【感想・ネタバレ】蔦屋のレビュー

あらすじ

2025年、NHK大河ドラマは「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」。
その主人公である江戸の出版プロデューサー・蔦屋重三郎の波瀾万丈人生を描く、傑作歴史長編小説!

寄る年波には勝てず、店仕舞いしようとしていた地本問屋・丸屋小兵衛のもとを、才気迸る若い男が訪ねてくる。この店に毎年二十両払うから、雇われ人となって自分を手伝ってほしい、という申し出に面食らう小兵衛。

「一緒にやりませんか。もう一度この世間をひっくり返しましょうよ」

その男こそ、吉原随一の本屋、飛ぶ鳥を落とす勢いの蔦屋重三郎だった――。

飲むときはとことん飲み、遊ぶときはとことん遊ぶ。商売の波に軽々と乗り、つねに新しいものを作りたい、と意気込む重三郎。重三郎の周りには、太田南畝、朋誠堂喜三二、山東京伝、恋川春町ら売れっ子戯作者や狂歌師が出入りするが、腐れ縁の絵師・喜多川歌麿には、特別な感情をもっている。

やがて松平定信による文武奨励政治が始まると、時代の流れは予期せぬ方向へ――。

蔦屋重三郎の型破りの半生を、父親ほども年が離れた小兵衛を通して描く。最強バディが江戸の街を闊歩する、極上エンターテインメント小説。

単行本を大幅に改稿し、著者によるあとがき「文庫化までの長い言い訳」を特別収録。

単行本 2014年4月 学研パブリッシング刊
文庫版 2024年10月 文春文庫刊
※この電子書籍は、文春文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

小兵衛、蔦重、歌麿という全く性格の違う3人の人生の交わりが面白く、それぞれのキャラクターに愛着が湧く

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2025年08月04日

ネタバレ 購入済み

面白い!

「吉原の埒を壊して、不埒者になりたい。吉原を江戸に、江戸を吉原にしたい」そう言った、蔦屋重三郎という男の生き様を描いた作品。文章と、ストーリーに、スピード感が有って、ぐんぐん引き込まれて、あっと言う間に読んでしまった。

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2025年05月26日

Posted by ブクログ

著者はこの本を文庫本にすることを長らく拒んでいたそうだ。その顛末はあとがきに書かれている。今回、大幅に加筆して、満足のいくものとなったのだろう、折しも今年の大河ドラマの主役が蔦屋重三郎とあって、急ぎ文庫化したようだ。その甲斐あって、自由な物語として描かれたこの蔦重は面白かった。

日本橋の地本問屋、豊仙堂の主人、丸谷小兵衛から、店を買い取ったところから、蔦重の出版人生が始まる。
狂歌の面々や、山東京山、歌麿、東洲斎写楽も出てくるが、丸谷小兵衛の視点から物語は進む。彼は蔦重にとって、細見の版木よりも重要な人物なのだと本人に語るのだが、それは後になってよくわかる。

振袖女郎になったお銀と歌麿、重三郎の幼馴染の話も出てくるし、重三郎が床についていよいよ・・・となったところでの意外な展開も面白かった。
谷津矢車の時代劇は、話に生きの良さが感じられて、新鮮だった。

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2025年03月14日

Posted by ブクログ

「蔦屋重三郎」書き手によってその生涯の記述に違いがあるようだが、NHK『べらぼう』ではどう描かれるのか楽しみだ‼

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2024年12月22日

Posted by ブクログ

10年ぐらい前に読んだ島田荘子さんの『閉じた国の幻』を読んで以来、蔦屋重三郎のファンで、写楽は誰なのかと言う事に思いを寄せています。
また、その頃から美術館の企画展などで浮世絵が来る時は行くようにしております!

