あらすじ
勤務先で係長に抜擢された後藤は、ボディビルの選手でもあった。ある日、社内の人材の無駄に切り込み組織の代謝を上げると大会に向けて停滞中だった減量も進むことに気づき、身体を仕上げるべくチームの脂肪の除去に驀進し始める。肉体と組織がシンクロしたとき、たたき出されるのはベストパフォーマンスか、それとも――。
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Posted by ブクログ
最高。面白すぎる。リース会社に勤める主人公・後藤は係長に出世する。彼はボディビルダーの選手でもあり、過酷な減量に取り組んでいる、という話。自分が体型にストイックであるために、肥満体型の同僚や部下がどうしても目につくし気に入らない……という話。減量しているからエネルギーが足りないのに、マッチョだから職場の引越しを手伝わされるのを見て、今の世の中、趣味で絵が上手い人に仕事の絵を描かせたり、趣味でホームページ作ってる人に会社のホームページ作らせたりするのはハラスメントな気がしてくるのに、趣味でムキムキな人には力仕事頼んじゃうよなあと思った。あと、後藤は太っている同僚が仕事中にお菓子を食べることを軽蔑しているけど、後藤も減量のために食事をこまめにとっていて、息抜きのための間食と、崇高なボディビルのためのこまめな食事、どちらも仕事中にほかごとをやっているという意味では同じで、なぜ前者のみ咎められるのかと問われたら確かにぐぬぬとなるなあと思った。
Posted by ブクログ
ブランチで紹介されているのを見て面白そうだったので手に取りました。
主人公の彼は係長に昇進したばかりの新米管理職。
趣味で頑張っているボディビルの大会に向けて、2か月で7キロの減量中。筋トレはもちろん、口に入れるものもグラム数を計ってきっちり管理しながら1日6食。涙ぐましい努力を重ねています。
そんな彼のチームは、お菓子ばかり食べているぽっちゃり系使えない人ばかり。デブの彼らにイライラし、次第に彼らを脂肪とみなし排除作戦に出ます。。
自分の体脂肪を減らす過程と、チームの働かないメンバーを脂肪とみなして排除していくことをシンクロさせて描いているのが面白く、自分の意志で動かせる筋肉を賛美し、動かせない脂肪をカットしていく、という考え方はツボ。
見た目に対する批評をしてはいけない時代ではあるけれど、怠惰で自分に甘いからデブになる、だから仕事もできない、という考え方には共感してしまうので、このブラックユーモア的な風刺が効いたストーリー、私は気に入りました。。
でも、読後は、体脂肪は0パーセントにできないし、そもそも必要なものでもあるし、社会にはいろんな人がいるからね、、と主人公に優しく声を掛けてあげたくなりました。
Posted by ブクログ
体づくりと組織づくりをリンクさせているチームリーダーの話。
組織に貢献しない人材=脂肪、組織に貢献する人材=筋肉として、脂肪を排除することに躍起になるリーダー。
脂肪は落としすぎたらダメっていう結果になった訳だけど、リーダーは脂肪を許せるかな?
ケチる貴方と似てるなぁと思いながら読んでて、読み終わった後に同じ作者だと気付いた。
読む前はマッチョで優しいリーダーと仲間たちの話かと思ってたから、ブラックな面が全面に出ているリーダーにびっくりしたけど、否定もしきれずテンポも良くて読みやすく…
ストイックな後藤の一喜一憂にこちらも巻き込まれるのが気持ち良い。楽しい読書体験だった。
Posted by ブクログ
ボディビルの大会出場を目指してウェイトコントロールしている男性が主人公。
この小説がとにかく面白いのは、気持ちいいくらい体型至上主義なところ。
そのため、デブにはかなり厳しい。
「バルルルルン!」とか、「ブヨヨと全身で驚く。」とか、「デブなら動く機会になるからちょうどいい。」とか、コンプラ的には大アウトな文言が並ぶ。が、それが小気味いい。
(私自身全然スリムではないので、後藤の言葉に耳が痛い部分はあったが。)
どれだけコンプラに反した言動・思考でも、この本の中の正義は後藤にあるから、デブは悪だし、会社にとって使えない社員はチームにとってただの脂肪なのだ。ここまではっきりしてると本当に気持ちいい。
物語の中では、組織をシャープにするとそれに連動して後藤の体もシャープになっていく。なんて面白い発想。
最終的には、組織を削り過ぎてギリギリ制限体重下回ってしまうというオチ。
ほどよいバランスが大事なんだろうけど、後藤は全然めげてない。むしろチームも自分の体と同じように増量してから絞ろうとしてる。後藤の思考もヤバいけど、後藤が主人公だからしょうがない。
こんな時代にこんなお話を書けるのは石田さんだからだろう。ケチる貴方もおもしろかった。身体にまつわる話を書かれることが多いのかなーと思ってネットのインタビュー記事を読んでみたら、この小説の読み方が深まったのでオススメです。