あらすじ
プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。
カメラマンの新夏は啓久と交際5年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が“出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。
信じるとは、許すとは、愛するとは。
男と女の欲望のブラックボックスに迫る、
著者新境地となる恋愛小説。
わたしの心と体を通ってきた、無数の、犯罪の名前が付かないたくさんの傷のことを考えた。苦しかった。読めてよかった。
――高瀬隼子(作家)
僕はこの物語を、生涯忘れることはありません。
――けんご(小説紹介クリエイター)
女性が置かれている地獄のある側面が突きつけられる。
――スケザネ(書評家)
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Posted by ブクログ
自分なら、自分が新夏ならどうするだろうって、前半はずっと考えていた。
20代の女性として性犯罪者は本当に許せない。ただ、小説の中に出てきた、完璧な人なんて居ないからどこまで許せるかによるってところはすごく共感した。
もし、自分の恋人が性犯罪を犯したら。
もし、自分の友達が性犯罪を犯したら。
それでも恋人や友達でいられる自信が私にはない。私は人を大切にできないのかもしれない。
人のことなんて何にも分からないのに、永遠に人のことを分かりたいと思い続けるのはなんでなんだろう。
Posted by ブクログ
現実世界で、友人の友人が盗撮で捕まった彼氏と結婚した話を聞いたばかりだったから、思わずその子と主人公を重ねてしまった。ちなみに、その子は彼を選んでそれ以外の全ての縁を失ったらしい。
この作品が良かったと思えるのは、「正解以外の恋愛をしたことがある人」じゃないかなと思った。私は楽しめたけど賛否があるのも頷ける。
二部作で前半はプロポーズに応じた翌日に婚約者が性犯罪者になる彼女の視点、後半が1度の盗撮で全てを失ってしまう彼氏の視点で話が進む。
出来事より人の感情がフォーカスされていて、全体的に静かな流れで物語が進む。登場人物達と同じように、読者も何が正解なのかは分からず読み終わってもスッキリはしない。だから、自分は読み終わったあとも考えさせられた。
恋人が盗撮していたことを知るのは、昨日まで大好きだった人が、急に知らない人になるようなものだと思う。非常にレアなケースだけど、誰にでも起こる可能性があるのが怖い。
生理的に受付けなくなっていく一方で、恋人への気持ちを消しきれない主人公。ラブホでのやり取りは、愛したい一方で、自分では突き放せないから見捨てられたい矛盾した気持ちがぶつかっているのが分かって辛かった。
男性側の視点が始まった時は、『盗撮してしまった理由』が語られると思った。事件に関して新事実がないと知った時に、納得できる理由を求めていたことに気付いた。自分も主人公と同じで性犯罪にも理解できる理由があると決めつけていた。もしくは、初めから生理的に受け付けない人間しか性犯罪者にならないと思っていた。
「もし自分が主人公の立場なら」と思わず考えさせられる作品だった。
Posted by ブクログ
盗撮をした恋人と自分なら別れるか。
これをずっと考えながら読み進めてたけど、
セーラー服着せて
ラブホ行って写真撮るところから理解できんくなった。
啓久の犯罪を犯したのに
傲慢というか、
出来心、自分はそっち側の人間じゃない
みたいな見下した感じが嫌悪感。
瀬名の電車に乗ると人が変わったようになってしまい、
再犯してしまうのとか、
あ、これって病気というか
直せないものなのかも、
と思ってしまったり。
私と、
私たちと、
そういう人たちの境目ってなんなんだろ。
誰しも、そちら側になる可能性がある中で
自分は違うと言えるのだろうか。
Posted by ブクログ
ずっと読みたかった本。気になっていたテーマ。
『恋人が盗撮をしたら、あなたはどうしますか?』
別れるという判断を真っ先にして、そのあとで周囲の人々の意見に揺れるのかと思ったが、そう単純な話でもないらしい。
