あらすじ
人生を物語に刻んで。
ロングセラー『掃除婦のための手引き書』(2020年本屋大賞翻訳小説部門第2位)、『すべての月、すべての年』に続く待望の短編集。
「彼女の書く文章はほかの誰とも似ていない。読むものの心を鷲づかみにして、五感を強く揺さぶる。読んだときは文字であったはずのものが、本を閉じて思い返すと、色彩や声や匂いをともなった「体験」に変わっている。(中略)まるで自分もそこにいて、それらを見、聞き、感じたような錯覚にとらわれる。それほどに、彼女の言葉の刻印力は強い。」(「訳者あとがき」より)
【目 次】
オルゴールつき化粧ボックス
夏のどこかで
アンダード あるゴシック・ロマンス
塵は塵に
旅程表
リード通り、アルバカーキ
聖夜、テキサス 一九五六年
日干しレンガのブリキ屋根の家
霧の日
桜の花咲くころ
楽園の夕べ
幻の船
わたしの人生は開いた本
妻たち
聖夜、一九七四年
ポニー・バー、オークランド
娘たち
雨の日
われらが兄弟の守り手
ルーブルで迷子
陰
新月
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
ルシア・ベルリンの短編集、三冊目(これで最後かな)。やはりすごく良い。相変わらず酩酊とドラッグとセックスと死にまみれていて、それでいて繊細な描写でむせかえるようなにおい、音、色彩に包まれる感じにぐっと引き込まれ、読みだすと止まらなくなってしまう。
悲惨な境遇も破滅的な出来事もあっさりと、からからしたユーモアとともに書かれていてそこには同情や好奇の視線を寄せ付けない強さがある。彼女の小説をどう表現すればいいか難しいのだが、起こるできごとも町のたたずまいも感情も一人一人の生も全部まるごと、むきだしになっているのだ。読むとあまりにリアルに目の前に迫ってくるから、その存在感にはいつも圧倒させられてしまう。
好きな短編を選ぼうと思ったが、今回は特にお気に入りが多くて難しい。メキシコやチリの、危険と明るさの裏表がくるくる回っている感じが良かった。「アンダード──あるゴシック・ロマンス」「日干しレンガのブリキ屋根の家」「楽園の夕べ」なんかが好きなんだけど、「幻の船」の最後には痺れたな。「すべては灰」。彼女の小説は大体、希望がない。希望はないんだけど人生は可笑しくて、人々の生は続いていくのだ。
Posted by ブクログ
子どもの頃よりあちこちに住み、結婚離婚✖️3、息子4人、シングルマザーにして職業をいくつか、そして大学教師、アルコール中毒と、これでもかの人生経験。日本の私小説作家が書いたら、恨みや悲しみのお涙頂戴にも出来そうなのに、彼女の場合、全く、微塵も湿っぽくなく、ドライなのが素晴らしい。『リード通り、アルバカーキ』『桜の花咲くころ』わたしの人生は開いた本』が特に気に入りました。