あらすじ
プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。
カメラマンの新夏は啓久と交際5年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が“出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。
信じるとは、許すとは、愛するとは。
男と女の欲望のブラックボックスに迫る、
著者新境地となる恋愛小説。
わたしの心と体を通ってきた、無数の、犯罪の名前が付かないたくさんの傷のことを考えた。苦しかった。読めてよかった。
――高瀬隼子(作家)
僕はこの物語を、生涯忘れることはありません。
――けんご(小説紹介クリエイター)
女性が置かれている地獄のある側面が突きつけられる。
――スケザネ(書評家)
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
プロポーズしてくれた彼氏が盗撮で逮捕される。衝撃的な始まりで彼女である新夏の気持ちを思うといたたまれない。そして示談され安心しきる彼氏側の両親の甘さにイライラしてしまう。お父さんと新夏には幸せになってもらいたい。
Posted by ブクログ
「プロポーズされた翌日、恋人が盗撮で捕まった」
なんという掴み!圧倒されて、最後まで一気読みしてしまった。
出来心で女子高生のスカートの中を盗撮ってのが、俺には全く理解できない価値観と性癖。しかも酔っぱらってるとか疲れすぎてて正常な判断ができない状況とかでもない。こういうヤツほんまにおるんやろな。
前半は彼氏が盗撮したことで、人生が一変する彼女側のカメラマンの新夏が主人公。そりゃもうとんでもなく可哀そうなまでに葛藤する。本人は何も悪いことをしておらず完全に振り回されてる側なのに、罪悪感とか裏切りの気持ちを抱いてしまったり、可哀そうすぎて読んでて吐きそうになった。
とっとと別れてやれば良いのに何をしてるねん、という盗撮した側の彼氏啓久の目線で語られる後半パート。なんと盗撮被害者が重要なキーパーソンで登場する。
やらかしてしまった側の再生物語ではあるんだが、完全に救われる展開ではない。性犯罪者の再生の難しさは想像以上に難しいよ。それだけ悪質だってこと。
勢いづいて2時間ちょっとで読み終わったから、文章の読みやすさはさすが。だが、内包するテーマはとてつもない重量級。ほんま、痴漢とか盗撮とか絶対アカンよ。
Posted by ブクログ
リアルすぎて読むのが辛いまである
日々の生活で、人と目を合わせるのが苦手なのがバレたらとか、気の利いた一言が言えずにちょっと場が静かになるときとか、そうゆうのを思い出す
「新夏が特別な世界を切り取れなくても、啓久が新夏を特別にしてくれたから」
これすっごい分かる
何か価値がないと選んでもらえないと思ってたのに、何の価値もないのにここにいていいのかみたいなことすら思い至ってたときに、特に何もなくてもそばにいてくれた彼のことを手離せるわけはない。
葵「話聞いてると、新夏ってやっぱりアーティストって感じだね。『わかる』とか『ちゃんと』とか、すごくふわふわした言葉に思える。」グワッ
「でもわかる。ブラックボックスに女を引きずり込むような不誠実な男が捨てられる、そんなわかりやすくて胸がすくストーリーを台無しにされて、いらいらするよね。悪いことをしたんだから、目に見えるかたちで報いを受けてほしかったんだよね。そうでなきゃやってらんない、って、他人事なのになぜか思っちゃうんだよね。」
分かる…白黒つけたい、悪い人といい人に分かれていてほしい。白黒つけたがるのは良くないし、でもつけないと加害を許される事実ができてしまう。
相手を許すポイントって何だろう。
きっつ…
ええ…なんやろなんやろきつすぎる
オチってやっぱり大事と思う
作者が何を言いたいか、受け取り手は結局オチで受け取ると思う
Posted by ブクログ
初めは、婚約者が盗撮なんて別れる一択だと思っていました。
ただ、新夏の制服姿で駅まで見送ってというお願いを啓久が受け入れ、どうして私のいうことをきいたのと聞かれた時、「意味わかんないって思ってる俺よりニカのほうが意味わかんないってずっと思ってたんだろうな」というセリフやシーンで、私の気持ちは変わりました。
