あらすじ
『アナ雪』でひとり氷の城を作ったエルサは本当に孤独だったのか? 運命の恋人、姉妹の愛、孤独から救うのは個人のつながりだけなのか? 映画、マンガ、英文学の名著、とある女王の史実までを読み解き、良い孤独のある社会、孤独を許容する社会を想像する。新時代を目指すカルチャー批評。 【目次】第一章 ロンリネスとソリチュード――または、エルサの孤独/第二章 孤独はいつから避けるべきものになったのか――ひとりぼっちのロビンソン/第三章 「ソウルメイト」の発見――依存と孤独とジェイン・エア/補論 「友達100人」は孤独を癒やしてくれるのか?/第四章 死別と孤独――ヴィクトリア女王から『葬送のフリーレン』へ/第五章 田舎のソリチュードから都会のロンリネスへ――森の生活と、ある探偵の孤独/第六章 自分ひとりの部屋と向かいのおばあさんの部屋――ヴァージニア・ウルフの場合/第七章 誰でも孤独でいられる社会へ――排除型社会と孤独
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Posted by ブクログ
素晴らしかった。新書で泣いてしまったのは初めて。
最終章で出てきたライ麦畑で捕まえて、は筆者と同年代のわたしもだいたい同じ時期に読んで、とても強い印象を受けたことを思い出し、若かった当時感じていた不安や、不満、焦燥がいっきに蘇った。そしてずっと歳をとった今、社会のあり方に途方にくれ、イスラエルで拷問を受けているというガザに向かった若い彼女とその仲間たちに対して私は何が出来るのか…という無力感や申し訳なさで苦しくなった。
どんな社会があり得るのかを考えてみよう、という筆者の呼びかけに応えたいと思う。
しんどくなるニュースばかりで考えることをやめてしまいそうになるけど、諦めずに少しずつ。
アニメや純文学、映画、日記など様々な作品を読み解きながら、孤独の変遷と現在地、そしてこれからの可能性について著した本。
知っている作品、読んだことがある作品も多くとても面白かった。
孤独と女性の論点も、そう!まさに!と声がでた。読み進めながらも、でもそれって実家が太いからだよな、とか、男性だから言えることであって…とか思っていることがひとつひとつ、丁寧に回収されていった。目線がくまなく行き届いていて、読んでいて安心感があった。
p206から紹介されている二つの社会の物語の部分で、2本の映画が紹介され、孤立と孤独がそれぞれに解消され希望の光が少しだけさす、とあった部分、そこで語られる社会や人間関係のあり方は、この間読んだ津村紀久子のポースケという小説の中の人々のあり方に似ていて、それは小さなコミュニティの中で、特に女性たちがお互いにゆるく支え合って生きているあり様と同質なように思った。
お互いに干渉しない距離感で、尊重しあいながら、労りあいながら暮らしていく小さなコミュニティに、新しい社会のヒントがあるのかもしれない。
Posted by ブクログ
第1章なぜアナ雪のエルサは、ひとりでハッピーとはならなかったのか。女性だからではないか。
第2章のロビンソン・クルーソーの孤独を発見したことで、居場所を見つけるという考え。
第3章ダンバー数では安定した関係を維持できる個体数(知り合い)の上限を平均150人と推定。
第4章現代人はフリーレンのように死を知らない子どもになりつつある。死別という喪失はますます個人的になものになっている。
現代では経験を共有できないと孤独を感じる。シェアすればするほど、伝わっているか確認できないため孤独になる。
第7章 ではどうすればいいのか。ベーシック・インカムを提案する。年齢、職の有無関係なく最低限の生活を保障する。
男性は孤独をまぎらわすために趣味に走ったりし、孤独のスイッチをオフにする。男性の孤独の一因は比較だった。
孤独について考えるには、社会に対する想像力を豊かにしなくてはならない。
それぞれの物語を大切にし、受け入れてくれるコミュニティがあり、それらが受け継がれていけばロンリネスはなくなるのではないか。
Posted by ブクログ
親友とか恋人とか他の人とは違う存在として名付ける時、依存せずに自立できているかを見直すことは、浅い依存を生み、存在と平等と自己の自由が確立され、ぼっちのままで居場所をみつけることにつながるのではないかと思った。
アナ雪をベースに考えるととてもわかりやすい。
1では、家族とのつながりで孤独から脱したエルサだが、2では、家族の枠を超えてぼっちのままで居場所を見つけたように思う。
Posted by ブクログ
孤独を定義づけて分類し、孤独が悪いことではなく、自分の中でどう向き会うのか?、孤独を許容する社会をどう作るのか?