↑の作品を読んだ頃に産経新聞の下の方に書いてある広告で本書の存在を知り、文庫化されるのを待っていたら10年の時間が過ぎました・・・
→理由は作者後書きで何となく語られております。

また、本のカバーを見ると本書の作者は『憧れ写楽』と言う作品も書いたようです!(次は文庫化するまでこんなに時間を置かないでほしい)


本作の蔦屋重三郎の物語は日本橋に居を構える丸屋小兵衛とコンビを組んで江戸に吉原文化を華咲かせようとする物語、二人で次々とヒット作を産み出していく!!!
歴史物のお決まりで本当にあった事実は避けられず、物語途中で田沼意次から松平定信に時代は移り質素倹約が推奨される世の中になっていく!!

コロナの時に思った事ですか、自粛ムードで最初に削られるのは外食産業と文化芸能!
生きていく上で不要なものと決め付けられ、歪んでしまった道徳に一番最初に切り捨てられる産業ですが、決して少なくない人達がその産業に関わっているのを考えて欲しい!
たまに我慢するのは良いかもしれませんが、長期間 周りの目に怯え我慢する事はその産業にダメージを与え、文化を衰退させ、そこで働く人達を殺してしまう。
寛政の改革やコロナ禍の引きこもり生活が二度と来なければいいなぁと思います。


最後に、来年の大河ドラマは蔦屋重三郎!
他にも蔦屋重三郎や写楽を題材とした作品が刊行されることを祈ってます!

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2024年11月16日

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2019年8月に読んだ増田晶文著『稀代の本屋 蔦屋重三郎』が私には合わず、その時のうんざり感が胃もたれのように「蔦重の本はもういいや」と思わせていたのですが、本書が出ると知ったとき、「いやこの人の書く蔦重なら読みたい!」と購入を即決。これに限らず谷津矢車さんの作品には、だいぶ前から好みセンサーがビビビッと反応していたのですよ。やっぱり私の目に狂いはなかった。すっごく良かった。

地本問屋豊仙堂の主人丸屋小兵衛は、店を畳んだばかり。その小兵衛のもとに男が訪ねてくる。〈当代一流の豪勢な品を嫌味なく着こなし〉、〈男ぶりのいい顔〉をした、耕書堂の主人蔦屋重三郎だった。「あたしの仕事を手伝ってください」と言う。「一緒にやりませんか、あたしと。もう一度この世間をひっくり返しましょうよ」と。

本好き読書好きとして、絵師や戯作者たち、また何があっても何度でも立ち上がる蔦屋重三郎を、全力で応援していました。私もいっしょにフフッと笑ったり、ビックリしたり、憤慨したり、くやし涙を浮かべたり、悲しくなったり、切なくなったりしていたら、いつのまにか胃もたれがスッキリしていました。読んで良かったぁ。

今年2024年の大河ドラマは、物語を書く紫式部が主人公。来年2025年は、本を作って売る蔦屋重三郎が主人公。この流れ、本好きとしては注目したい。電子書籍も便利かもしれないけど、本屋さんに行って本を買おうと思ってくれる人がひとりでも増えますように。

〈人間は色を好み、金を好み、絵空事の物語や絵を好む。このどうしようもない浮世から逃げ出したい人々が物語や絵を買い、溜飲を下げる。人の業を否定するなど誰にもできはしない〉

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2024年10月23日

Posted by ブクログ

今NHKの大河ドラマで “蔦重”こと蔦屋重三郎を主人公とするドラマをやっている。

それにつられて この本を手に取った。
この本では 主人公は引退を決意した地本問屋、丸屋小兵衛。小兵衛から見た“蔦重”の波乱万丈人生を描く。

ドラマとは違った描き方をされている“蔦重”だが
常に新しいものを追い求める“蔦重”はここでも躍動している。志し半ばで倒れた、潰された?のはかえすがえす残念だけど。

ドラマの“蔦重”も面白いけど この小説もなかなか面白かった。

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2025年06月21日

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いわゆる写楽の謎的なものでない、いわゆる蔦屋を描く物語でした。
なかなか面白かった。