そのお願いは盗撮とは関係ないとか正論を言うこともできたのに、そうはせず相手の気持ちを想像して行動する啓久に、それほどのことをしたんだから当たり前だと思う人もいるかもしれないけど、私は究極の思いやりを感じてしまいました。
このまま2人が幸せに過ごしていける世界線も見たかったなと願ってしまいました。
Posted by ブクログ
私が女性だから、というわけでもないのだろうが、私は結構真帆子に近い考え方を持っていたので、読んでいてずっと新夏に対してのもどかしさや、啓久に対しての怒りのようなものがあった。
特に新夏については、0か100かで割り切れるわけではない葛藤が伝わってくる分、読んでいて苦しくもあったが、それだけ心の機微が丁寧に描かれているということなのだろう。
最後に啓久が莉子の義父に対峙して発した言葉と、それについて莉子が「尊重される」って恋愛よりもいいもんだ、と言った場面が印象的だった。
性的なモノとして扱われず、人として尊重される、って本当に大事なんだな。
そこに啓久が気づいてくれたことが、救いでした。
Posted by ブクログ
JKのスカートの中を盗撮をした啓久を理解しようと新夏が啓久をセーラー服姿にして同じことをしてそのまま駅まで手繋いで帰って別れ際に大好きよと言う新夏と泣き笑う啓久の描写。
人間が生きてるってことの生々しい匂いを嗅いだみたいにわかりすぎて具合悪くなった。
人を信じる純度を手放さなきゃいけなくなったときの自己との決別の悲しさ、辛いことがあった時のそれが起こる前の自分に戻れない喪失感、自分を失う苦しさみたいなのを思い出した。
私は他者を自分の中に迎い入れ、相手を自分の一部のように扱うことが愛になると思っていた節があり、好きになってたら自他境界が曖昧になって相手の倫理観や貞操観念を自分と同一視してしまうっていうか、自分のレベルを押し付けたくなる。
恋愛において自分を大切にしろというよく聞くフレーズが浮かぶ。
新夏にとって自分を大切にすることはそれまでのときめいた気持ちや積み重ねや思い出に蓋をして愛した相手に見切りをつけることなのか?
愛しあっていたはずでも、相手の人間としての底が見えないことを実感として知った時、他者を愛することと自分を大切にすることを両立させるには相手を自分の中に迎い入れながらも時に個としての違いを突きつけられることを辛抱強く繰り返すしかないんだと思う。
それはある意味、相手に対する諦めなのかと思いつつ、それでもそのバランスの中で愛することを諦めたくない。
Posted by ブクログ
現実で、『盗撮で捕まった彼氏と結婚した話』を聞いたばかりだったから、思わずその子と主人公を重ねてしまった。ちなみに、その子は彼を選んでそれ以外の全ての縁を失ったらしい。
この作品が良かったと思えるのは、「正解以外の恋愛をしたことがある人」じゃないかなと思った。私は楽しめたけど賛否があるのも頷ける。
二部作で前半はプロポーズに応じた翌日に婚約者が性犯罪者になる彼女の視点、後半が1度の盗撮で全てを失ってしまう彼氏の視点で話が進む。
出来事より人の感情がフォーカスされていて、全体的に静かな流れで物語が進む。登場人物達と同じように、読者も何が正解なのかは分からず読み終わってもスッキリはしない。だから、自分は読み終わったあとも考えさせられた。
恋人が盗撮していたことを知るのは、昨日まで大好きだった人が、急に知らない人になるようなものだと思う。非常にレアなケースだけど、誰にでも起こる可能性があるのが怖い。
生理的に受付けなくなっていく一方で、恋人への気持ちを消しきれない主人公。ラブホでのやり取りは、愛したい一方で、自分では突き放せないから見捨てられたい矛盾した気持ちがぶつかっているのが分かって辛かった。
男性側の視点が始まった時は、『盗撮してしまった理由』が語られると思った。事件に関して新事実がないと知った時に、納得できる理由を求めていたことに気付いた。自分も主人公と同じで性犯罪にも理解できる理由があると決めつけていた。もしくは、初めから生理的に受け付けない人間しか性犯罪者にならないと思っていた。
「もし自分が主人公の立場なら」と思わず考えさせられる作品だった。
Posted by ブクログ
すごいテーマ!
