【感想・ネタバレ】スメラミシングのレビュー

あらすじ

SNS上のカリスマアカウント〈スメラミシング〉を崇拝する覚醒者たちの白昼のオフ会。参加した陰謀論ソムリエ〈タキムラ〉の願いとは──? 壊れゆく世界の未来を問う、黙示録的作品集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

陰謀論者スメラミシングの「僕」と、その解説者バラモンの「私」の話が交差する。
僕は強迫性障害で、複雑な世界を変えたい。母は気分の浮き沈みが激しい。ホテルで働き、支配人や母の言う内容を「スメラミシング」としてツイッターで発信する
私はその意味不明な内容を解説者として広める。世界には理由が必要。コロナ禍は理由のないウイルスが世界を悪くしている。理由や物語をスメラミシングが作り世界を統合してくれると信じている。

2人はノーマスクデモで出会う。

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2026年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 6編からなる短編集。
 「文藝」が主ではあるが、発表時期も媒体も異なりつつ、そこはかとなくテーマが通底していて、面白い。 
 「神」、「宗教」を扱いつつ、そこに潜む虚偽や、なにかにすがらずにはおれない人間の愚かさを冷ややかを皮肉っているかのようなお話。

 核となる、というか、どの物語も発端は、ここにあるのでは? と思う記述が下記;

「地球が誕生したのも人類が誕生したのも偶然だ。何億年、何十億年という時間をかけて、さまざまな偶然の連鎖の果てに、私たち人類は存在している。だが私たちはその事実に耐えられない。だからこそ神を創造した。自分が生きていることは必然なのだと考えようとした。私たちは幸福を求めているのではなく、理由を求めている。真実を求めているのではなく、理不尽で暗く、生きる価値のない現実を受け入れるための物語を求めている。昔からずっとそうだった。」

 表題作の中にあるので、間違いないだろう。

 その理由を求めたものが、「七十人の翻訳者たち」で扱った聖書であり、「神」の存在であり、その神的な存在、理由を何に求めるかで、「密林の殯」(天皇と神)となり、「スメラミイング」(新興宗教)、「神の方程式」(ゼロという概念)などと、理由、根拠をどこに求めたかを手を変え品を変えて綴られていく。

 とにかく著者の博識ぶりに舌を巻くし、短編ゆえに、きっちりオトシマエを付けるまで深堀りせず、考えるヒントを与えるくらいのところで筆を収めているあたりが巧い。

 一話めに持ってきた「七十人の翻訳者たち」の中で語られる、近未来の「物語ゲノムの解析」という発想が、実に面白い。
 神話の体系を整理し分類したジョセフ・キャンベルの研究を持ち出すまでもなく、世界中に散らばる物語の原型が、旧約聖書だったり、古事記だったり、古き伝統に根ざしているということを、
「聖書を含むすべての物語には「ゲノム」があり、「適応と淘汰」がある。物語は「突然変異」を繰り返し、いくつかの個体が存在し、後代に残されていく。」
 と、あたかもDNA研究に置き換えて語っているのは見事。
 逆に、人体のDNAも、編集と編纂を繰り返し、時には書き間違い(突然変異)が発生し、それを正す「校正」の作業が入ると、まさに文章のごとしという話を『ことばの番人』(高橋秀実著)でも最近読んだばかり。

 「全ての物語には過去に存在した物語の「ゲノム」が残されている。」として、近未来に、そのゲノム解析が行われているなんて、ゾクゾクさせられるが、そうなると、作家なんかは、ますます必要なくなるのではと思ってしまう。そういえば、著者は、『文藝春秋』でAIの可能性について一文もいつだったか寄せていたか。

 行きつくところ、人は、嘘を信じることで生きていく生き物ということで、ユヴァル・ノア・ハラリの言う「認知革命」以降、あらゆる分野で、虚構を講じていく生き物だということが、この短編集を読んでいて痛感させられる思いだ。

 虚構を構築した先になにがあるか?

「いいですか、私たちが出来事を語ろうとするとき、真実は消えてしまうのです。」

 真実など必要ない、という、神の御宣託也。

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2025年04月09日
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