2930冊
今年158冊目

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2025年06月07日

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蔦屋重三郎の生涯を丸屋小兵衛を通して描かれている。日本橋の地本問屋・豊仙堂の店主であった小兵衛は店が傾いたことにより畳むことを決意していたがそこに重三郎が表れ豊仙堂を買い取ることとなる。重三郎は吉原の埒を壊すことを目標とし数々の本を出版し世間の流行を生み出していく。松平定信が老中となった時、定信の方針で世間が質素倹約を強いられておりそれを風刺するような草双紙を発売し大盛況となる。しかし幕府からの圧力により作者の恋川春町は自死し重三郎も圧力をかけられる。その後幕府の目をかいくぐりながら写楽などの絵師を発掘し流行を作り出していく。
登場人物が江戸訛りで喋っていおりとても当時の江戸の活気のようなものが感じれて良かった。重三郎と喜多川歌麿との関係も吉原という地から解き放たれようとする様が感動的だった。

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2025年03月17日

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面白かった。時代を超えた出版社の話。
商社的な仕事の価値というか存在感というのは社会人としての経歴を経るとじわじわ理解できる。

そんな道理が江戸の街にもあったという事実。

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2025年03月02日

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今年の大河ドラマを楽しもうと、探して読んでみた。
蔦重と組んで、蔦重の夢を後押しした日本橋の本問屋店主の小兵衛。
吉原、そして江戸に風穴を開け、江戸を塗り替えるの意気込みに惹かれる。
それにしても松平定信の改革は厳しい。
沢山の戯作者達が封じ込められたら歴史は悲しい。
その中、罰を受けても、戯作の面白みを求め、へこたれない2人だったなぁ。

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2025年01月18日

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蔦屋重三郎、大河ドラマで取り上げられなければ、高校で日本史を学んでいなければ、聞いたこともないと思う。正直、どんな人だったのかはしらなかったが、小説を見る限りとても面白い。来年のドラマが楽しみ。

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2024年12月12日

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小兵衛さんが最後まで良かった。
歴史の授業で習う改革はただこれをした、これをした、って言う羅列でしかなかったけど、こうやってどういう影響があったかを読むとホントに怖い。

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2024年10月17日

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商売の基本(いろは)は『神速を尊ぶ』だ。

重三郎は金儲けがしたいわけじゃない。新しいものを作りたい。吉原から江戸を驚かせたい。金は、その結果としてついてくるものだと考えている。この男にかかれば、今を保つことすらも後退を意味するのだ。ただ、新しいものは、頭の固い向きには塵芥だ。そういうものを先物買いするお客さんもいるにはいるけども、それじゃあ大売れとはいかない。十歩先に行ったものじゃあ新しすぎる。かといって、一歩二歩先じゃあ誰も驚かない。五歩くらい先を走るものを作りたいと思ったのだ。世の進歩は、一歩一歩、着実な積み重ねの上に成り立っている。浮草稼業の本屋や絵師や作者の界隈とて同じである。五歩先など、そうそう出せるものではなかった。

世の中には色んな人がいる。時代の流れに器用に乗れる人もいる。一方で、自分の生き方を自分では変えられない人もいる。生まれついた瞬間から、道を選ぶことすら出来ない人もいる。それを、重三郎は吉原で知った。だから、重三郎は、そういう人たちの側に立つと決めたのだ。

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2025年04月11日

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今年の大河ドラマに取り上げられている蔦屋重三郎の話をいくつか読んでみようということで、借りた本。

以前読んだ、泉ゆたかさんの『蔦屋の息子』では豪快で猪突猛進な重三郎が描かれていたが、こちらでは重三郎が買い取った日本橋の元地本問屋の元店主・丸屋小兵衛を番頭に据えるという荒業で商売を行うバディものとして描かれている。