正直、主人公のどっちつかずな姿勢に苛立ってしまった。けど考えさせられる。性加害という中で盗撮というテーマに丁寧に向き合わせてくれる。
↓ここに共感。加害者を自分とクッキリと分けることって難しいんだろうなあ。
でも、現実には「ただの人」が「悪いこと」をしている。真っ白はありえず誰もがグレーで、さまざまな理由やタイミングで黒に染まったりする。新夏だってその可能性を孕んでいる。
それこそカメラのシャッターを切る瞬間のように、日常の何気ない、でも象徴的な瞬間を切り取るのがとても上手で、なるほど一穂ミチさんらしいと思った。
新夏母が父との離婚を決めたタイミング「ある日の朝、彼がカーテンを開けて、朝陽が射し込んできて、彼の白髪がきらきら光ってた。あれ、って夢から覚めたみたいに冷静になった。この人の頭、こんなに白かったっけ? 」
「本当にどうでもいい話で、なのに、手のひらの側面を撫でて「てっかてか」と言った啓久の表情が、新夏の頭の中にしか残っていないことがなぜか寂しくてたまらない。」
「例の自助サークルに連れて行かれるとでも思っているのかもしれない。レジ袋が触れない程度の距離から、予防接種を待つ子どもみたいなかわいらしい悲愴感が漂ってくる。」
Posted by ブクログ
友達からたくさん推理小説を借り、その中に入っていた本で、今まで読んでこなかったタイプの本だった。
一言で言うと、「一旦みんな読む必要がある本だ」と感じた。性犯罪に関わらず、信じている人を一度でも裏切ってしまったら、もうその関係性はどう頑張っても元には戻せないのだと、改めて感じることができる。
ニカ目線のストーリーは読んでいてすごく切なく、自分ごとに置き換えて考えても、どうするべきかの答えは出なかった。
性犯罪は絶対に許されないことだ。しかし、自分の大好きなパートナーがついその日だけ、前日の酒も相待ってほろ酔いのままつい”やってしまった”その瞬間、相手のことを嫌いになれるかと言われたら私は無理。そのやってしまった行動自体はとても軽蔑する。しかし別れることができるのかと問われたらとても難しい、、。多分、瀬名さんのように何度も繰り返してしまう人だったらスッパリ別れを告げられるのかな、。読みながらたくさん考えたけど、「多分自分ごとにならないと解決策が出ない」という結論になりました。
Posted by ブクログ
盗撮という性犯罪をテーマにした恋愛の葛藤の物語。
タイトル名と「愛とか恋とかやさしさより」という2編の物語で構成されていて、タイトル作は婚約者が盗撮をしてしまった女性の話で、もう一つの方は盗撮してしまった本人の話。
盗撮は性犯罪でも軽いのか?拡散しなければ赦されるべきなのか?ということも含めて被害者ではなく、加害者側からの視点で心情が描かれていて、特に加害者の婚約者の苦しみは共感できました。
転じて、加害者本人の物語は被害者がキーパーソンとして登場してからは、ちょっとあり得ないシチュエーションだったものの、被害者の訳あり視点からなら理解できなくもない話でした。
いずれの女性も救われないものの、読後感は悪くなかったです。
Posted by ブクログ
プロポーズされて幸せの絶頂から、盗撮事件で心の迷宮入り込む急展開。性犯罪者の気持ちもそのパートナーの気持ちもわからないけど、被害者の気持ちはわかる。このぼんやり気持ち悪くて不愉快な物語は、共感は湧かないけど、心には引っかかる。もやもや。