考えるきっかけとして良い本だと思います。
刺さりますね
面白かったですよ。文学論(物語論)であり、社会学であり、人間存在そのものの探究でもあり、と。もっと議論が深まっていけばいいですね(社会的に)。
Posted by ブクログ
「孤独」についての認識の再考を通して、国のあり方について考えを広げられるのですね。
いきなり脱線するけれども、そもそも、私たちは普段使っている言葉についてきちんと知らずに使っていると思い知らされる。語彙を増やすって、本をただ読んでいろいろな表現に触れることが大事だと思っていたけれど、著者が肯定的な孤独、否定的な孤独、物理的・精神的といったように、分解して孤独の概念を説明しているのを読みながら、ひとつの言葉や概念についてとことん考えてみることで、つまり他との比較を通して、その言葉がぴったりと使えるようになるのがとても大事なようにも思えてきた。外国語だったら意味を調べて言葉を的確に使えるようになろうとするけれど、母国語なんて本当に適当に使っている、というかあまり使えていないのかもしれない。
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孤独を救う出会いの物語
社会学や心理学が専門ではなくて、英米文学者である著者が分析する孤独についての考え方の変遷や課題。
物語では一般的に、孤独の解決方法として、ソウルメイト、運命の人を見つける、というのがある中で、それ以外の孤独の解決方法はあるのか、というのが一つの問題提起でした。
アナ雪と、『ジェイン・エア』、すこし特徴的な部分はありつつも、だれかとのつながりを見つけることを通して、否定的な「孤独」が解決する。
また、ジェインに象徴されていた、「浅い依存関係」と経済的自立。孤独と依存の関係性は、資本主義経済の発展、そしてジェンダーが大きな影響を与えていることが分かる。
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近代化と孤独
都市化は、物理的な孤立と精神的な孤独が全く異なるものであることを示した。「群衆の人」とも呼ばれる都会の匿名性は、今日の私たちにとっても身近で、たくさんの小説や物語のテーマにもなっていると思う。
おもしろかったのは、著者いわく、探偵小説というジャンルは、ロンリネスをもたらす匿名性を条件として生まれたのではないか、という点。
__探偵の行為とは、匿名で不可知の都会の他者を読み取って理解可能なものにすることです。それは、ロンリネスをもたらす原因となる「経験の共有の不可能性」を乗り越えようとする行為だとは言えないでしょうか。
たしかにロンドンの大都会でシャーロック・ホームズが活躍するイメージに一致しますね。
ソロー曰く、
__われわれは自分の部屋に引き籠っているときよりも、そとで人に立ちまじっているときのほうが、たいていはずっと孤独である。
ソローは自然を仲間と感じて森で生活を楽しまれていたようですが。
普段の私たちも大勢でいるときに居場所を感じられなかったり、いろいろな人とオンラインでつながっているのに寂しいと感じることは、自分がいてもいなくても変わらない、というような、自分の存在を確かめられないどころかもはや存在する意味がないんじゃないかと思わせるような環境だからなのかもしれない。
__たくさんいるのに、いや、たくさんいるからこそ、その人たちとは自分の経験が共有できないという事実が、人間は孤島であるという事実が、身に染みてくる。自分の存在の承認の手応えが得られない。
逆に一対一で人と会う時は、孤独ではないのは自分の存在が認識されている手応えが確実にあるからなのか。
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死別と孤独
死別の喪失からの孤独についても章を割いて説明されています。
死別の経験の個人化により、その喪失への悲嘆も強まっている。加えて、日常に死に触れる機会が減ったことからの「有限感覚の希薄化」、技術発展が叫ばれる中の人間の「全能感の巨大化」、死別への悲嘆を許される範囲を制度化することで生まれる「公認されない悲嘆」、といった議論にも触れられています。
そして、死ぬまでの40年間死別した夫を弔い続けたヴィクトリア女王や『葬送のフリーレン』を参照し、どのような形かで、以前のように喪失を共同化する、記憶を共有する新しい方法を見つけることが、ひとつ解決につながるのかも、ということも話されていました。
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孤独という特権?