物語の山は老中・松平定信との闘い。
戯作者の山東京伝や恋川春町らと追い詰められていく様子などはこの時代ならではとは言え、理不尽な思いでいっぱいになった。
歌麿の立ち位置がこれまで読んできた作品とは違っていて新鮮だった。
歌麿こそ重三郎のバディなのかと思いきや、意外にも途中で喧嘩別れしている。その発端も松平定信の改革なのだから、松平は罪深い。

小兵衛が渋いキャラクターで、重三郎に戸惑いつつも一緒に奔走し、時に彼を引き留めるブレーキにもなり、じっと見守ったりちょっとお小言をいったり父親のような立ち位置にもなり、面白い。

あとがきによると、「蔦屋重三郎は『どういう風にも書ける』懐の深さがある」そうだ。
作家さんの初期の作品であるらしいので、掘り下げとしては物足りない部分があった。写楽との出会いや彼の短い制作期間についてはもっと知りたかったし、歌麿との交流ももっと知りたかった。
そして何よりも松平老中との闘いの行く末について描いて欲しかった。

そこは大河ドラマではどう描かれるのかも楽しみにしたいし、他にも彼を取り上げた作品があれば読んでみたい。

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2025年02月14日

Posted by ブクログ

 今年の大河ドラマの主人公が蔦重なので、参考にこの小説を読んでみた。大体の蔦重の人となりが理解できた。粋で新しいものが好きで、権力におもねず、人情の厚い人物だったようだ。
 それにしても江戸時代の庶民の文化の高さ、本を求める欲望、凄いなあと感心した。識字率はどの位だったのだろう。「江戸の人口の十人に一人が耕書堂の本を買う」という記述があったが、本当だったら凄いなあ。
 大河ドラマでは、どのように蔦重を描いていくか、楽しみだ。

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2025年02月07日

Posted by ブクログ

大河ドラマを見るにあたって、基礎知識を仕入れるために読んでみた。
バディものなのですね。
最初からそう思って読むとよかったのだが、蔦屋重三郎がどんな人物なのか、探りながら読んだので物足りなく感じてしまった。
読み方を間違えてしまったのかもしれないが、軽く読めて基礎知識はなんとなく仕入れることができる蔦屋重三郎を知る入り口にはなる小説だと思う。

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2025年01月14日

Posted by ブクログ

来年の大河ドラマの予習として。
歴史に疎い私でも楽しめたし、難しい言い回しなどはるけど読みやすいと思う。

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2024年12月20日

Posted by ブクログ

来年の大河ドラマが蔦屋重三郎なので読んでみました。蔦屋重三郎のことは名前さえ知らなかったので、時代背景や人々の暮らしや出版業界の様子などを肌で感じながら知ることができました。
寛政の改革時の命を懸けた作家の意地に感動し、出版の駆け引きはドキドキします。
やっぱりビジネスでも人との繋がりや、人を信じて育てるのって大切だ、と思うのでした。

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2024年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

蔦屋

著者:谷津矢車
発行:2024年10月10日
文春文庫
初出:2014年4月、単行本(学研パブリッシング刊)

NHKの大河ドラマ、来年は江戸の版元(出版社)の蔦屋重三郎の話ということで、蔦屋関連の書籍が随分出ているらしい。しかし、本書は外せないと思う。10年前に出た小説で、今年、文庫化された。文庫化にあたって追加された著者あとがきによると、10年前に出た「蔦屋」のお陰で、常に「蔦屋」の谷津矢車と紹介されてきて、その呪縛から逃れたかったらしい。だから、蔦屋が嫌いだったという。とはいえ、今は好きなようである。最初は連作短編にするつもりだったが、小兵衛のキャラに惹かれて長編になったらしい。

物語は、日本橋で豊仙堂を営む丸屋小兵衛が、廃業を決めて店を売りに出していたところ、蔦屋重三郎が訪ねてきて、信じられないような条件で買いたいと言ってきたところからはじまる。

重三郎と小兵衛のキャラの違いを鮮明に出し、ドラマにも小説にもぴったりというつくりになっている。今年出た同じ著者の「憧れ写楽」と2冊、ドラマを見るには必読、きっと、ぐっと面白く見ることができるはず。