『判断』は周囲の人たちの方が先にする。示談で済んで良かったと喜び、主人公の新夏(にいか)に「これまで通り」を強要する恋人・啓久の母。烈火のごとく怒り、これまで撮った姪の写真もすべて消去させる啓久の姉。結婚前に貸しを作るつもりで許してあげればいいという友人、葵。
許容派が言い募るのは、不倫や浮気を例に出すトラブルばかり。啓久の母も、友人の葵もつらい思いをして乗り越えてきたという。
新夏は思う。だって、それは犯罪じゃないじゃないか。
全体的に、新夏が啓久を許そうとして、それでも許せなくて苦しむ姿が描かれている。
これはどう受け取ればいいのだろう。
苦しんで、許してきた女性がいる。しおらしい啓久の様子も描かれ、誠実に弁明する彼の態度には好感も抱く。許したい、と新夏は思う。
それでも、許せない。
いや、たとえ許せたとしてもそれは「性犯罪を犯した恋人を受け入れた」だけであって、「自分の恋人は性犯罪など犯す人ではない」という信頼は永遠に戻ってこない。
どんなに取り戻したくても、取り戻せないものがある。
そんなたった一度の過ちの重さが、この小説には書かれているような気がする。
本作品は二部構成になっている。
もうひとつの『恋とか愛とかやさしさより』は、盗撮した啓久の視点で彼のその後が描かれる。
彼が盗撮してしまった女子高校生が登場して、女性が搾取される日常をリアルに突きつけている。啓久はここで、彼女を貶めている本当の存在に対して憤るのだが、彼がこうやって感じられるようになるために様々なものを失くさなくてはいけなかったことを考えてしまう。
「盗撮」を『たいして悪いことだと思わずにやってしまった』あの時の啓久に、どうすればこの憤りを持ってもらえるのだろうか。
難しいテーマだった。
Posted by ブクログ
結婚間近の幸せな日々から一変、恋人が盗撮で捕まった。
ただ思いつきでやったことで、どれだけのものを失うのか…想像できているはずなのに、何でやってしまったのかを新夏は知りたかったのだろう。
啓久の両親含めて3人で新夏に謝罪する姿は見ていられなかった。母親の言い訳も同じ女性であるのに聞いていられないほどひどいものだが、自分の子どもの人生がかかっていると思うとそうせざるを得ないのかもしれない。
私ならいくら好きでも叙情酌量の余地がないのなら、別れてしまうと思う。葵のように損得勘定では考えられない。
どうしてそんなことをしてしまったのか知りたいと思う新夏の気持ちはよくわかる。
最後まで読んでもあまり良い未来が見えなかったのは、それだけ重い罪を犯してしまったということなのだろう。
Posted by ブクログ
読んでいる時の感想
読みやすい文章でさくさく話は進むので、寝なきゃと思いつつ気づいたら夜中まで読んでしまった
きっかけ
unimited。あと作者の名前を聞いたことがあった
読んだ直後の感想
この話に出てきた人たちはその後幸せに生きてるのだろうか。。終始重たいどよんとした空気で晴れやかではない
考えたこと
①無理なことは無理
一度失った信頼を完全に回復するのは死ぬまで無理
一度起きたことを無かったことにできないことはある
自分の中にある軽蔑心や疑いに蓋をするのはすごく大変(私も旦那がもし盗撮していることを知ってしまったら、よりを戻したくても結局破綻してしまう気がする。新夏の思いに一番共感できた)
②対等な関係って尊い
この本を読んで思った。見下す見下されるの関係があまりに多いけど、これって人間関係あるあるなのでは?、、、相手が素晴らしすぎると自分が小さくなるし、言いたいことが言えなくなるし、カッコつけたくなる。逆に自分の方が優位に立ってると思ってしまうと劣等感を感じなくていいけど、やっぱりなんか気持ち悪い。ボランティアを嫌う人ってこういう感じなのかな
人それぞれ長所短所があって、尊敬できるところ、相手の力になれるところがあって、そのバランスがよいことを対等な関係っていうと思った。
③寂しい=誰からも尊重されない
たくさん友だちがいたり、家族がいても寂しい人の感じる人がいるけど、これらの根本ってここなのでは?今も私のことを尊重してくれる人たちのこと、大切にしたい