バージニア・ウルフの『自分ひとりの部屋』の紹介とともに、ひきこもる自由について書かれていました。今私がこんなお正月に一人ゆっくり読書ができているのも、特権かもしれない、とすこしギクッとさせられる。
孤独が肯定的な場合の多くは、高所得男性のケースが多い、という点が挙げられている。
『小山さんノート』の東京のホームレス女性の小山さんは、すこし極端な事例だとは思いますが、今でも普通の家庭で女性は一人の時間を、空間を、持てないことが多いなーと思ったり。
そしてあえて男女で一般化して論じるならば、男性は競争社会の一員として生きていくことが期待されて、経済的自立が一人前だとされていたしても、避けられない孤独の問題がどこかしらある。
一人になる時間や空間を得る自由を持つことが孤独の解消につながらないのは明らか。
一方、経済的な自立が社会的に阻まれていることが原因で、性別の違いにより一人になれる時間や空間が持てないのは、孤独が特権なのではなく、男女不平等という人権の話だと思いました。
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みんなのための自分ひとりの部屋
著者は、『ライ麦畑でつかまえて』に深い感銘を受けたことを最後に紹介されています。
他者の助けになることを想像することによってこそ自分を救っている、主人公ホールデン。
__それは、彼がそのような社会を、つまり彼自身のような人間が排除されない社会を想像し得ているからです。そして、その社会の作り手に彼自身がなるーそれが言い過ぎなら、その手助けをするー 、という想像こそが、孤独に苦しむ彼をもっとも深い意味で救っているのです。ホールデンは、誰かひとりのための「自分ひとりの部屋」ではなく、みんなのための「自分ひとりの部屋」を、前章の小山さんが独り亡くなるのではなく、かといって無理やりに人との関わりを持たされるわけでもない、独りで安心して創作に励めたかもしれない部屋を作る人になりたかった。
個人的に思ったのは、人間としての対等性と相互依存の認識が大事なのではないかということでした。
1人で生きるか、みんなで生きるかの二項対立ではなくて、だれもが他の人間と新しいつながりを作ることができる機会。そしてそれは、個々人が対等な人間として尊重されることが欠かせないと思いました。人とつながる際には、女性だから、男性だから、いくらお金を持っているか、というフィルターを限りなくなくしていきたい。
また、自分と向き合える、自分と孤独に対話することで、自分がどう社会に応えていくのかを深めていく、ということにもつながっていると思う。途中、補論で、認知行動療法に触れられていました。今日の孤独の悩みへの対処法として、本当に大切な人間関係を見つめ直してそれを深め、重要ではない人間関係を切っていく。そのために、具体的には、日頃自分の心の中で起きていることを自分でメモし、自分自身の心で起こっていることにしっかり向き合う、これが最終的に、自分にとって大切な人間関係を選ぶことにつながる、という専門家の助言の紹介。
切っても切れない関係にある私たち。孤独を感じるならば、自分とのつながりにまず立ち戻ろうと思う。
Posted by ブクログ
一人で行動するのが好きなので孤独に関して書かれた本には興味があった
孤独にはロンリネスとソリチュードがあり、その違いや変遷を歴史を振り返りながら映画や文学作品で孤独はどのように取り扱われてきたかを紐解いている
またソリチュードでいられることはある種特権的なものであることにも言及しており、たしかにそういう部分もあると納得をした。一人でいられる環境というものは特に女性は得ること自体が難しい
また孤独でいることを許容する社会とは誰かを排除するような社会ではなくあらゆる人を包摂する社会であるべきだということが誰しも孤独になることができて、なおかつ孤独に苦しまない社会であること
そのためにはいまある社会以外の社会の状況があることに想像を巡らせることであると河野氏は書いている
その主張も納得がいくものだったし、やはり私も個人で生きていくことができる社会が望ましいと思う
Posted by ブクログ
