あらすじ
FIREの先は薔薇色なのか? 幻影に覆われた現代を巧みに描いた傑作小説
外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、
生活費を切り詰め株に投資することで、
給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。
恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、
とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。
そのアップデートされた物々交換の世界は、
マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。
やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、
華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。
高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。
自らの価値観と生き方を問われる、いま読まれるべき傑作小説!
※この電子書籍は2021年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
そうだな、お金としてとっておくから今が空虚になるわ。ある程度使うことが今を生きることってその通りだな。金遣いの荒い家族は今を生きてるんだな。私ももう少し今を生きてもいいかもと思った。でも投資も続けたい。
配当の再投資でさらなる配当を呼ぶ、マネーマシンがファントム。利確するまではあくまで幻…
Posted by ブクログ
投資や節約を始めた人で、真面目な人ほど、この本の主人公のようにケチになってしまうところがリアルだった。自分もこの主人公ほどではないが、帰省するときや友達と遊ぶときなどにこのような思考に陥ってしまうことがあるので、共感できた。また、少しケチったせいで、結局余計な時間やお金を使ってしまうことにも心当たりがあった。
また、いくら貯めても将来の自分がお金を使い切らずに一生を終えることも想像できる。主人公が自分のロールモデルの老人たちに会って、生活保護のような生活をしていることを知り、今の自分のお金の使い方に疑問を持つところも良かった。
投資や節約を始めた人に読んでもらいたい一冊。
Posted by ブクログ
節約や投資にはまった気持ちがとてもリアル。一万円やそこらを節約するために友達をなくすのも現実のどこかにありそうな話。そんなケチケチ、ギスギス、計算たかくなってしまった子が自分や周りのためにお金を使えるようになっていくのが、なんだか救済に思えた。
また、今どきのSNSで初めて知った系の情報が、じつは過去に使い古された手で、界隈の人たちがバカにするテレビや新聞などのオールドメディアも見ている人からするとヤバイものなのに、知らずに取り込まれておかしくなっていく様も、怖いけど現実味はある。
知ることは本当に大事だ。自分の興味がないことも、知りたくなかったことも。怒りや不安を煽られて、誰かに搾取されないでいるために。
Posted by ブクログ
YouTuberが絶賛していたのでどんなものかと読んでみた本。
主人公は高配当株への投資により、自分と同じだけの収入を稼ぐ「システム(分身)」を作ることを目論んでいるが、投資セミナーで知り合った資産家である高齢者たちの生活ぶりに衝撃を受ける。彼らは日々の倹約により資産1億円以上を築いたが、その生活レベルは生活保護受給者と同じようなもので、主人公は将来このような生活を送るために今節約や投資に励んでいるのかと疑問を抱く。
健康で文化的な最低限度の生活レベルであったとしても、生活保護受給者と資産家では心のゆとりが違うのだろうし、服装に興味がなく、株主優待を活用することが彼らの幸せなのであればそれで良いと思うが、私もお金があるならある程度小綺麗な格好をしたいし、株主優待を優先するがあまり飲み屋の選択肢が限られるのは嫌だな。
個人的にはこの投資セミナーの気付きがこの小説のハイライトで、その後の宗教チックな団体からの彼氏奪還の話はあまり興味が持てなかった!