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(読書メモ。ネタ割れ注意。全ストーリー)

第1章

廃業を決めた豊仙堂を訪ねた蔦屋重三郎。店の買収を申し出る。二本を表示。
200両?日本橋の一等地でそれは足許見すぎだろ、と小兵衛。違う違う、20両だと。20両ずつ払う、と。何回払う?(15回で300両なら相場だなあと心の中で思う小兵衛)。ずっと払う、あんたが生きているうちは、と提案する蔦屋。つまり、あんたを雇いたい、という。

取引成立したが、この日本橋の店でどんな本を売るか決めかねている蔦重は、毎日、店がある吉原の引手茶屋で小兵衛を誘って酒宴を張るばかり。そこに、蔦重の知り合いのただ酒大好き男たちが集まる。実はその正体は、狂歌師の宿屋飯盛、文人の大田南畝(四方赤良)、戯作者の朋誠堂喜三二など、名だたるメンバーだった。驚く小兵衛。

ところで、小兵衛のところには、絵師の卵である北川勇助が雇ってくれと言ってくる。給金はなし、飯と墨と紙だけくれれば、炊事洗濯などなんでもするという。かれは、蔦重の遠縁であり、後に喜多川歌麿となる人物。

ついにひらめいた、重三郎。彼らをつかって狂歌本を出す、勇助の絵で惹きつける。


第2章

耕書堂日本橋店が開店した。1年ぶりに開く日本橋の店。初日から客が列をなし、新編狂歌集は売れまくった。重三郎の妻のお春も店に出る。もともと日本橋の呉服屋の娘だけに、客あしらいもうまい。しかし、重三郎は出版までしかせず、奥から出てこない。小兵衛は大福帳つけに忙しい。狂歌本は売り切れ、増刷に。どうしてこう売れるのか、みんなどこで知ってきたのか、小兵衛には不思議だった。普通の版元は、じわじわと1年かけて売り切るのに、重三郎のやり方は違う、わっと売って、増刷する、を繰り返す。

お春が、重三郎が浮気をしているのではないかと心配する。頼まれた小兵は、歌麿を巻き込んで調べる。すると、重三郎は最近、一軒の女郎屋に通っていることが分かった。ついに現場を押さえた小兵衛。しかし、そこは地味な部屋で、それなりの年の地味な女がいただけだった。お雅という遣り手で、狂歌集の宣伝チラシを山東京伝の絵で豪華につくり、吉原で撒きたいとお雅に相談していたのだった。お雅は、重三郎が子供のころからお世話になった人だった。吉原はいろんな人が来るから、幅広い層に宣伝できる場だったのである。


第3章

前年の天明6年に将軍徳川家治が死に、べったりだった田沼意次が老中をくびに。その後釜に面倒な人物がついた。白河の殿様・松平定信。田安家の出身で、吉宗公の孫にあたる。徳川家係累の血筋と譜代大名家の家柄を両刀にし、堅物ぶりを発揮。吉宗公に倣って質素倹約を公言した。

次の展開を車座になって会議するも、アイデアが出ない。耕書堂は次々と狂歌本を出し、売れている。他の版元も追従してきたが、吉原耕書堂の「吉原細見」と日本橋耕書堂の狂歌本は二枚看板となった。こんなにヒットしているのに、どうして3本目の柱が欲しいのか、小兵衛は小首をかしげる。「金儲けがしたいのではない、新しいものを作りたい、吉原から江戸を驚かせたい」と重三郎。

棒手振りの助八が現れた。助八は落語や講談は好きで聞くが、本は読まないという。庶民が喜ぶような本。これが次の柱になりそうだ。重三郎は、三人の戯作者を引手茶屋に招いた。喜三郎、不埒、京伝。そして、驚天動地の案を提案した。黄表紙を書いて欲しいとの提案。恋川春町自画自作の「近々先生栄花夢」が大当たりして黄表紙が認知された。提案を受けたのは喜三郎だった。