私たちは孤独を恐れる一方で、孤独が得られず苦しむという矛盾を抱えている。悪い孤独(ロンリネス)と良い孤独(ソリチュード)の区別はなぜ生まれたのか?現代人を脅かす孤独に対処するヒントを、『アナと雪の女王』『ジェイン・エア』『葬送のフリーレン』など様々なジャンルの物語の中に探る。
独りでいることそれ自体は必ずしも悪ではない。ヴァージニア・ウルフも言ったように、創造的な活動にとって孤独になれる環境は欠かせないものだ。大切なのは、孤独な人を排除せず、ゆるやかに包摂することのできる社会をつくること。『アナ雪』のエルサがエルサのまま自由に生きられる世界であってくれたらと心から願う。
Posted by ブクログ
アナと雪の女王のエルサや、ジェイン・エアのジェイン、葬送のフリーレンなどを例にしながら孤独について書かれた本。知っている話にそってでしたのでとても入りやすかったです。ロンリネス(苦しみや寂しさなど否定的な孤独)とソリチュード(解放、創造性をもたらす肯定的な孤独)、アイソレーション(物質的、社会的な孤立)。
「年収500ポンドと自分ひとりの部屋」は言い得て妙でした。ソリチュードを実現させるためには個人的な資源が必要ですね。社会資源は本当に当てにならない気がします。まずは暴力的な男性に依存しなくても生きていける自分でありたい。
Posted by ブクログ
著者がカルチュラル・スタディーズの専門ということで、メディア・リテラシーに役立つものがあるかと読んだがそれはなかった。ただし、孤独に関するウルフの小説や映画が紹介されているのでそれを見ることがいいのかもしれない。
Posted by ブクログ
「孤独」を「アイソレーション」「ロンリネス」「ソリチュード」に分類し、社会的孤立でも孤独感(寂しさ)を感じることもなく、良い孤独を得るにはどうするか。
「アナ雪」や「葬送のフリーレン」など人気漫画を例に、学問する。良い孤独とは、(大小あれど)社会と繋がりながら自立していること。
女性の自立の条件で、「自分の部屋」と「五百ポンド」があげられているが、「衣食足りて礼節を知る」が連想され、社会との関係性は、生活ありきというのは世界共通なのだと感じた。
ホームレスの小山さんの文章は心に響く。
Posted by ブクログ
ソリチュードとロンリネスそしてアイソレーション
(孤独)の考え方。
ロンリネスは主観的な孤独、孤独感のこと。否定的なもの。苦しみをもたらすもの。
ソリチュードは否定的なものではない。解放をもたらし、自分と向き合い、創造性を発揮するような豊かな時間・状態のこと。
孤独について考え、社会について考える事は物質な問題であるのと、同時に想像力の問題でもある。
Posted by ブクログ
イギリス文学や映画、漫画などを題材に、「孤独」について様々な観点から考察し、「良い孤独」が許容される社会を展望。
孤独をテーマとした文芸批評として興味深い内容だった。ただ、「悪い孤独」の原因としての新自由主義批判やその解決策としてのベーシック・インカムの指摘など、それはそれで理解はできるのだが、孤独に思うところのある自分として、「ぼっちのままで居場所を見つける」や「孤独許容社会」というタイトルから期待していたものとはちょっと違ったかなという印象。
Posted by ブクログ
エルサやロビンソン・クルーソーといったキャラクターから『森の生活』のソローや『自分だけの部屋』のウルフといった実在した人物まで幅広く取り上げながら孤独について述べられた一冊。未読の原作も多くて興味深かったし、現代社会でぼっちのまま楽しく生きるヒントがたくさん記されていました。
Posted by ブクログ
孤独(いわゆるぼっち)であることをこの社会は
悪く捉えているところが問題であると著作は
本の中で語っていた。
アナ雪や葬送のフリーレン、イギリス小説などに
焦点を当てながら「孤独」について書かれている。
1人でいることを選んだ人が楽に生きれる社会の
実現というのは簡単なことではないのかなと考えされられました。
それでも自分はなんやかんや1人になりたいから
おひとりさまでも家族、恋人連れでも誰にでも寛容な社会になって欲しいなーと思います。