あらすじ
銀座のはずれにある、ちょっと変わった「ちぐさ百貨店」。千種綺羅の祖母美寿々が営むこの店は、雑貨を売る傍ら、尻尾に魅力が隠された焼き立てのたい焼きも販売している。そんな店を訪れた人々の心を、美味しいたい焼きと所狭しと並べられたこだわりの品々が癒していく。ハンドメイドの一点物アクセサリー、親子を繋ぐつげ櫛、季節外れのスノードーム、店頭に飾られた鯛の木型……。雑貨が人と人を、そして思い出をも、つなぎ癒やしていく、心温まる再生の物語!
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Posted by ブクログ
読み始めた時、銀座で、雑貨屋で、たい焼き屋?と。何が始まるんだ?と思いながら。
読めない展開ですね。
読み進めると、それぞれの価値観、個性の大切さ、銀座の歩き方までが、お客さんとのやり取り、たい焼きを齧ることを通して描かれている。
潔い祖母の口調からは読み取るのが難しいけれど、たしかに感じる愛情。
祖母と孫。18年会っていなくても、絆はある。
そう無条件に考えてしまった私は浅はかで。
絆以上の愛情と秘密を持って、祖母は「ちぐさ百貨店」を孫へと考えたのに。
最後の手紙には泣きました。
愛情深い、秘密があるたい焼き。
私も食べてみたい。
Posted by ブクログ
母親を大学生の時に亡くしている千種綺羅。綺羅の母方の祖母、美寿々は、銀座のはずれで「ちぐさ百貨店」を営んでいる。祖母がセレクトした様々な雑貨と共に、尻尾に秘密のあるたい焼きも販売している。ある理由から長らく疎遠だった祖母に呼び出された綺羅は、失業中だったこともあり、久しぶりにちぐさ百貨店を訪れた。そこには、90歳近くでなおかくしゃくとした美寿々と、たい焼きを焼くアルバイトの青年、皆月葵がいた。
美寿々は店を、綺羅に継いでほしいと言う。綺羅は驚きつつも、子どものころの美寿々と店の記憶を思い出したり、店を手伝うようになってからのお客さんとの交流などを経て、店を継ぐ決意を固める。
しかし、美寿々は綺羅に隠し事があった。綺羅は、実は両親の友人夫妻の子だったのだ。事故で亡くなった友人夫妻に代わり、綺羅を育てた両親。その母親の遺品を、美寿々が綺羅に断りなく処分したのは、その事実を隠すためだった。遺品の件で美寿々に対して怒りの感情があった綺羅は、事実を知り、母が愛用していた登山道具が大切に保管されていたのを見て、美寿々の本当の気持ちを思い、涙する。美寿々は思い切りよく老人ホームへ移り、綺羅は葵と共にちぐさ百貨店を大切に継いでいこうと決意するのであった。
銀座にある、一風変わった雑貨屋さん。お客さんとの交流、雑貨屋でたい焼きを売ることになった経緯、祖母と孫の変化する関係性、訳ありのアルバイト青年。一見、少しピリッとする場面もある、ほのぼの小説だ。しかし最初は、美寿々と葵の口の悪さに辟易して、読むのやめようかな‥なんてちょっと思ってしまった。でも読み進めていけば、2人の口の悪さが、根っこの善良性に緩和されて気にならなくなった。血のつながりがない綺羅を、眼の色がお母さんやおばあちゃんと似てない、ということ以外、なんの懸念も抱かせずに育てた両親と美寿々は、愛情深い人たちなのだとわかる。
終盤に出てくる、美寿々から綺羅の母親に当てた手紙には、美寿々の良さが凝縮されている。涙なくして読めない。あまり出番はないけど、綺羅のお父さんもいい味出してる。義母である美寿々に頭が上がらないように見えて、ちゃんと気にかけてる。
最初の感情に負けて放り出さないで良かった。
Posted by ブクログ
おばあちゃんが若かりし頃、たい焼きを作るきっかけになったエピソードから始まって主人公は孫の綺羅に交代、少しずつ綺羅とおばあちゃんの間にある確執に触れていき徐々に雪解けが見えてきたところで最後に急展開が待っていた。
とはいえその頃には綺羅もだいぶ柔らかくなっていたからか、多少の戸惑いはありつつもすっと道を選んだように思う。
確執については、当時の親子の様子を見ればおばあちゃんの取った行動に分があるかなぁと個人的には思う。捨てた(本当は捨ててない)のはやりすぎだけど、残してたら耐えられないお父さんとずっと遺品抱いてぼんやりしてそうな娘になりそうだ。
最後に、ちぐさのたい焼きとコーヒーのセット頼んでみたい。
Posted by ブクログ
「自分がいいと思ったことを自信を持って勧めるんだ。お客も気に入ってくれればこんな嬉しいことはないよ。自信もつく」
私は雑貨とカフェのお店を営んでいます。自分が自信を持って仕入れたものが売れないと気持ちも沈みますが、上記のセリフで初心に帰る思いでした。
長年の経験に裏打ちされた、ちぐさの店主の揺るぎない自信から生まれた言葉に私も背中を押された気持ちになりました。
Posted by ブクログ
雑貨屋店主がおばあちゃんから孫に引き継ぐ
あったかストーリーと思ったら途中から
ジーンとするお話多めの素敵な作品でした。
雑貨屋でたい焼きを売ることになった
切ないけど暖かいエピソードはよかったし
たい焼きの尻尾に塩昆布の理由も素敵、
当初の目的は達成できなかったけど
そのおかげで今の「ちぐさ百貨店」があり
綺羅が戻ってこれたり葵の居場所になったりと
なんかそんなところもひっくるめてよかった。
近くに売ってたらそのたい焼き食べたいな。
物語の終わりごろに思わぬ展開があり、
これまでの色んなことに納得がいき
あぁ~家族っていいもんだなと思いました。
美寿々ばあちゃん分かってたけど
愛がすごく深いよ。珠子も救われただろうな。
葵が言う「大切なものなんて、
人それぞれだからね。『ちぐさ』の
たい焼きの尻尾みたいに、外からじゃ
何も分からない。みんなそれぞれ
大切なものをもって生きている。
自分以外には分からないから、
時には言葉にして伝えないと
いけないんだよな……」って言葉に
あぁ~ほんとに当たり前のことだけど
大人になってくるとそういう当たり前の
ことに臆病になるんですよね。
なんかいろいろと心に残りました。
そして最後の手紙は素敵すぎました。