天明8年正月、十丁の草双紙に黒山の人だかり。喜三郎が書いた「文武二道万石通(ぶんぶにどうまんごくどおし)」。それは、平和になって源頼朝が武士を箱根に集めて文に優れる武士、武に秀でた武士を選別し、どちらにも秀でていない「のらくら武士」に対して叱りつける。これは、松平定信がしている文武に優れた武士を顕彰し、過去に不届きのやったお武士を叱っている「文武奨励策」を揶揄したもの。

増刷を重ねて1万部以上も売れる大ヒットとなった。しかし、喜三郎は冴えなかった。彼が留守居役を務める家中から注意を受けた。これ以上書くと、守りたいが守れない、と。公儀から圧力がかかっている。まさか松平定信が読んでいる?読みかねない。そういう結論に達して、続編の依頼は受けなかった。

続編にあたる黄表紙は、不埒が恋川春町として書いた。「鸚鵡返(おうむがえし)文武二道」。翌年の正月作品。前年をしのぐ、1万5千部を売り切る空前の流行を見た。


第4章

寛政元(1789)年、恋川春町が公儀に二度にわたって召還を受けた。家名断絶か切腹かの選択を迫られた。春町は最後まで戯作の矜持を保ち、墨に毒を混ぜ、それを舐めることによる服毒自殺を図った。

この年は、怒濤の一年になった。売れっ子作家だった喜三二、春町、南畝が離脱し、草双紙や狂歌集に大きな穴が。

翌年の正月の売り出しは新刊の数冊を減らして挑むことに。かつての活気はなかったが、京伝の草双紙は売れ、一番の売れっ子となった。二位は歌麿に。

寛政2年5月、老中による本の取締りが本格的に。触書を出し、時事を扱う戯作類や浮世絵の禁止、卑猥な内容を含む新規創作と昔に刊行された好色物も絶版、過去に材を取りながら今を揶揄する内容の禁止、さらには、「本を新たに仕立てる必要はない。もし作るのならば奉行所の指図を受けること」の一条があり、小兵衛を苛立たせた。しかし、重三郎は突っ走る。

山東京伝が戯作をやめたが、重三郎は通って頼み、引き受けさせる。寛政3年、京伝の戯作が数点発表され、客が買いに走る。3月、ついに強制捜査となり、重三郎も京伝もひっぱられる。結局、重三郎は罰金、京伝は手鎖50日。


第五章

寛政3年秋、小兵衛が倒れた。
それから2年たった小兵衛の話。

寛政4年、歌麿は美人画「当時三美人」を当てている。その歌麿が見舞いに来た。廊下には吉蔵が立っている。後日、一緒に散歩する。

山東京伝が来た。重三郎のところで戯作を出したいという相談だった。手の疼きがあり、手鎖の痛手に勝ってきたという。

重三郎が来た。絵師を見つけたという。つい2ヶ月前に勝川春朗(北斎)という若手絵師を見つけて絵を見せに来たが、速くも見放している。師匠の勝川春章風が抜けきれず、伸びしろがないと判断した。それにかわって、クセのある團十郎の大首絵を描く絵師を発見したという。猿楽役者、東洲斎写楽だった。

写楽の絵を見せに来た。最初に見たのとは少しタッチが違うのが小兵衛には不思議だった。しかし、外を歩けば派手派手しくその絵がまちを賑わせている。重三郎が吉原から売ったに違いない。大田南畝も絶賛している。

小兵衛には、妻と息子がいたが、宝暦(天明の前)時代に流行病でなくしてしまった。墓参りをしていると、お春がまちでみかけたとつけてきていた。小兵衛は仕事ばかりで妻子をほったらかしにしていたことを後悔していた。

