに相談して…というスタイル。些細なことからなんと殺人!?まで、幅広い題材が軽やかにするりと解き明かされる。
美希もお父さんもカラリとした良いキャラクターで、短篇なのですこしあっさり気味ですがちょっと1つだけ、と読み返すにはいい作品。「その後どうなったの?」という作品もありますが顛末まで書かない、というのもアリなのでしょう。
推理も面白いですし、なんといっても北村さんが描かれる探偵が国語教師ですから、外せないのが「文学」。題材自体が文学関係(「闇の吉原」)というのはもちろん校了時の寝不足が続いた夜のことを話しているときのふとした会話に「暗いうちは滅びない」(P40)と太宰治(『右大臣実朝』より「明るさは滅びの姿であろうか。人も家も、暗いうちはまだ滅亡せぬ」)が出てきたりして、「じゃあこの作品そのうち読もうかな」なんて気にさせてくれるのも北村作品ならではだなぁと感じました。