正月に出した写楽の絵と、3月に出す予定だという写楽の絵があるが、全然だめになっていた。重三郎は、自分がだめにしたと言っている。

寛政8年12月、重三郎が倒れた。
売り物変更で、草双紙を書いていた戯作者や、挿絵を描いていた絵師に、実学本や子供向け儒学本などの仕事を頼むようになった。反発もあった。説明会で毎日のように宴会をくりかえし、碌に眠らないまま店頭に立っていた。

重三郎とも喧嘩別れをしていた歌麿が、病床を訪ねてきた。


第6章

歌麿は重三郎の病床を覗いたが、動かない。危篤だった。そこで、歌麿は小兵衛に昔話を始めた。重三郎は吉原大門の茶屋などを経営する北川の養子だった。その茶屋は、本当に茶や菓子を出す茶屋だった。歌麿(勇助)は職が長く続かず、くびになるたびに重三郎を便りにして職探しをしてもらった。そんな重三郎が逆に歌麿(勇助)を頼りにしに来た。義父から縁談が来たが、自分は日本橋の呉服商の娘、お春といい仲だという。しかし、お春の父親から反対されている。

勇助はブツブツいいながらも、お春の父親を説得しようとするが、だめだった。そこで弱みを握り、強請った。うまくいった。そんな話の中で、重三郎がどうして仕事をしているのか、それは吉原の埒を壊したかったということがわかる。そして、ずっと日本橋丸屋をずっとひいきしていたことも。

小兵衛も歌麿とは喧嘩別れしていたが、そんな話を聞いていたら、もう一度耕書堂に戻って仕事をしてくれないかと頭を下げた。歌麿は戻ることにした。

実は、重三郎は危篤ではなかった。歌麿が訪ねてくるだろうと思い、小兵衛と仲直りさせるチャンスだと考えて危篤のふりをしたのだった。


エピローグ

二年後、日本橋耕書堂は活気に満ちていた。18歳になった吉蔵も父親譲りの口調で歌麿に接する。お春も商人になっていた。重三郎は2年前に死亡。

そして、小兵衛もなくなる。

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丸屋小兵衞:日本橋の地本問屋・豊仙堂の店主、51歳、店をたたむ決意
蔦屋重三郎:吉原の地本問屋・耕書堂の店主、豊仙堂を買い取り小兵衛の雇い主になる

伍作:丸屋の刷師
与六:丸屋の紙すき

北川勇助:重三郎の遠縁、喜多川歌麿、北川豊章
お春:重三郎内儀
吉蔵:息子
六樹:町人風、狂歌師の宿屋飯盛、家業の公事宿が繁盛
寝惚:武家髷、大田南畝、四方赤良、無役だが御家人当主
喜の字:戯作者の朋誠堂喜三二、40代後半、武家髷、さる家中の江戸留守居役
伝蔵:煙草数寄「京屋」、売り出し中の戯作者、山東京伝
酒上不埒:武家で狂歌師、ベストセラー戯作者の恋川春町、さる家中で役職につく(江戸詰年寄本役)、

○有名絵師
鳥山石燕:歌麿の師匠、妖怪画で有名、狩野派で学ぶ
鳥居清長:美人画の浮世絵師

勝川春朗:重三郎が売ろうとしている若手絵師、勝川春章の弟子


○狂歌三名人
唐衣橘洲(からごろもきっしゅう)
朱楽菅江(あけらかんこう)
四方赤良(よものあから)=大田南畝

鶴屋喜右衛門:大版元・鱗形屋と覇を競いあった老舗、江戸の地本問屋の顔役

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2024年12月14日

Posted by ブクログ

 考え行動しワクワクする人生をを送る〜
 いつの時代も世の中にほんろうされ、川の流れに流されながら、川の中で自分の価値観で進む。

「白河の清き魚も、すみかねて、元の濁りの、田沼恋しき」

「新しいものを作るのは楽しい、失敗はつきものだが、新しいものを作った時には、涼しい風が吹き抜けていく心地がする

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2024年11月09日

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